第19話「能力」

「『アイテム生成』か」


 テンプレというかお約束と言うか。だからこそあると思ったが、やはり僕の管理するダンジョンにもその能力はあった。力を使って物質を作成する能力とだけ言うなら、ダンジョンの外壁などを作るのだってその一部とも言えそうだが、こちらはダンジョンへ外の人間たちの侵入を促す為のアイテムを作り出す能力だ。作り出せるモノは武器防具に道具、そして素材など色々あり、食材を作り出すことも可能、と言うことらしい。


「まぁ、ダンジョンの防衛を任せるモンスターとかも作り出せるみたいだしなぁ」


 有機物どころか生物まで生成できるのだから、食材の生成など更に簡単なのだろう。他にも侵入者をおびき寄せる言い方は悪いがエサとして鉱石の鉱床やら希少な薬草の群生地みたいなモノを作成することもできるらしい。


「命が引き換えとは言え希少な品が作りたい放題……狙われる訳だ」


 僕はこの世界に転生してダンジョン産のアイテムのことなど聞いた覚えはないが、もしダンジョンマスターと協力関係を結んで囲い込むこととか出来た場合、ダンジョンに力を得るための生贄と引き換えに希少なアイテムを融通してもらう、なんてこともできるだろう。それに生贄と言ったが、僕の様に他者が命を落とす、一生を終える場所をダンジョン化させておけば、ダンジョン内で死亡してダンジョンの力にする為だけに人命を消費させる必要もない。


「別に人に限った訳じゃないようだし……」


 僕も病院以外で候補として考えていたダンジョン化させる場所に家畜の屠殺場がある。人以外でもいいと知った時、もう一つ思いついたのは魚を〆る場所だが、これについては保存技術が前世と比べてお粗末なこの世界では船上になるだろうと踏んで断念した。海を動き回る船にはダンジョンを繋げられないからだ。遠隔の場合ロスも多く、船に住み込みで漁師として働くような場合でないとたぶん割に合わないだろう。


「屠殺場はできれば早めにダンジョンにしておきたいけど、リスクがな」


 僕が思いつくぐらいだ。ダンジョンコアを狙ってる連中だってすぐに思いつく。病院は一般人でも病気やけがで世話になることもあるし、些少迂回しても通り道だったから不自然さはないと僕は思ってるが、関係者でなければ屠殺場に足を運ぶなんて不自然この上ない。


「コアが最後に確認された場所を通った僕が足を運ぶのは、コアの持ち主が僕だって宣言するようなものだしな」


 独り言という形で考えの一部を口に出しつつ、これはありえないと頭を振る。もし屠殺場をダンジョン化させるならそれは地下から通路を伸ばしてという方法を採らざるを得ない。それなりの期間を過ごしているんだ、この街の地形あある程度把握しているものの、地面を進みながら地上の様子を確認せずに屠殺場へたどり着けるかと言うと少々自信がない。



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