第10話 宿屋で働く事になりました

【11】怖い話しはほどほどに


 玲奈が階段を上がって部屋に戻ると、りのと葵は入り口近くのベッドで寝転がっていた。


 玲奈に気づいた二人は、労いの言葉をかける。


「うむ。ご苦労であった」


「アンタは何で偉そうなのよ!玲奈、お疲れ様」


「働くのは明日からで大丈夫だそうですよ。それより私の寝る場所・・」


 服を脱ぎながら、りのと葵にどいてくれとやんわり伝えると、二人は窓側のベッドを指差した。


「玲奈が下に行っている間に葵と話したんだけど、玲奈は一人でゆっくり寝ていいわよ」


「え?何でですか?」


「だって泊まれる事になったのって、玲奈のおかげじゃない」


「うむ。向こうでしっかり寝て、明日も我に奉仕すると良い」


 どうやら下で店主に謝罪している頃、二人は二人で話し合っていてくれたらしい。


「じゃ、じゃあ、お言葉に甘えようかな」


 その事が嬉しくて、ニッコリ微笑みながらお礼を告げる玲奈。そんな玲奈を見ながら、心が痛むりのと葵。


「・・はぁ。何か、罪悪感でいっぱいだわ」


「ならば、りの一人で窓側に寝て参られよ」


「い、嫌よ!大体、葵があんな事を言うから」


 二人はこそこそ話し合う。


 玲奈が下に行っている間に、二人が交わした会話はこうだった。


「ふぁ〜ぁ。じゃぁ、お休み葵」


 りのはそう告げるとポニーテールをほどき、毛布を被って横になった。


「寝てしまうのか。ならば我の子守り歌ゴッドレクイエムで眠るが良い。あぁ。冒険者水瀬りのよ。職業、自称アイドルの水瀬りのよ」


「・・・誰が自称アイドルよ」


 勢い良く上体を起こし、葵を睨みつけるりの。


 葵が口元をおさえながら、肩を震わせている姿が見えた。


(そ、それなら…)


 イラッとしたりのは、少し意地悪をする事にした。


「けど、この宿屋って大丈夫かしら?」


「ん?大丈夫って、隠しカメラとかか?」


「・・それはそれで問題ね。そうじゃなくて、でたりしないわよねってこと」


「ク、ク、ク。この世にお化けなど存在せんわ」


「でもここって異世界よね?ゴーストとか存在しているんじゃないかしら」


 アゴに手をあてながらチラチラと葵を見ると、顔を少し青くしているのが目に入る。あともう少しかなぁっと、りのが続けようとすると、葵が先に喋り始めた。


「・・カッカッカ。わ、我は魔の者。な、なぁ〜に、ならそ奴等と我が契約してくれるわい!それよりも入り口付近で寝て良いのか?」


「・・・どういう意味よ」


「馬鹿め!普通に考えて襲われるのは、入り口に一番近い人間じゃわい。ク、ク、ク。我の生贄を務めさせてしまってすまんの」


 右手で左眼を隠しながら、ニヤリと微笑む葵。


 りのは少し顔を青くしながら、葵に返事を返した。


「ま、まぁ、普通に考えたら、そ、そうなのかも、し、しれないけどさ、ここは異世界な、なんだし、異世界で考えたら、わざわざあの階段を登って来て、わざわざ入り口の鍵を壊してまで襲いにくるかしら?異世界で考えたら、窓からじゃないかしら」


