第35話 エルフの女王を決めるための代理戦争に参加することになった俺は……


『大助視点』


 目を覚ますと保健室のベッドの上で寝ていた。


 背中には、やや硬いマットレスの感触。


 そして右の甲に浮かんだ太陽の紋章……。


「なんじゃ、これは……」


「あっ!? 目を覚ましたのね。

 どこか、痛いところはない。

 露璃村くん」


 姫川さんが俺の右手を両手で優しく包むと、彼女の体温が伝わってくる。


 水着姿の姫川さんも可愛かったけど、制服姿もカワイイな。


 心臓が跳ね上がり、血の巡りが一気に加速した。


「まだ少し頭が痛むけど。これくらいなら問題はない」 


 彼女はまるで聖母のような慈しみのこもった笑み浮かべて。


「本当に心配したんだからね」


 綺麗な金色の瞳が静かに、俺のこと見つめてくる。


「姫川さんは相変わらず心配性だな。

 でもありがとうな、ずっと付き添ってくれて」


「バカっ!? 

 何、小っ恥ずかしい言ってるのよ」


 恥ずかしそうに頬を染め、目を伏せる。


「照れた顔も相変わらず可愛いな」


「ご、ゴホン。

 わらわが居ることをお忘れではないでしょう」


 スツールに座っていたルナちゃんが声をかけてきた。


「ここ、保健室だよね。

 なんで、ルナちゃんが居るの。

 もしかして、この右手の甲に浮かんだ紋章と何か、関係があるのかな」


「察しがいい男は、嫌いではないぞ。

 それは『レガリア』、王の証じゃ。

 そしてわらわやアプロディーテの右手の甲に浮かんだ月の紋章は、王に忠誠を誓った家臣の証じゃ」


「レガリア、王の証……それから……か、家臣!?

 なあ、姫川さん……ルナちゃんはいったい何を言ってんだ」


「そ、それが……ちょっと言いにくいんだけど……私たち露璃村くんの奴隷になってしまったみたいなのよ」


「平たく言えばそういうことじゃ。

 不服そうな顔をしておるな。

 こんな美少女を2人も奴隷にできて、何が不服なのだ」


「俺は変態だがっ!? 紳士だから『奴隷』ということは好きじゃないんだ。

 だから今すぐにこの紋章を消す方法を教えろ」


「ごめんなさい。それはわからないの。

 でもエルフの女王を決めるための代理戦争に参加し、『優勝』することができれ ば、契約を解除する方法もわかるかもしれませんね」


 太陽の紋章が金色の光を放ち、さっきとは打って変わって、ルナちゃんはしおらしく答えた。


 これが『王の力』なのか!?


「それしか方法がないなら、参加してやるよ。

 その代理戦争とやらに。

 そして優勝してやるぜ」


「本気で言ってるの、露璃村くん。

 どれくらいの規模なのかも、大会のルールも、対戦相手のことも何もわかっていないのよ。

 最悪……命を落とすことになるかもしれないんだよ」


「だとしても、俺は姫川さんをこのまま奴隷にしておくことなんてできないよ」


「私が何を言っても無駄みたいね。

 はぁ~。わかったわよ。

 なら、私も参加するわ。

 その代理戦争とやらにね」


「姫川さんが参加してくれるなら、もう優勝したようなものだな」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る