真・ファイルNo.4:永きに渡り宇宙を駆けよ

 2020年5月20日。アメリカ合衆国のフロリダ州、ケープ・カナベラル空軍ステーションから、一基の『アトラスV』ロケットが大空へと向けて離昇。ソレは確固たる信頼性の元無事打ち上げを成功させ、そのペイロード……未だ謎多き再使用型宇宙往還機『X-37』を、黒き大海宇宙へと解き放った。


 『X-37』。それは、今もなお現役で・・・・・・・運用が継続されている、前述の通りアメリカ合衆国の保有する再使用型再往還機である。

 この機体は、前回述べた『X-34』同様、その当時運用中であった『スペースシャトル・オービーター』の代替として、未来を見据えた『技術試験機』の肩書きの元開発が企図されているものである。


 開発は1996年より“NASA”主導で開始。開発・設計にはロッキード・マーティン社、及びボーイング社が声を上げたが、ボーイング社は本機の設計・開発はもちろんのこと、その前座として機体スケールを80%に抑えた『X-40』の開発も行うということもあり、ボーイング社にその設計・開発が委ねられる。


 この『X-40』は、『X-37』開発に際して必要とされる各種自動制御システムの開発や、『X-37』の機体設計による空力特性確認等のために開発された。そのため本機の運用期間は長くなく、試験飛行は8回。それも無動力ゆえ滑空飛行であり、2000年には『X-37』開発計画に取り込まれる形で試験が終了。『X-37』開発計画は、これと同時に(正確には1999年から)本格化した。

 これに際し、『X-40』を代替する『X-37A ALTV(Approach and Landing Test Vehicle)のi』、本来の再使用型宇宙往還機としての役割を全うする『X-37B OTV(Orbital Test Vehicleの意)』の製造が決定された。


 当初の構想では『スペースシャトル・オービーター』のペイロード部にこの『X-37』を搭載する『ミステル』や『XF-85』、もしくは『ズヴェノー計画』よろしく双子機化する予定であった。だが、それでは経済的によろしくなく、開発計画そのものの遅れや、2003年に発生した『コロンビア号爆発事故』の影響を受け、『デルタIV』ロケットへの搭載が可能なよう再設計が施された。


 さらに、2002年には“NASA”が『オリオン』ロケットの開発に注力すべく、この『X-37』開発計画を“DARPA”に委託。それ以降、本計画は軍事プロジェクトして推進されることとなる。


 そして2004年、『X-37A ALTV』は完成した。『X-40』同様無動力であるため、ある一定高度までの運搬役たる母機にはスケールド・コンポジッツ社の『ホワイト・ナイト』が選定された。2005年には実際に運用が可能かの適合試験を実施し、無事通過。『X-37A ALTV』は2006年、モハーヴェ砂漠上空にて『ホワイト・ナイト』から投下され、初飛行・自動操縦での着陸を成功させた。


 その一方『X-37B OTV』は、計画上2008年にテスト飛行を実施する予定であったが、前述の通り計画の進捗に遅れがあったため2年遅れの2010年4月22日にテスト飛行が実施された。……もっとも、“テスト飛行”と銘打ってはいるものの、その期間たるや数分数時間なんてものではなく、日数にして200日以上に渡る、非常に長期的なものであるが。

 このテスト飛行で数々の試験を実施した本機は、打ち上げより7ヶ月後の同年12月3日に、自動操縦でヴァンデンバーグ空軍基地へと着陸した。


 それから4ヶ月後の2011年3月5日には、2号機のテスト飛行も実施された。同機も1号機同様……いや、設計上の活動限度期間である270日を超え、400日以上に渡り宇宙に居座り続けた。いくら一機失っても潰しが効くとはいえ、これはやりすぎと言えなくも無い。


 これらテスト飛行後も、『X-37B OTV』は1・2号機が入れ替わる形でテスト飛行も含め5回の飛行、平均して700日近く宇宙空間を浮遊した。

 ミッション内容の多くは機密とされているが、『スペースシャトル・オービーター』と違い超長期に渡り宇宙空間での実験が行える利点を用いて、宇宙空間における再使用型往還機への影響の検証等が行われているとされている。


 アメリカ合衆国にてレールガンの開発が中止されてしまったこのご時世、本機にはロマン枠として頑張って欲しいものだ。(直近では2020年5月にも本機の打ち上げが実施されているが、果たしてなん年後に地球上に舞い戻るのだろう)

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突然だが、自己満でロマン兵器について解説してみようと思う〜紅茶でも飲みながらフィッシュチップス感覚でお読みください〜 えるでぃあん @ELDIAN

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