第10話 偏見を「減らす」こと

フーコーについての話にもう少しだけお付き合い願いたい。私は、彼について授業で取り上げられた際に倫理学の先生が授業内で話していた「理想の教師像」についての話が今でも忘れられないのである。

「僕は何に関しても『成りきらない』ことを大切にしている。完全な教師にはなりきらないようにしている。何故ならば『完全な教師』に成りきってしまうと、教師としての目線でしか教師を顧みることができなくなってしまうから。授業を受けるのは教師ではなく生徒たちなのだから、教師は『教師』という名前の仕事に身を置いて且つ、生徒として、子どもとしての目線でも教師を見ることのできる存在であるべきだと思う。」

意訳である部分の多いのが心残りだが、内容の粗筋はこのようなものであったと記憶している。子供を含む少数派たちの意見は、それがいずれ大勢の心を揺るがす素晴らしいものであったとしても気づかれぬままに消え去ってしまうことが多い。偏見を完璧に無くすことは不可能かもしれないが、偏見を無くそうと心がけることには意味がある。物の見方を広げ、他人の価値観が尊重されているこの美しい考え方が、私の心の琴線に触れた。

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