最終話

 こうして、清太郎君夫婦は無事にゴブリン討伐の手伝いを終え、家まで戻ってきた。

 清太郎君は女性器の研究を済ませ、雛子さんの素晴らしさを再発見している。


「ただいまぁ」

「ただいま」


 誰もいない自宅に、清太郎君夫婦は声を上げた。

 すでに格闘家ちゃんは別の冒険者とパーティを組んでおり、彼女はそちらと一緒にどこか依頼へ出かけている。


「はぁ、きつかった」


 雛子さんは玄関の扉を閉めると、すぐに衣服を脱ぎ散らかした。これぞ、雛子さんの早脱ぎ。清太郎君が瞬きした間に、一糸纏わぬ姿へ変化する。汗を洗い流すためか、スタスタと廊下を小走りで風呂場に向かっていった。

 さらに外で我慢していた屁を豪快に音を鳴らして放出し、清太郎君は不思議な匂いに包まれた。何となく、清太郎君はこの匂いが好きである。腕を広げて鼻で深呼吸すると、この匂いを大腸で作り出すメカニズムを推測する。


「さて、と」


 それから、清太郎君は玄関に散らばった雛子さんの下着を拾い上げると、それを持って脱衣所の洗濯籠の前に立つ。「まったく、仕方ないな」と言いつつも、その下着に染み付いた独特な匂いも清太郎君は大好きだ。

 もちろん、臭いし、汚い。

 しかし、それを乗り越えねば、雛子さんの真理へ辿り着くことはできないのだ。

 彼はパンツに鼻を擦り付けて匂いを堪能すると、ようやく雛子さんの待つ風呂場へ合流した。


「おまたせ」

「さぁ、早くお風呂に入りましょ」


 水魔術でドバドバと浴槽に水を溜め、それから炎魔術の熱で温める。

 それから雛子さんと一緒にお風呂へ入り、これまでの疲れを癒す。


 清太郎君は、今回のゴブリン討伐で再発見した雛子さんの魅力を思い出した。あの気持ちよさを生み出す秘密。きっと、彼女と性交死できた者は幸せだろう。

 今から彼女とセックスしたい。

 そんな欲望が清太郎君の中で急激に沸き出した。


「あの、雛子さん……」

「分かってるって」


 清太郎君が全てを言わずとも、雛子さんが勝手に理解してくれる。そのおかげで、口下手な清太郎君は大いに助かっている。こうした清太郎君の欲求を察知できるところも、雛子さんに惚れているポイントの一つだ。


「じゃあ、早速……」

「わっ」

「始めちゃいまーす」


 雛子さんは本番が早い。経験人数が多いのも、そのせいである。

 清太郎君夫婦はあまりセックスの場所を選ばない。基本的に、第三者に見られなければ、どこでもOKだ。

 お風呂の中で始めてしまった夫婦。

 一緒に体内へ入るお湯が毒性の強い体液を洗い長し、今の雛子さんはかなり妊娠しやすい状態になっている。といっても、子宮内部もさらに強力な粘膜で防御されているのだが。

 雛子さんをセックスで妊娠させるのは難しい。


 結局、清太郎君と雛子さんが怪人改造手術を受けたのか、という伏線に関しては、ノーコメントだ。うっかりゴブリンのボスと出会って、清太郎君たちが怪人に変身して戦う最終回でも盛り上がるかなぁ、とも考えたが、やっぱりそれだと清太郎君らしくない気もするので回避したのである。


 清太郎君たちの性格を考えると、なるべく戦闘など大きなイザコザを避けようとするだろう。せっかく殺伐とした現代日本社会から異世界へ逃げられたのに、自分から厄介事に首を突っ込むような真似はしないはずだ。


「サラマンダー」

「クラーケン!」

「変身」

「変身!」


 そういう変身場面は残念ながら割愛させていただく。

 ちなみに、サラマンダーは炎を撒き散らし、クラーケンは毒針を撒き散らす能力を持っている。サラマンダーの炎は水や消火剤で鎮火させることはできず、クラーケンの毒針を受けると全身に赤い水疱が弾けて命を奪う。どちらも大量殺戮に適した最強クラスの怪人で、たった半日で大都市を壊滅状態にできる。


 清太郎君たちは主人公というよりも、悪役の重鎮タイプみたいな存在だ。

 冒頭でラノベ主人公の熱血少年に深いトラウマを植え付ける方が向いているかもしれない。

 そうなる前に異世界へ転移できたのは、多くの日本国民にとって幸福だった。


 日本にいた頃は多忙とストレスで社会への破壊衝動に心が支配されていた清太郎君たちだったが、異世界でのんびり暮らせていることで今は随分と穏やかになっている。

 願わくば、このまま平和が継続してほしい。


「清太郎君、幸せ?」

「うん。幸せ」

「そっかぁ」

「雛子さんは?」

「幸せだよ?」

「なら良かった」


 今の世界の方が、自分たちに合っている。

 清太郎君が思うに、日本人は働き過ぎなのだ。先進国家を目指すのも結構だが、ゆとりを忘れてはいけない。社会が複雑化し過ぎてきて、清太郎君のような人間には生活が難しくなっている。


「ふふっ……じゃあ、もう一回やっちゃう?」

「お願いします」


 こうして、清太郎君は今日も雛子さんの研究に励んでいる。


「僕は、その、雛子さんとはいつまでも良い関係を築いていきたいと思っているんだ」

「うん」

「好きです。雛子さん」


 すると、雛子さんは顔を赤らめ、清太郎君をさらに強く抱き締める。


「ありがと、清太郎君」


 愛さえ伝わればそれでいいのだ。

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理系・生物的夫妻の異世界スライム討伐 ゴッドさん @shiratamaisgod

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