第12話

街に戻っていたアキはアイテムボックスを開き先程メフィストフェレスが投げてきていた書物があるか確認していた。


うさぎの皮…………うさぎの角…………スライムゼリー…………これか、※◆ф♡¿……文字化けしてて読めないな。


うむ、捨てるか


俺はこの文字化けしたアイテムを取り出すと街の適当な場所に投げ捨てようと腕を振り上げ━━



━━ビーーーッ


「うわっふ?!」

『それを捨てるなんてとんでもない!!』


アキが投げるモーションに入ったその瞬間、アラーム音が鳴り、ムカつくメフィストフェレスの声がどこからともなく聞こえてきた。


「くっそ、完全に人をおちょくってるな。いいさ、なら読んでやるよ」


拳を握り額に青筋を浮かべるアキは 書物を開き読み始めるのだった。


む……しむか……の事、この……には"魔王"…………うそ……いがあっ…………る日……と、おろ…………王がその魔王………………を解き、この……に……………………


そこから先は文字が掠れていて完全に読めない。


これはなんなんだ?掠れてて読めないが言葉の断片で察するにこれを書かれたところで魔王とやらが何かの王に封印を解かれた、と言うような内容だが。


これはこれからのプレイに関係してくるものなのだろうか。


「おっいたいたアキ〜!!」


思考の海を漂っていると遠くから思考の海など干上がっているだろう人物の声が聞こえてきた。


これはおいおい分かってくることだろう、今は取り敢えず強くなって一ヶ月後のイベントに挑まなければ。


「ヘイジャスタウェーーイ!!」


サツキは意味の分からない事を叫びながらアキに向けてドロップキックをしてくる。

が、それをアキは手に持っていた書物でサツキのドロップキックを受け止める。


「やるな!!」


ドロップキックが不発に終わったサツキはそのまま書物を足場にし、クルクルと回転しながら飛び上がり体操選手のような格好で着地する。


「やるな、じゃねぇんだよ」


━━ゴッ


いきなり攻撃をしてきたサツキにアキは書物の角で頭を叩く。


「うぎゃっ、いった〜い!!」

「自業自得だ、さっさと圭太迎えに行くぞ」

「ラジャー!!」




~~~




「おっかしいなぁ〜」

「どこにいるんだあいつ」


俺達は待ち合わせ場所にしていた噴水広場待ち合わせをしていた、しかし時間からかれこれ30分以上が経過するというのに圭太━こっちではシャケの開き直りか━が全く持ってこないのだ。


「探してみる?」

「ならサツキよろしく、俺はAigがかなり低いから非効率的だしな」

「わかった、ちゃんとそこで待ってるんだよ?ナンパとか来てもついて行っちゃダメだからね?」

「誰がついてくか!!」


サツキのボケに俺がツッコミで返すとサツキはにっこりと笑い、持ち前のAigですぐさま描写距離の外へと出ていったのだった。


「さて、しばらく待つかな」


サツキを見送り独り言を漏らし、しばらく待っていると何やら三人組がこちらへ歩いてきた。


「ねぇ君うちとパーティー組まない?」

「お断りします」


何となく言うことが察せていたアキは予想通りの台詞に即答する。


「いや、話を」

「これでもネクロマンサーですけど」

「なら尚更一緒の方がいいんじゃないかい?」

「いえ、一人でも余裕なんで」


なかか引き下がらないいけ好かない野郎にだんだんと腹が立ってきた俺はあからさまに不機嫌な態度をとる。


「そんなはずな━━」


━━パチン


俺が左手で指を鳴らしたその瞬間、いけ好かない野郎が天高く舞い上がった。


「良い子だくま五郎」


俺が拳を振り抜いた姿勢で止まっているくま五郎に賞賛を送っていると野郎の取り巻きが武器を取りだし構える。


「おお、やる気かい?」


━━パチン


今度は右手を鳴らすとほね太郎がゲートから出現する。


「これで三対三で対等だね?」

「く、クソが!!舐めやがって!!やれお前ら!!」

「どうせスケルトンなんてレベル7の俺からしたらただのざk━━」


スケルトンを舐め腐った大柄な男が武器を振り上げてこちらへ駆けてきたが、それをくま五郎が腹部へ正拳突きを入れることで広場を囲うようにして建てられた建物の一つに背中を埋める。


「はい次!」

「く、くそがぁ!!」

「カラッ」


自暴自棄になったもう一人のプレイヤーがグレートソードを地面を走らせながら寄ってくる、それをほね太郎は足を払いをし男を倒すとそのまま馬乗りになり心臓へと一突き。


「ラストは〜君だけだよっ♡」


わざと可愛らしく笑うと顎を抑えている男の弱点━要するに金的━を蹴ると股間を押え跪く。


「ほらな?一人でも問題ないだろ?」

「は、ひゃい……」

「そういう事だ、待ち合わせしてるんでな。とっととどっか行ってくれ」


俺が冷たい視線で見下し言うと男はしっぽをまいて逃げていった。


「ふぅ、面倒だな……言っても話を聞かないやつってのは」


汗はかいてはいないが無意識に額を拭うとその数秒後周りの野次馬達からの歓声が上がる。


「やるじゃないか」

「あの子凄いな!!」

「ネクロマンサーってあんなに強いのか?」

「馬鹿言え、ハズレジョブだって書いてあったぞ?」


周りからの視線と熱狂に耐えられず噴水に腰かけ、禁断の書物を開き顔の前に出すことで顔を隠す。


これはかなり恥ずかしい…………ん?


書物に新しいページが追加されている?

これはどういうことなんだ?


「アキーー!!」

「すまん待たせた!!」


その時遠くから聞き覚えのある声が二つ聞こえて来た。


「遅い!!」

「ごめん、アバター作るのが楽しすぎてな」

「さっ、レベル上げ行こっか!!」


書物の疑問に関しては少し後回しになりそうだな。

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