第8話 Clothes




「ま、とりあえず、ここでいいわね!」





母親の一言と共に、わたしたちが立ち止まったのは可愛らしくコスパの良さが売りのブランド、地球の音楽と生態学だ。

何故売れているのかわからないくらいナンセンスなブランド名だが、有名ブランドと言うだけあり、店内はそれなりに混みあっていた。



いつも妹が服を選んでる時は店の前で待っていた俺はおろおろしてしまう。

そんな俺を無視して、母親と妹は真剣に洋服を吟味し始めた。洋服のセンスが全くないわたしは洋服を吟味する振りをして風景に溶け込むことにした。




5分後




母親と妹はそれぞれ両手いっぱいに洋服を抱えて俺の前に来た。




「(母)これ着てみて!!も〜うなんでも似合いそうだからいつもより多くなっちゃったわ。」




「(妹)兄さっ。姉さんはなんでも似合いそうだからたくさんになっちゃった。」






おいおいこんなに着るのかよ.....2人が持ってきたのは全部で8点。

全てを試着するのには相当時間がかかりそうだ。しかし2人が自分のために選んでくれたと思うと、へらしてくれなんて言えない。




「分かったわ、試着室の前にいてね」




「ほ~い」




母親はそう言うと、やってきた試着室のハンガーかけに、大量の洋服をかけ




「じゃ、楽しんでね〜」




と言い試着室のカーテンを閉めた。




わたしは少々緊張しながら1番上にある白のワンピースに手をかける。


今着ている母親から借りた服を一通り脱いで畳むと、ワンピースを着てみる。

このワンピースは背中にチャックがあるタイプだが、胸が大きいばかりに、少し胸を強調したような服装になった。


鏡に写った自分の姿を見て、わたしは驚愕する....

この服装、エロ可愛い過ぎないかおい。

別に肌をたくさん見せているわけではないが、豊満な胸と、それとは対象に引き締まったお腹のくびれ、それに雪のように白く綺麗な肌が所々現れている。こんな姿で街を歩いたら、人々の視線はたちまちこちらを向くだろう。


そんなことを考えていると



外から


「吉ちゃん、まだ〜??」


という母親の声が聞こえてきた。

そうか、すっかり忘れていた。母親と妹が外で待っている。


数秒後、わたしはカーテンを開いた











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