「適性以前の砂体質」

「…ん?ああ、チャマメ先生じゃん。

 何、私の受けた適性検査はやっぱり間違いだった?」


そう言って起き上がりながら

音楽プレイヤーを停止させるアンナに、

クロサキは困ったように首をふります。


「こらこら、そんなあだ名で呼ばないの。

 それに、あなたはイデア式能力検査の示す通り、

 英語を含めた数カ国語の原語を自由に話せる才能があります。

 通訳にも翻訳家にもなれるんだから自分にもっと自信を持ちなさい。」


そうして持っているタブレット式の健康観察板を

レジの読み取り装置のような道具に取り付けると、

クロサキは彼女の耳にピッと装置の光を当てます。


「うんうん、特に病気はない感じかな。

 あー、でも口内に歯石があるわね。歯磨き不足かな?

 このうがい薬で取れるから、ちょっと口をすすいできなさい。」


瞬間、アンナは真っ赤な顔になり、

クロサキがポケットから出した薬の小瓶をひったくると、

そのまま女子トイレに駆け込んで行きました。


「…口内も見れるんですか?」


いぶかしげなヨシローに、

クロサキは「ふふっ」と笑って光を当てます。


「まあ小型版の高性能CTスキャンだと思ってくれていいわ。

 遺伝子の病気や体の細かいケガのあとも観れるんだけどね、

 …あー、やっぱり君は運動不足の寝不足気味だわ。

 後で体の調子を整えるストレッチを教えてあげるから、

 お風呂に入って血行よくしてちゃんと布団に入るように。

 そうしないと今後、頭もちゃんと回らなくなっちゃうわよ。」


「あ、はい…」


もぐもぐと黙り込むヨシローに、

クロサキはジョン太の方へと機械を向けます。


「さて、ジョン太くんはどうかな…んんん?」


すると、タブレットを見ながら首をかしげるクロサキ。


「体の99パーセントが結晶化した鉱物?

 え、ちょっと待って。あなた一体…?」


その瞬間、再びぐいっと何かに引かれ、

ジョン太はまたもや、何もわからなくなってしまいました…

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