「・・・そ、そう・・なのか?」


 異世界にワザとアクセントをつけ、葵を怖がらせるりのであった。


 二人はお互いを怖がらせようとしていたのだが、どちらも泥沼にハマってしまっていた。


「ちょっ、な、何でこっちに来るのよ」


「た、頼む!向こうに行ってくれ」


「イ・ヤ・よ!!魔の者なんだったら、アッチで契約して来なさいよ」


 葵の頭を両手で押しながら、葵の侵入を阻止するりの。


「ば、馬鹿を申せ!お化けなんかと契約する馬鹿がどこにおる」


「アンタよ!アンタ!」


 葵の正論に対し、りのは更に力強く押し返した。


「・・チッ。仕方がない」


 舌打ちが聞こえた気がしたが、諦めてくれたなら許してやろうと、りのは毛布に手を伸ばしたが、葵の次の言葉にピタリと動きが止まる。


「仕方がないから、玲奈と一緒に寝るとしよう。りのは一人で入り口ベッドで寝て良いぞ」


「な、な、な、何でそうなるのよ」


「何でって・・何じゃ?ダメなのか?」


 激しく動揺するりのを見て、ニヤリと口元を緩める葵。


「ダ、ダメって言うか・・玲奈が怪しむんじゃないかしら」


「ク、ク、ク。一人で寝るのが怖いと、素直に言えばいいものを」


「あ、葵はどうなのよ」


だから怖いな」


 ワザと窓際を強調する葵。開き直っているように見えるのは決して気のせいではない。


 そして、窓際が危ないと言ったのはりの自身である。ここでもし、玲奈と窓際で寝ると言ったとしても、玲奈を危険な目には合わせられないと言われる可能性がある。


 ならばと、りのは考える。


「な、なら、玲奈には一人で寝てもらいましょうよ。私はこっちじゃないと寝られないし、葵も窓際は嫌みたいだから、仕方なく一緒に寝てあげるわ!仕方なくね」


 これが、玲奈がいない間に、二人で話していた事である。


 勿論、玲奈のおかげだとは思っていたが、最後までその話題は出てこなかった。


 そんな事があったとはつゆ知らず、玲奈は二人に提案する。


「せっかく星が見えるみたいですし、二人で窓際のベッドを使ったらどうですか?」


 一人で寝させてくれるという感謝の気持ちであったが、二人は声を揃えて玲奈に返事をする。


『ぜ〜ったい、イヤ(じゃ)』と。


 もの凄い表情とともにそう言われてしまっては、玲奈は「ハイ」としか言えないのであった。


 ーーーーーーーーーーー


【12】宿屋で働く事になりました


 それぞれがベッドに横になり、ようやく長い一日が終わりを告げようとしていた。


 りのにとって今日は、自身の夢であるゲームのアフレコをするはずだった。


 その為、いつも以上に疲れている。


 玲奈にとって今日は、自身の趣味であるコスプレイベントに参加するはずだった。


 ただのイベントではなく、年に一回しかない神イベントだった為、いつも以上に疲れている。


 葵にとって今日は、忍法口寄せの術を試す大事な日であった。


 わざわざ川で、気持ち悪いカエルを捕まえていた為、いつも以上に疲れている。


 そして、異世界というわけの分からない現実を前にして、三人とも相当疲れていた。


 三人は下着姿のままベッドに入って寝転がると、すぐさま眠りにつこうとしたのだが・・。


「ダ、ダメ!やっぱり無理!!」


 ガバッと上体を起こし、りのは二人に提案?疑問?愚痴をぶつけた。


「お風呂に入らないと寝られないわ!」


 朝にシャワーを浴びたとはいえ、やはり1日の終わりにお風呂は欠かせない。


 殿様との戦闘もあった。


 酒場で嫌な汗もかいた。


 身体が臭いとか、ベタべタするなどといった事はないのだが、1日の習慣となっているお風呂だけはハズせない。


「全くその通りですね」


「うむ」


 玲奈と葵は、りのの愚痴に賛同する。


「ホテルにシャワーがないとかあり得ないわよ」


「いやいや、ここは異世界。あり得ますよ」


