終章
エピローグ
イルダール戦史 ~あるイルダール史研究者の手記~
イルダールの歴史は開拓と繁栄、そして戦争の歴史である。その中でも最初期に分類されるイルダール内戦では多くの難民を出した。復興に二十年余り、後の独立戦争、さらに強化兵士の投入によるイルダール事変まで、イルダールは惑星改造から五十年、入植開始からさらに五十年余りで資源惑星から戦禍の続く不遇の惑星となった。
そんなイルダールは、しかし『戦争という経済』によって支えられ、発展を遂げることになった。さらに中期、後期と大小の戦争は続いていくが、それによって人々がこの辺境の惑星に関心を抱き続けるというのは皮肉なことである。
イルダール内戦において語られるひとつの伝説がある。
戦禍の最中、ビルド・ワーカーに乗って戦場を走った少女たちの話だ。当時の新聞も残っているが、今まで多くは語られなかった。テラリスのプロパガンダだという説がもっとも有力だが、エルキスタの医師で三度の戦争を経験したアミナ・ハッキネンの手記には、開設された難民キャンプで彼女たちと出会い、少しの間、行動を共にしたという記述がある。
彼女たちは実在したのか、したのならどこから来てどこに消えたのか、そもそも彼女たちは何者なのか。
イルダール独立のために戦った英雄のひとりであるセリア・マーチスは、自身の最初の戦いについて、内戦で殺された家族の仇討ちのためビルド・ワーカーを襲撃した旨の記述を残している。しかし内容そのままだとすれば彼女は当時九歳ほどであり、また経過日数的にすでに戦争の終結宣言がなされていて、到底事実だとは考えにくい。これは彼女を伝説的に語るための創作であろうと思われる。
後のテラリス軍総司令官ユベール・ブロフは内戦への武器供与などの関与認め、当時アンダー・コマンドと呼ばれたテラリスで訓練された兵士たちの暴走が事態を悪化させたと語っている。その中で難民を避難させるための広報活動について、民間の新聞社に対応させたとしており、例の写真もそのために用意させたものである可能性が高い。
彼女たちは本物なのか、それとも戦争が生み出した幻影に過ぎないのか。歴史は未だにその答えを用意してはくれない。
≪終≫
讐撃の機攻少女隊《フルメタル・ガールズ》 KAI@WordsARTWORKS @Kai_victoryX
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