第1話:はじまりの始まり


校庭をゆっくりと歩いて、校門を出ると見慣れた陰が立っていた。

「颯輝、また早退か」

「うっせ、澄兄ぃ。またホの仕事かよ」

こいつは俺の兄の澄哉|≪すみや≫。

高校を2年で中退して、今はホスト。ホの仕事をしている。まぁ贔屓目なしでイケメンだから仕事には困らないとは思うけど。

「ハハハ、まぁいい。颯輝、これからちょっと気晴らしに行かないか?」

あんな兄だけど、面倒見はいい。だから嫌いじゃない。

「また風俗町じゃないよね?」

「…」

…けど、頭のネジがちょっと緩い。

図星だったな。あっぶねぇ…

「できたら自然の中がいい」

「わかった。じゃあ行こうか」

そう言い澄兄ぃは俺を車の助手席に乗せて、シートベルトの着用したのを確認せずに出発した。

慌てて澄兄ぃのシートベルトを着けてから俺のシートベルトを着ける。

澄兄ぃがシートベルトを着用せずに停免になった回数なんて数えきれない。

俺がしっかりとしねぇと…‼︎

「Σ澄兄ぃ、速度‼︎」

「大丈夫だ‼︎15…あ、今20しか超えてない‼︎」

「いやダメだろ‼︎また停免だって‼︎」

そう叫び、俺たちが乗っている車は真っ直ぐに琵琶湖の方向へと走っていった。

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