 三人の中でなら、アイドルとして仕事をするりのが、一番多くホテルを利用している。シャワーが完備されていないホテルなど聞いた事がない。


 りのが辺りを見渡しながらそう言うと、玲奈が右手を左右に振りながら、りのに注意する。


 そもそもホテルではなくここは宿屋である。


「うむ。ドラゴンファンタジーでもシャワーはついていなかったな・・しいて言うならば、クロック◯ワーにはついておったわ」


「それって死ぬフラグがバッキバキにたってるじゃん!もぉ!もしもここにシャワーがあっても使えないじゃない!」


 某ホラーゲームで例える葵を、睨みつけながらりのは注意する。


 例え話しが通じたのが嬉しかったのか、頬を赤くしながら葵はりの達に提案をする。


「少し外に出てみぬか?温泉マークを探せばあるもやしれぬぞ」


「・・・う、うーん」


「だ、駄目ですよ!?今日は寝るという事で仕事を明日にしてもらったんですよ?」


 両腕を組んで悩むりの。


 悩んでいるのは玲奈の言うように、宿屋の主人に申し訳がないからである。


 しかし、このままでは寝られない。


「ク、ク、ク。我に任せてもらおうか」


「何かいい案があるの?」


 シュワッとベッドの上に立つ葵を見ながら、りのはたずねた。


「きちんと理由を話せば、きっと分かってくれるに違いないのだ」


 勝ったなと笑う葵を見ながら、りのと玲奈はこっそりため息を吐くのであった。


 ーーーーーーーー


 三人は服を再び着てから、階段を降りて行く。


 メイド服にするか悩んだが、メイド服は主人の物であり、無くしたり破いたりしてしまっては大変だという理由から、それぞれの私服を着ている。


 最初は否定的だった玲奈も、お風呂という魅力には逆らえず、最終的には賛成に変わっていた。


 こそこそ歩く二人を背に従え、葵は堂々と階段を降りて行く。


「ん?何じゃ?寝られんかったのか?」


 三人に気づいた主人は、当然何かあったのかと質問してきた。りのと玲奈が葵に視線を向けると、葵はいつものようにポーズをとりながら、主人の質問に答えた。


「よくぞ気付かれた!実はここにいる玲奈から、ご主人様にお願い事があるらしいのです」


『・・・・へ?』


 葵はそう言うと、玲奈の背後に回り込み、ドンっと背中を押す。


「ちょっ、ちょっと!葵が説得するんじゃないの」


 涙目になりながらチラチラこちらを見る玲奈があまりにも気の毒になり、りのが耳元で注意する。


「愚かな愚民共よ。我がやるとは一言も言ってはおらぬ」


 ク、ク、ク。と、笑う葵を見て、コイツの職業は本当に正義のヒーローなのかを疑うりの。


「ん?何じゃ?」


「あ、あのですね!?実は・・・」


 仕方がないので、玲奈が主人にお風呂の事を伝えると、主人は笑いながら机の引き出しを開けた。


「これをやるから三人で行って来なさい。場所はここを出て、左に真っ直ぐじゃ」


「あ、ありがとうございます!!明日から頑張ります!頑張ります!」


「ありがとうございます」


「感謝するぞ!イテッ。あ、ありがとうございます」


「ふぉ、ふぉ、ふぉ。楽しんできなさい」


 頭をさする葵に、右手をさするりの。


 ニッコリ微笑む玲奈を見ながら、宿屋の主人は楽しそうに笑った。


 ーーーーーーーー


 主人からもらったチケットを手にし、三人は夜の街を歩いていた。


 見た事もない食べ物や果物、飲み物を目にしながら、三人はキョロキョロしながらも、目的地を目指して行く。


「な、何じゃアレは!?殿様帰らない・・お、おい見ろ!見覚えがある絵じゃぞ」


 葵が指さす方に顔を向けると、おでん屋らしき屋台があり、看板には殿様帰るの絵が描かれていた。


「きっと屋台ね。ああいった店が一番美味いってママが言ってたわ」


「ふふふ。りのはママって呼んでるんですね」


「うっ。べ、別にいいでしょ」


