#1 わたしのポラリス


【ポラリス/Polaris】

 こぐま座α星。2100年の前後数世紀における北極星。


 星を見つけたいなあと常々思っている。ここで書く「星」はそのままの意味じゃなくて、自分の光となる存在のことだ。


 好きなひととか、恋人とか。もしくは、強い憧れを抱いている対象とか、そういった類の存在。自分を囲む宇宙のなかで、ひかりかがやく一等星。

 残念ながら私には、そのどちらもない。片思いでも両想いでもいいから、自分の人生を賭けてもいいと思えるくらいの本気の恋がしたい。たとえ自分の身が滅んでも、追いかけたい、ずっと見ていたいと思えるくらいの何かに出逢いたい。


 三浦しをんさんの〝きみはポラリス〟を読んだのは中学生のころ。教室の後ろの本棚に置いてあったから読んだ。だって、きれいなタイトルだったから。

 ひとたび読むと、強く惹き込まれた。授業は塾でやったことのくり返しだった。だからこれっぽっちも耳を傾けないで、ページが終わるまであの世界にずっとのめり込んでいた。

 かなり前のことで、内容はもうはっきりと覚えていない。ただ、当時の自分にとってそれがあまりにも鮮烈で、それだけがずっと記憶に残っている。


 その印象が強いから、今でも星に憧れているのかもしれない。


 いつか自分だけのポラリスを見つけたいと思う。見つかればいいなと思う。見つからずに死ぬんだろうなという予感もある。誰かのポラリスになりたい、とも、そんな存在には全く慣れていない、とも考える。


 ぽらりす。ポラリス。

 言葉にして、口のなかで飴玉みたいに転がしたくなるような、美しい響き。


 だからこの場所のタイトルに、この言葉をいれた。

 いつまでもどこまでも、どこかで輝いていて、ポラリス。

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