2章 7

 目の前で起こる惨劇にさすがに秋山の笑みも凍りつく。


 リーダー格の男性が奴らの顎の餌食になってからというもの、統率を失った集団は我先にと散らばって逃げ出した。しかしどこに逃げても奴らの姿。暗闇の中であちこちから断続的に聞こえてくる悲鳴。消えていく悲鳴。日が昇った時この周辺はどれだけの地獄絵図となっているだろうか。


 そんな中に秋山とそして水無月は立っていた。

「説明を、してくれるかな?」

 二人の周りには興奮した奴らが他に獲物はいないかと歩き回っている。そこに秋山と水無月がいるのに、探し回っている。


「今まで見ていたのはずっと前から再生され続けていた、録画映像でした」

「リアルタイムで起こっていたことではなかったと?」

 頷く少女。

「私は干渉できましたが、イレギュラーである秋山さんはここにいない存在になっていました。心当たりは?」

「あー。なるほど。話しかけても無視されたのは新参者を歓迎していないからと思っていたけど、そうじゃなかったというわけで」

 うんうんと頷く。

「何度も別の結末に導こうとしていましたけど、今回もダメでした。

 別の結末によっては秋山さんにも危害が及ぶ可能性もありましたけど、杞憂でしたね」


 いつの間にか辺りから奴らも建物も何もかもが消えて、代わりに広がる闇。秋山は隣にいたはずの彼女の姿が消えていることに気がついて、辺りを見回す。


「ここはまた初めから再生をされ、そしてみんなここで死ぬ結末までをずっとループしていきます。だから、私は別の夢を見ます」

 闇から彼女の声だけが聞こえてくる。どこを向いて喋りかければいいかわからなかったので、正面を向いて


「ひとつ聞いてもいいかな?」

 彼女に問いかける。

「第六感って、信じてる?」

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