一日目 振り返り

「で、イケメン坊主と仲良くなったと」

「仲良くっていうか、気晴らしに鎌倉観光してるって言ったら、穴場スポットとか色々教えてくれた」


 会社の休憩室で同期の大内おおちとお昼を食べながら、私は先日の鎌倉での事を話していた。


「名前は那雲なぐもさんだって」


 言わずもがな、坊主は神様などではなく、あの後にそう名乗られた。あろう事か神を名乗るとは、那雲さんはなかなかに恐れ知らずだ。


「いいなぁ。私も塩系イケメンと会ってみたい」

「でもハゲだよ」

「全然、オッケー!」

「まじか」


 大内はクール系の美人だ。わざわざハゲのイケメンを相手にしなくても、イケメンには事欠ことかかないだろうに。


「どんなところを紹介してもらったの?」

「えぇと」


 私は財布から、折り畳まれたレシートを取り出した。


「何でレシート?」

「他に紙が無くて」


 レシートには、テキトーな地図と地名が書き込まれている。


「てゆうか、字汚っ」


 そこには、奇妙な虫のような文字が張り付いていた。


御朱印ごしゅいんとか書かないのかな?」

「その場で書いてもらったものだし、筆とボールペンじゃ違うのかもよ?」


 大内はレシートをめつすがめつした後、私にそれを返した。


「またサボるの?」

「んー、またタイミングが合ったらねー」


 結局前回は、あまりの暑さに全然観光出来なかった。

 次行く時には、このメモを使ってみてもいいかもしれない。

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