第八章 因果の果て
第一話 復讐の誓い
「こいつはどうだ?」
サレグが見せたのは、巨大な鉄球を持ったビルド・ワーカーだった。左右のクレーンに二つ、正面にはガードするためのポールが二本立っていて、車体中央の運転席を守っている。車体は通常より小型のものが十字に連結されている。小型といっても兵員輸送用の六輪トラックの荷台くらいある。全体で見れば相当大きなビルド・ワーカーだ。
「ブレイク・モンガー、解体現場で使われているやつだ。古い住宅をぶっ壊したり、荒い岩盤を崩すのに向いている。開拓特需で建物の立て替えが進んでいるからな。テラリスが最近になって導入したやつだ」
動かせるのか? とミルスが聞くと、サレグが灰色の繋ぎに腕を通しながら、もちろんと応えた。
「これから先は何でも出来ないと食っていけないからな。上手いもんだぜ?」
そしてサレグはセリアの頭をポンポンと叩いた。
「なあ、これで俺がみんなの仇を討ってやるから。お前はテラリスに保護してもらえ。な? ミルスもいるし、それが良いって」
しかしセリアはスマート・タレットのキャリーバッグの側でそこに座り込んだ。意地でも復讐をしようという意思の表れだ。セリアは片時もスマート・タレットを手放さない。
仕方ねえな、と半ばあきらめたように、サレグはミルスに周辺の地図を見せた。合流した部隊にこっそり見せてもらい、書き写したものだ。
壊滅した村を出てから休まずに歩き、ようやくテラリスの部隊と合流した。リスタル攻略用のビルド・ワーカーを引き連れていたのは運がよかった。生き残った兵士たちが揃って部隊長を説得し、その中の一台を借り受けることが出来たのだ。
「同胞団はこの辺りに中継基地を作っている。基地っても単なる物資の一時保管場所だが、リスタルから逃れた連中が百人以上はいるようだ。その辺りはやっぱやつらも一枚岩じゃねえな。多分幾つか谷になっているどれかだろう。狙いは逃げたビルド・ワーカーのみだ。網を張って出てきたら追跡して叩く。基地に近いと後ろから挟撃されることになるからな」
「あたしも行く」
見上げるセリアに、サレグはもう一度、ダメだ、と念押しした。
「やつは必ず俺が倒すから。まあ、もし俺がやられたら、その時はセリア、お前の出番だ」
どうすればいいの? と聞くセリアを見て、ミルスが、おい、とサレグを肘で突く。
「仕方ないさ、こうでも言っとかないと納得しないだろう。でも万が一俺が失敗したときは……」
「ああ、俺たちでその基地を襲撃する。敵が何人いようが何があろうが知ったことか!」
「そいつは最後の手段だ、セリアを守ってやってくれ」
サレグは言うと、待機していた兵士七名を連れて、ブレイク・モンガーの車体に登った。みんなあの村の生き残りだ。
「セリア、行ってくるぜ! ミルス、みんなを頼んだぞ!」
ああ、といって手を振るミルスに敬礼をしてサレグは運転席に乗り込んだ。そして兵士を乗せて発車する。
おじちゃん! とセリアが追おうとして、しかし途中で止めてミルスに抱きついた。
ミルスはセリアの頭を撫でながら、サレグの武運を祈るしかなかった。
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