真・ファイルNo.3:さらなる未来を夢見た翼

 ——『X-34』。それは、“NASA”が当時現用の再使用型宇宙往還機『スペースシャトル・オービーター』の後継として開発が進められた、次世代の再使用型宇宙往還機、その技術実証機である。


 この機体は『スペースシャトル・オービーター』の欠点たる経済性の克服を果たした、低コストかつ安全に軌道上へと積載物を運搬するお財布に優しい機体として、“NASA”から空中発射が可能な『ペガサス・ロケット』の開発実績を持つ“オービタル・サイエンシズ社”へと発注する形で、1996年より開発が開始された。


 本機は無人機であり、胴体は前縁部が円錐に近い形を持つが、後部へと向かうにつれ四角くなっている。尾翼は短尾翼、主翼はクリップド・デルタ翼にストレーキを有する、言うなれば『スペースシャトル・オービーター』の翼構成をそのまま移植した感じだ。


 スペックは『高度1万メートルより母機からの空中発射』『最大到達高度80km』『最高速度マッハ8』が計画されたほか、『悪天候時での運用能力』『2週毎ペースでの打ち上げ能力』の獲得も目標とされた。前者2つはあまり目立つ性能ではないが、後者2つについては異なる。

 『悪天候時での運用能力』は地上発射型のロケット等にとってそう簡単になし得る技術ではなく、例えば『スペースシャトル・オービーター』だって、打ち上げには『降雨の可能性が一切ない』ことや『高度9000m到達までに雷の発生率が20%以下』等厳しい条件が課せられており、打ち上げだけでも一苦労なのだ。その点、気候条件に左右されない本機はその運用能力に大きな余裕が生まれるのは言わずもがなだ。

 『2週毎ペースでの打ち上げ能力』に関してだって、打ち上げに莫大な時間を必要とする地上発射型のロケットとは違い、ペイロードが少なかろうが数で言えば圧倒的だ。……まあ、これに関しては『打ち上げ費用』の問題もあるのだろう。前述の『ペガサス・ロケット』がそのいい例で、空中発射能力はあるが発注量が少なく、結果的に打ち上げコストが増大し地上発射型ロケットに顧客が流れる本末転倒な流れになっている。


 本機は計画では3機の製造が予定され、そのうちの1機が部分的完成にこぎつけ、1999年から2001年にかけ3回の飛行テストを行っている。もっとも、“部分的”の名の通り本格的な飛行というわけではなく、母機こと『スターゲイザー』から空中で投下し、滑空での飛行した程度のようだ。


 この後、2番機以降は1億2千万ドルを超える予算の問題により製造が中止され、1番機も2001年には計画が中止したことにより破棄。2020年、主翼・胴体後部のパネルが外された状態の本機が、飛行機の墓場として有名なモハーヴェ空港に放置されていることが確認されている。


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https://www.nasa.gov/centers/armstrong/history/experimental_aircraft/X-34.html

https://ja.wikipedia.org/wiki/スペースシャトル

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