第二十六話 作戦開始
「ルュカ、各班の幹部を私の執務室に集めよ。早速今の作戦を通達し、人選を進めさせるためだ。事は早い方が良い。すぐに頼む」
「承知いたしました」
有能なルュカさんは一刻も無駄にはしなかった。あたしと歩調を合わせつつ、手元の通信機を使って招集をかけている。ついでに勉強も教えてくれないかしら、などと呑気な空想をしているうちにアーク・ダイオーン専用の執務室に辿り着くと、すでにそうそうたる面々が室内に整列しており、姿を見るなり背筋を伸ばした。
「お呼びでございますか、我が主」
一同を代表して発言したのは鬼人武者さんだ。
「うむ、そうだ。……良い。楽にしてくれ」
そこに居並ぶのは五人の幹部。
戦闘・訓練班幹部は、鬼人武者さん。
施設維持・防衛班幹部は、ロック・クリードさん。
特殊潜入班幹部は、抜丸さん。
製造・搬入班幹部は、ザ・クロウラーさん。
衛生医療班幹部は、クイン・ホーネットさん。
それに加えて、情報処理班幹部は、あたしに同行しているルュカさん。幹部ということならさっきお話ししていたブラッド・バイパーさんも含む七人だけれど、彼にはもうすでに使命と任務を与えてある。
隣のルュカさんから目で合図を送られ、あたしはゆっくりとこう切り出した。
「呼び出して済まない。先程ルュカと新たなる作戦を考案し、それを伝えようと思ったのだ」
「では、作戦の
さっ、と口を挟み、ルュカさんがついさっき決まったばかりのあたし考案の作戦を丁寧に補足を交えながら細かく説明してくれる。いやん、有能すぎ。
「成程……」
「凄いッス」
「ええ、そうね」
五人の幹部は、それぞれの思いはありつつも、すっかり感心したように
「それにあたり、各班に属する個人ごとの特性を今一度見直す必要があるってことよね?」
「そうだ、ホーネット。察しが良くて助かるぞ」
あたしはイブニングドレスを模した金のセクシーなスーツの上に白衣を纏ったホーネットさんに頷いてみせた。蜂がベースらしく、羨ましいを通り越して行き過ぎな感のある超ダイナマイトボディである。
「人化できるのを前提として、体力・知力・器用さ・生活態度……それぞれ五段階で評価をすれば良いんでしょうか?」
つまり、構成員たちの通信簿をつけてもらおうというのだ。
「うむ。まずはそれで良い、クロウラー」
あたしは顔の向きを変えて頷き返しながら、
「ただし、人化できない者については、基本的にお前とクリードの管轄下に移し、施設内の作業に従事してもらうことになるだろう。さすがに怪人の姿のままでは、無駄に一般市民を怖がらせるだけだからな」
有難いことに、二人とも異を唱えることなくすぐに同意してくれる。幹部だけに皆有能だ。
「オイラのとこも同じッスか?」
「いいや」
抜丸さんが尋ねると、あたしは首を横に振った。
「抜丸よ、お前の班だけは別だ。お前たちには今与えている使命と任務――すなわち、偽りの正義を暴くことを続けてもらいたい。お前たちには他の者にない、優れた隠密行動のスキルを有する者たちばかりだ。それを最大限に生かす方向で考えたい。そして……引き続き、彼らを探す任務も続行して欲しい。面倒事ばかり押し付けてしまうことになるが――」
「いえいえいえ! 御意ッス!」
心強いが、やっぱり超チャラい。
でも、その腕前は今までに何度も証明済みだ。
「私の班はいかがしましょうか?」
「あ――ああ、そうであったな」
忘れてた。
訳じゃないけど、ルュカさんの班へ与える使命と任務も少し特殊だったっけ。
「この後説明する。相談しなければならない相手もいるからな。では皆、早速始めてくれ」
びしっ!と一礼して五人の幹部は退室していった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます