「増えたジョン太」

管理室に無数に広がる丸窓。

…その窓のに何人ものジョン太が映ります。


透明なガラスのドアを妖精によってこじ開けてもらい、

手近なバナナの木から実をもぐジョン太。


通路の廊下を歩き、

やってきた透明なエレベーターに

意気揚々と乗り込むジョン太。


受付ロボットに恐る恐る話しかけるジョン太など、

彼らはてんでバラバラ、思い思いの行動をしています。


そして、先ほどまでジョン太がいたはずの

青少年学習機構の室内が映る窓には、

驚いた表情のクロサキやジョン太を探す

ヨシローの姿がありました。


「なんで、なんで僕がこんなにいるんだ…?」


窓の向こうのジョン太たち、

彼らが何をして何を思っているのか、

それが手に取るようにわかってしまうことに、

窓を見つめるジョン太は戸惑いを隠せません。


「じゃあ、僕は一体…?」


そこに、ルナの声がひびきます。


「これね、急に人が増えた理由は!」


そして、ルナがパトリシアの首から外したのは、

太陽の形に何枚も板を重ねて作られた羅針盤のようなペンダント、

そこには1から1,000までの細かいメモリが付いています。


「ジョン太、この子が装置を動かすたび、

 別の場所にあなたが何人も現れるみたいなの。

 これはメモリを動かすたびに人を増やすアイテムなのよ、

 …あなた、何か心当たりはない?」


ルナの質問にとまどうジョン太。


メモリのついた羅針盤のようなペンダント。


でもこんなもの、見たこともなければ

どのように使うのか見当もつきません。


そんな時、ジョン太の手元にあったボトルから、

一つの泡が顔をのぞかせます。


それは、泡の妖精スキューマ。


彼はジョン太とルナの前までふわふわと漂うと、

コホンと咳をしてこう言いました。


『よろしければ、説明しましょうか?

 商品の紹介もうちの会社の義務ですので。』


その時、ルナの腕の中のパトリシアが

「ふんっ」と不機嫌そうに鼻を鳴らすのを聞きました。

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