第13話

レベル上げをするために街を出た俺達はどこの狩場に行くか悩んでいた。


「三人でレベル上げならBOSS周りしようよ!」

「お前は馬鹿か?!こいつはまだLv1 だぞ?!絶対途中で死ぬだろ!!」

「いや、行こうぜBOSS周り!」


サツキの馬鹿な提案にシャケの開き直りはその目をキラッキラさせながら興奮した様子で肯定する。


「お前ら本当に馬鹿なんじゃないのか?」

「とか言いつつお前も嬉しそうだが?」

「ぐっ」

「それじゃあ決定ってことでいい?」

「わーったよ、死んでも知らねぇからな?」


そんなこんなでBOSS周り巡りをすることになった俺達はこの前倒したアングリーベアーを倒しに来たのだが……。


「せっりゃぁ!!」

「何でだァァァァ!!」


道中の兎狩り中シャケの開き直りの行動に思わず俺は叫んだ。


「なぜプリーストであるお前が前線に出て戦う!!」

「え?よくあるじゃん、バーサークヒーラー」

「お前はラノベの読みすぎじゃこの馬鹿!!」


そう、シャケの開き直りがめざしているのはバーサークヒーラー、つまり回復出来るぜ?でも回復だけじゃつまらないから俺も戦うぜ!!ってなものであった。


いや、まぁ回復役は狙われて殺られちまえば役に立たなくなる訳だが?だからと言って自分から全線に出て死ぬ確率を上げるか?普通。


「いいねシャッケ!!攻撃も回復も出来るなんで万能じゃん!!」

「ここにも馬鹿いたよ!!こいつはMnd上げなきゃ行けないやつだろ!物理なんかに振ったら回復量が落ちるじゃねぇか!!」

「うるさいなぁアキは、ゲームは楽しければいいっしょ?」


そう言われると何も言えない。


「そう言うアキだってガーディアンにネクロマンサーっていうおかしなジョブしてるじゃん」


シャケの開き直りの一言に何も言い返せないアキを見たサツキはニヤニヤと笑いながら口を開きトドメの一撃を放つ。


「あーもーぅ、わかった……ならシャケ、てめぇそのスタイルでランカーに入る気はあるんだな?」

「ん?入りますけど?お前らの事だ、二人でランカーになろうとか言ってたんじゃないのか?」

「察しが良くて怖いな」


さらっと昨日起きた出来事を言い当てたシャケに少し畏怖の念を抱きつつ、やっぱりこいつは俺らのことを理解してるんだな、と少し嬉しくもあった。


「ならさっさとBOSS倒してレベル上げするしかないわな?」

「ちっ、圭太には勝てねぇな」

「シャケいえシャケと」

「おーーーい!!ベアー連れて来たよー!!」

「おま、馬鹿野郎!!」


アキはサツキが笑顔で連れてきたアングリーベアーに引き攣りながらもパーティーメンバーとアングリーベアーの間に大盾を構え割り込む。


「うっらぁ!!」


アングリーベアーの突っ込んで来た勢いを利用し熊の弱点である鼻に大盾を振り抜き攻撃すると流れる様にタウントを発動する。


「グヴアァァ!!」

「攻撃は任せた!!」

「おう!!」

「りょうかーい!!」


アキがアングリーベアーの攻撃を受けるとその隙にサツキとシャケが大盾の脇から飛び出しサツキは流れる様に前足、後ろ足、そして背に乗り走りながら切り刻む。

そしてシャケはと言うと━━



「こいつくっそ硬いんですけど!?」

「あたりめーだ!!」



━━熊を殴ったことによって自分にダメージが来ていた。


「『下級回復魔法ヒール』、俺こいつ殴んのまだ無理だわ!!」

「だろうな!!」


今頃気がついたシャケにアキは案の定といった様子でアングリーベアーのヘイトを稼ぐと左手の指を鳴らすと共に『サモンほね太郎』と唱え二体を同時に召喚する。


「おいおいかっこいいなアキ!!」

「そりゃ、うっぐっ、どうも!!やれ二人とも!!」

「「カラッ!!」」


シャケの賞賛を軽く流すとスケルトンブラザーズに命令しアングリーベアーの攻撃に参加させる。


その時、アングリーベアーが身体を木に叩きつけサツキが振り落とされた。


「あ、やば」

「五郎やれ!!」


インターセプトが間に合わないと察したアキはくま五郎に命令する。

その命令を受けたくま五郎はサツキを狙って腕を振り上げたアングリーベアーの顔面を蹴り上げ攻撃を無理やりキャンセルさせる。


「でかした!!『タウント』!!」


アキは上手く攻撃をキャンセルをしたくま五郎を褒めると、クールダウンが終わったタウントを即座に発動させる。


「シャッケヒールお願い!!」

「ほい来た『下級回復魔法ヒール』!!」

「ありがとう!!さぁどんどん攻撃しちゃうよ!!」


シャケからヒールを貰ったサツキはニッと口角を上げると手に持っていた剣をアイテムボックスへと仕舞い、グレートソードを取りだした。


「じゃっじゃーん!!対BOSS用高火力バスター!!」

「いやそういうのいいから攻撃してくれよ!!」

「ちぇ〜つまんないの〜」


あのですねぇサツキさん、タンクってモンスターの攻撃を一身に受けてる訳で楽じゃないんですよ。

このゲーム無駄にリアルだから精神の削れ方が他のゲームとは段違いだし━━


「━━ってあっぶねぇ!!」

「あ、ごめん」

「殺す気か!?」


アキが心の中で愚痴をこぼしていると嫌な予感がし、咄嗟にしゃがむとその真上をサツキのグレートソードが掠めていき、アングリーベアーの顔に大きな傷を作った。


「チェストー!!」

「ブルータスお前もか!!」


サツキのグレートソードを躱したことに安堵し立ち上がろうと思った瞬間、今度は頭上をシャケが飛び蹴りの格好で通り過ぎて行った。


そしてシャケの蹴りは上手くアングリーベアーの鼻にクリーンヒットし、クマが数歩後退りをする。


「結果オーライだが何か一言言えお前ら!」

「「カラカラ!!」」


アキがサツキとシャケに注意をするとその数瞬後後ろから骨の鳴る音が聞こえ、咄嗟に屈むとその頭上をほね太郎が投げたであろう剣とくま五郎が通過していった。


「へいブラザーズ、言えば良いって問題でもねぇからな?!」

「ほらほら!アキもアキも!!」

「はぁ?!」

「ほら、アキ!!飛び蹴りだ!!」


俺がスケルトンブラザーズに怒鳴っていると後ろからいつの間にか下がっていたサツキとシャケが何か煽ってきていた。


「だぁぁ!!もうやけじゃやけ!!」


もう真剣に攻略する気など失せてしまったアキはほね太郎達をゲートに返すと大盾と指輪を外し走り出す。


「こいつでも、食らっとけや熊がァァァ!!」


俺はそう叫ぶと額に刺さっていたほね太郎の剣目掛けてドロップキックをかまし、剣がアングリーベアーのメモリーにまで深く刺さる。


「グオォオォォ…………」


━━ドスン


脳を貫かれたアングリーベアーは徐々に目のハイライトを失っていき、力なく地に伏せた。


「ふぅ…………お前ら真面目にやれや!!」


そう叫ぶアキもほかのメンバーもその顔には笑顔が浮かんでいたのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る