第14話 当たり前の違い

 次の日の午後、今日も城外見学は続く。


「アンドレア、今日はどこに行くの?」


「農場でございます…が、その前に」


「何?」


「今日、国王様からのご注意がございまして…コホン。タマ子王女様の自由を認めさせて頂きたく…」


 アンドレアは不意に落ちない様子。だが国王から言われては仕方がない。


「長年執事として仕えて参りましたが、こんな事は初めてでございます…」


「自由にして良いのね!」


 タマ子はとても喜んでいた。



 やがて農場に着いた。広くはないが麦や野菜が植えられ、皆せっせと働いている。


「アンドレア?不思議なんだけど…」


「何がでしょうか?」


「馬小屋には女の人がいなかったわ。なのに農場は女の人がいる」


「そうでしたか?私は気がつきませんでした…」


「いいわ。自由行動になったらノアに聞いてみる!」


「はぁ…」


「これはこれは神の申し子タマ子王女様ですね!なんと可愛らしいのでしょう!初めまして農場長のレオでございます」


ほっそりとして眼鏡をかけた大人しそうな男性だった。


「初めまして。質問いいですか?」


「はい!なんなりと」


「この作物は収穫すると皆で食べるの?」


「滅相もございません。この農場で作った物は全て城の方々が召し上がるものでございます」


「作っても食べられない…」


「まぁ、そういう事になりますね」


「それは昔からのきまりですか?」


「左様でございます。当たり前になっております」


「じゃ、何を食べるの?」


「働いた分賃金というのがございまして、それで街に出かけ買い物をしております。これも皆当たり前の事でございます」


「当たり前…」


 タマ子は暗い気持ちになった。城の住人が働かないから食料を作ってもらっていたんだと理解したからだ。

 毎日豪華な食事を簡単にいただける毎日。タマ子にとってはこれが当たり前だったのだ。


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