第13話 Does he hurt his finger and pretend to be strong?






「じゃあ、後ろの空いてる席に座って。」



先生は優しく私にそう言うと



「どうした鷲宮、お前いつもそんコミュ障っぽくないだろ!」


「は、はい、通常通りで、っあっあります。」



昔の兵隊のように応えた鷲宮君は、私(男時代)の元中の同級生なのだが、私の中身が桐生吉継なんて、想いもしないだろう。



「どうした鷲宮、噛みかみだぞ~」



ワハハハ


と私のとなりになることになり少し緊張してる鷲宮に茶々をいれ、教室は和やかな笑い声に包まれた。



そんな笑い声を背に、私は自分の席に向かって机と机の間を歩き出す。間を抜けるごとに私に刺さる視線が少し怖く、とても長く感じた。


そんな道をやっと抜け、私は先程いじられていた鷲宮君の隣に辿り着くと、髪を少し耳にかける仕草をしながら鷲宮君に少し上目遣いで


「よろしくね。」


と言った。

すると鷲宮くんは返事もせず黙り込んでしまった。



あれ?妹に自然な挨拶の仕方を教わったんだけどなぁ。もしかして私を怖がってる?元男ってもうバレちゃったのかな。



彼の顔が真っ赤に染まっていることも知らず。私はこんな事を考えていた。



その後、ホームルームは何事もなく終わると、私の席の周りにはすごい人だかりが出来ていた。大半はクラスの明るい女子だが、陽キャの男子もチラついている。


「ねぇねぇ、どこの国とのハーフ?」


「LINE交換しない?」


「こんな綺麗な金髪初めて見たよ!」


「ねぇ君、俺の女にならねぇ?」



と、初対面で信じられないような事を言っている人もいたが、私はそれらを聞かなかった事にし、女子の質問に答えていく。


「フランスとのハーフです。」


そしてLINEを教えようと思った瞬間、自分のLINEがまだ桐生吉継という名前でネットで拾ってきた猫のトプ画のままだということを思い出し、


「ごめんなさい。まだ来たばかりで携帯電話を持っていなくて、、、LINE?というものは今度でいいですか?」


と、我ながら完璧な演技力で回避した。 生徒たちの間で桐生吉継は不可思議な失踪を遂げているはず(戸籍上では死んだことになっているが)なので、できるだけ話題にならないようにしないと、身バレなんて以ての外だ。


気をつけよう、そう私が気持ちを改めていると、私に群がるクラスメートの合間を縫って一人の少女がひょこりと現れた。


「私!このクラスの学級委員の、望月 雪って言います。もっちーって気軽に呼んでくださいね!これから暫く、マリアさんのサポートと言うかなんと言うか...えっと...とりあえず!マリアさんがこの学校での生活で困らないようにするようにと先生から承っておりまーす。なので今日昼休み、学校の中を案内するのでよろしくお願いします。!」


華奢で小柄でショートカットで可愛く、そしてとてもハイテンションな喋り方な彼女だが、私が俺だった頃からとても優しいひとだった。


そんな彼女が喋り始めればクラスの誰もが私への質問爆撃をやめ、大人しくなったのを見ると、周囲からの信頼が凄いのが改めて分かる。


この学校に入ってから一学期過ごしたので学校案内なんてされなくても大丈夫なのだが、この体では初登校なので断るわけにもいかないだろう。そしてもっちーの少し期待を含んだ視線をこうも真っ向から受けると、断れる男はいないだろう。



「分かりました。では昼休みに望月さんの席にいきますね。」


そう言うと彼女が


「やったー!これから宜しくね!」


と言って満面の笑みで私をみつめると。


周囲からは


「もっちーだけずるいー!」


「もっちーに独り占めさせるなー!」


と女子の間で声が飛び交い、結局私の学校の案内は同じクラスの女子全員で行くことになった。



みんなが好意的に接してくれていてとても嬉しかったが、約20人で学校を練り歩くのもどうなんだろうと思ってしまう私であった。しかし、クラスの女子の輪に混ざるには良い機会なので、このイベントを、大事にしなくては....。

その後、質問責めが2~3分続くと、


「そろそろ授業だよ~!みんな席ついて~。それで鷲宮君、如月さんに教科書見せてあげてね!席くっつけることになるけど、授業中は授業に集中するように。(笑)」


と望月さんが小笑いをおこしながらみんなに呼びかけると、生徒は一斉にそれぞれの席に散っていく。その姿を見て、望月さんも「じゃあ、昼休みにね!」 と私の耳元で囁き、去っていった。


ふぅ、やっと終わったと思って気を落ち着かせていると、横からの視線を感じ、そこには机をいつくっつけようかと今か今かと外国人ハーフ美少女という異生物にビビり散らかしながら話しかけるタイミングを伺っている鷲宮の姿があった。


そんな姿を見て、どこか可愛らしく感じてしまった私は


「ふふっそんなかしこまらなくていいですよ。」


と手を口に当てて横目に笑いかけるという妹に教わったモテ女テクニックを使った後、自分の机を勢い良く鷲宮の机にくっつけた。



ゴツン


ノールックで机をくっつけたので、机と机がぶつかる音が思ったより大きくて、強く押しすぎたかなぁと思ったその瞬間。



「痛ったぁぁぁぁぁあ!!!いや、痛くない痛くない。」



隣の鷲宮がクラス中響き渡る悲痛な叫びをあげた。



なんだと思って直ぐに鷲宮を見ると、左手の小指日本がまるで漫画のように膨れ上がった鷲宮が泣きそうな顔で、強がっていた。













作者です。


1年ほど放置していたカクヨムですが、久々に書きたいと思ってきたため、しばらくもう少し頑張ってみたいと思っています。もう一作品と共に、よろしくお願いします。











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朝起きて登校したら、金髪美少女に転性しました。 牧之原 渡 @nao0727niku

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