#15 足跡
部屋、雨、ノートパソコン、山積みの本、山積みの課題、そして私。
6月最後の土曜日を色のないものにしたくなくて、YouTubeの自分による自分のためのリストのうちのひとつをずっと流しっぱなしにしていた。
もう何度も何度も観た動画たち。流れてくる音楽に耳をすませば、彼らが歌い踊り魅せるさまがすぐに浮かんでくる。
今の時代は恐ろしくて、たとえそのころをリアルタイムで見ていなくても、後から知ることなど容易だった。
だから私は、手ぐらいのサイズのこんな機械で、彼らの歩んできた道のりの欠片を見ることができてしまうのだ。
10年余りもの歳月を、人生を、たったひとつのことに捧げるなんて私にはできない。
幾年も前の彼の姿を見て思う。ここまでどれだけ、悩み、苦しみ、傷つき、もがいて、それでも進んできたのだろうか。きらきら輝く世界の裏側で、どれだけのものを犠牲にしたのだろうか。
今もなお彼は、彼らは、きらきら輝く世界に身をおいて、まばゆい光を放っている。それがどれだけ有難いことか。
昔の彼らの姿を見て、そして今の彼らに思いを馳せているうちに、いつしか私は泣いていたのだった。
ずっとノートパソコンとにらめっこしていても、本やテキストに目を通しても、課題はまだまだ終わらない。ひとつ終わったかと思えば、上からまた新しいものがふたつ降ってくる。それのくり返しだ。
7月の終わりまでずっとこんな感じだろう。でも、いつかはそんな課題が0になって、そして夏がはじまる。時が経つのは早いから。
明けない夜はないし、終わらない課題もきっとない。積み重なった時の上に現在と未来がある。だからもう少しがんばろうと、そう思えるのだ。
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