第34話 主従の契約。その2


『理沙視点』

 

 女子更衣室。


 色とりどりの下着姿の同年の女子で溢れていた。


「きゃあ、殺妹ちゃん。

 その下着カワイイね。

 どこで買ったの?」


「駅前にあるショッピングモールです。

 みちるちゃんは、いつもどこで下着を買われているんですか」


「あたしは、通販サイトで買うことが多いかな」


「そうなんですか?

 通販もいいですけど、実際にお店に行って買うのも良いもんですよ。

 今度、一緒に下着を買いに行きませんか」


「ええ、いいわよ。

 仲の良い友達と買い物に行くなんてリア充イベント、一度は体験したいと思っていたのよね。

 あと駅前のカフェにも寄っていいかしら」


「みちるちゃんって、面白いヒトですよね。

 もちろん、いいですよ。

 他にも行きたい場所があればおっしゃってくださいね」


「殺妹ちゃんは、いつも優しいから大好き。

 愛理沙お姉ちゃんも一緒に行こうね」


「ああ」


「ねぇ、愛理沙お姉ちゃん。

 あたしたちの話、ちゃんと聞いていた?」


 人命救助のためとはいえ、私が露璃村くんにキスしたことがそうとうショックだったのか。


 ありささんはどこか、上の空だった。


 彩妹もみちるさんも、その話題をどこか避けているような気がした。


 そんなことを思いながら私は、自分のロッカーを開けるとーーーーーー。


「えっ!? ウソでしょ……」


 替えの下着がないことに愕然とした。


『下着を返して、欲しければ『独り』で保健室に来い。

 このことを誰かに話せば、露璃村大助だいけすに不幸が訪れるだろう』


 そう書かれた差出人不明の白いカードが制服の上に置かれてあった。


「理沙さま、着替えないんですか? 休み時間終わっちゃいますよ」

 

 みちるさんが心配そうな顔で訊いてきたので、私は動揺を顔に出さないように、作り笑いを浮かべて


「ええ、わかっているわ」


 ロッカーから制服を取り出し、着替え始める。


 脅迫に屈したみたいでしゃくだけど。


 むやみに犯人を刺激するのは、よくないわよね。


 そう自分に言い聞かせる。




 廊下。


 誰にも気づかれていないわよね。


 私がノーブラ、ノーパンだということわぁ。


 いつも以上に気をつけて、保健室に向かう。


 それにしても保健室って、こんなに遠かったかしら?


 もう随分と歩いている気がするのに、目的地が全然見えてきません。

 

 肌を刺すような視線を感じ、いつも以上に見られている気がするし、脚が鉛のように重く、胸が締め付けられ、息苦しいわ。


 それに今日は廊下を吹き抜ける『風』が、強い気がするわ。


 スカートがめくれないのうに気をつけないといけませんわ。




++++++++++++++++++++++++




「約束通り、独りで来ました。

 お願いします、下着を返してください」


 ドアを開けると、中に居たのは、保健の先生ではなく『ルナ』さんだったわ。


「待っていたわよ、アプロディーテ。

 右手の甲に浮かんだ紋章について、知りたくはないかしら。

 知りたいわよね」


 紺のスクール水着の上に清潔感溢れる白衣姿で、可愛らしい『うさ耳』と大人の色気を感じさせるセクシーな『網タイツ』をつけたハーフエルフが仁王立ちしていたわ。


「まずは、下着を返してください。

 その後でちゃんと話を聞きますから。

 どうしても返してくれないと言うのなら、私にも考えがあります」


「ぬぬぬぬぬぬ。

 わ、わかったわ」


 ルナさんは、更衣室から盗んだ私の下着を返してくれました。


「では、右手の甲に浮かんだ紋章について説明するーーーーーー」


「ちょっと待って!?

 露璃村くんが目を覚ましてからの方がいいと思うわよ。

 そのほうが、効率的でしょう」


「それもそうですね」


「何か? 手伝えることはありますか?」


 ベッドの傍らに座り込んで、彼の手を握りしめながらルナさんに尋ねる。


「そうね。汗でも拭いてもらおうかしら」


「はい。わかりました」


 濡れタオルを受け取り、汗ばむ柔肌を目にした瞬間。


 あ……ゾクゾクしてきちゃう……! もう我慢できない。


 気分は最高潮に達し。


 ベッドの上に上がり、たくましい胸元に顔を近づける。


 肌になじんだ彼の香り嗅いでいるうちに、自然と笑みがこぼれ、汗ばんだ肌をぺろりと舐めてしまう。


 ぺろ~ぺろ~ぺろ~。


 ダメっ!? イケないことなのに、やめられないよ。


 それに……すんごくドキドキしちゃってるよ……。


 少しでも気を緩めると、エッチな声を上げてしまいだわ。

 

 ぺろ~ぺろ~ぺろ~ぺろ~ぺろ~ぺろ~。


 でも、やめられないのよ……。


「アプロディーテって汗フェチだったのね。

 全然知らなかったわ」


「きゃあ!? 耳元でヘンなことを囁かないでください」


「可愛らしい反応ね」


「もう、いい加減にしてください」


「怒った顔もキュートよ」


 顔から火が噴き出しそうなほど恥ずかしいのに、私は決して手を緩めることせず、看病を続けた。


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