第10話 I forgot to take a bath.




「今日は9月2日月曜日です。•••」



階段を降りると、母親と妹がいつも見ている朝のテレビ番組の音が聞こえてきた。



すると、キッチンで朝ごはんを作っていた母親が



「おっ、昨日死んだように寝てたのがやっと起きた。おはよう」



と言ってきた。母親の顔を見て、わたしは昨日の夜運んで貰ったことを思い出す。



「おはよう。昨日の夜、わたしの事運んでくれてありがとう。重くなかった?」



すると母親は、ニヤッと笑って



「そりゃあくそ重かったよ吉ちゃんは、特にココがね。ココが。」



と言いながら自分の豊満な胸を下から両手で弾ませた。



「なんかすいません。」



俺は何故が後ろめたくなって謝る。


「ハイハイ。気にすんなよ」


そんなに重かったなら、尚更妹にも言っておかないと。


「ねぇ、美晴は?」


すると母親は驚いた顔をして


「そんなのもう学校に行ったに決まってるじゃない。吉ちゃんも本当はこの時間家に居ないもの。」


確かに、いつもわたしは7時半に家を出る。そう考えると、今日は起きるのが遅すぎたな。


そんなことを考えていると母親は付け加えるようにわたしの頭に指をさして、


「それと吉ちゃん。その髪の毛、どうにかしないとね!。」


と言った。わたしは急いで髪を確認すると、自慢の金髪が、悪すぎるわたしの寝相によってボサボサになっている。


「とりあえず。お風呂入りな!着替え置いとくから!!」


そう言えば、転性してから1度もお風呂に入っていない。新しい自分の体を隅々まで見ることになるのでなぜか緊張するが、わたしは決意を固めて洗面所に向かう。


「分かった。」


ガチャん


洗面所のドアを閉めた俺は、上に部屋着で着ていたTシャツから順番に脱ぎ始める。1枚、また1枚と脱いでいく度に白くて柔らかな素肌があらわになる。


ここでもう一つ気づいたことだが、この体、頭以外に全く毛が生えていない。転性したばかりだから生えていないだけかもしれないが、毛穴が全く見当たらないので、これから生えることは恐らくないだろう。


そんなこんなで完全に素っ裸になったわたしは浴室に入りシャワーをあび始めた。


シャワーで濡れた髪と湯気が、鏡に映る自分をいっそうきわだたせる。

-水もしたたるいい女-とは、まさにこれのことを指すのだろうと自分で思ってしまう程だ。


そんな姿をみながらシャンプーに手をかけ泡立て始める。お尻につきそうになるほど長いこの金髪を全て洗うのはとても大変そうだ

5分後やっと髪を洗い終えたわたしは、いつも使っていなかったコンディショナーを見つめる。


「今日からはしなくちゃな....」


わたしはコンディショナーを手に取ると、髪の毛につけはじめる。幸いこのコンディショナーはトリートメントの効果もあるタイプなので、トリートメントの手間までは省けた。

た、大変すぎだろ、、、


最後に、ボディーソープをスポンジで泡立てて無毛でもちもちな体を磨いたら泡を流してやっと入浴は終了。


お風呂を出ると母親が少し焦った表情で、ドライヤーを持って待ち構えていた。


「早くしないと安藤先生との約束に遅れちゃうわ、急いで乾かすから来て」


言われるがままわたしは下着姿で母親の座っているソファの前に座り、母親にドライヤーをかけてもらう。

なんか親子みたいでいいなぁ。(親子です)なんてつい感傷に浸ってしまう。




ドライヤーをかけ始めて5分、。やっと髪は乾き始めたようだ。頭がどんどん軽くなっていくのを感じていると母親は、おっと言って


「ブラのホックズレてるよ」


と言いながらさりげなく直してくれた。上手く出来たと思っていたのに。

わたしは何事も確認が必要だと強く感じた。


「ま、こんな感じでいいんじゃん。」


と言う一言で母親のドライヤータイムが終了すると、15分後に家を出ると急かされ、俺はとっさに昨日買った白いワンピースを着ることにした。


母親はその姿を見ると


「やばい。めちゃくちゃかわいい。私が男だったら5度見するわ」


と言って玄関の扉を開いた。

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