 頬を赤くするりのを見てから、葵に質問する玲奈。


「葵は何て呼んでるんですか?」


「ゴッドマーミー」


「・・・ゴッドファーザーみたいな感じ?」


「如何にも!その間に産まれたのが、ユーシスティス!」


「ママって呼んでる事を恥ずかしがった私の気持ちを返してほしいわね」


「玲奈は何と呼んでるんだ?」


「私ですか?普通にレレちゃんって呼んでます」


「仲が良いのねって、見て!アレじゃない?」


 ガールズトークで盛り上がっていると、いつのまにか温泉に着いていたようだ。


 でかでかと温泉のマーク。


 温泉マークの下に描かれた猿の絵。


「何でこのお猿さんは両手で目を塞いでいるのでしょうか?」


「決まっておろう。太陽拳じゃ」


「それならオデコに両手をつけるでしょ。きっと見ざるを表しているんじゃないかしら?」


「それならば、言わざるも表した方が良いのではないか?」


「あ〜あの娘、胸が無かったって、何ですって!?」


 チラチラとりのの胸を見ながら、からかう葵に対し、ツッコむりの。


 そんな二人のやりとりを、聞かざるのポーズで無視する玲奈。


「ほら!行きますよ」


 三人はゆっくりと温泉に入るのであった。


 ーーーーーーーー


 その後、宿屋に戻った三人は、主人に再びお礼を伝え、部屋でゆっくり休もうと階段を登って部屋に着くのだが、部屋には鍵がかかっていた。


「あれ?ねぇ玲奈、鍵は?」


「え?かけてないですよ?取られる物もありませんし」


「最後に出たのは私だったっけ・・おっかしぃなぁ〜」


 部屋の前で、鍵がないかを確認していると、扉の下の隙間からアリアが現れた。


「あ、アリア!?鍵をかけたのは貴方ね!ねぇ、開けてくれない?」


「・・・仲間ハズレにした」


「え?」


「ワシを仲間ハズレにしたと言っておるのじゃ」


 三人の目線の高さまで飛んできたアリアは、涙目になりながら頬を膨らませている。


 どうやら、一人だけ温泉に入れなかった事を怒っているようだ。


 顔を赤くしているアリアを見て、りのはマズイと考えた。


「だ、だってアリア寝てたじゃない」


「ね、寝てなどおらぬわ!」


「温泉に行かない?って誘ったわよね?ね?」


 玲奈と葵に向けて、話しを合わせてとウインクする。


「え、えぇ。誘いました」「如何にも」


 当然、誘ってなどいないのだが、寝ていたアリアにはそれが本当なのかが分からない。


「そ、そうじゃったかの・・し、しかしじゃ」


 お風呂には入りたい。


 しかし、自分が断ったとなればそんな事は言えない。アリアが一人で悩んでいると、りのがニッコリ微笑みながら声をかける。


「それなら、アリアにも温泉気分を味あわせてあげる!玲奈、ちょっと・・・ね?もらってきてくれる?」


「湯のみにお湯を入れて・・あ!わ、分かりました!」


 何かに気づいたのか、ビュッ、シュバッと、敬礼してからすぐさま湯のみをもらいに行く玲奈。


 そんな玲奈を見送ってから、りのはアリアに鍵を開けさせるのであった。


 ーーーーーーーー


 ようやく部屋に入ったりの達は、アリアを見ながらとても幸せそうな顔をしていた。


「よ、妖精って良いですね」


「くぅーー!!我の使い魔になってほしいわ」


「どぉ?アリア。湯加減は?」


「め、目玉?まぁ良い。最高なんじゃが、そんなにジロジロ見られると、流石に照れてしまうわい」


 玲奈が貰ってきた湯のみに浸かるアリアを、三人は幸せそうに見ていた。


 アリアが背中を向ければ、可愛らしい羽が目に入る。


 アリアの背中の羽を見ていると、とんぼなど虫けらのようだと葵が呟いたが、とんぼ何かと比べるのは失礼だろうと二人は思った。


「しかし、こうして見るとやはり良いですね」


「うむ。小さくなったら毎日が幸せじゃろうな」


「そういえば昔のドラマで何とか君の恋人っていうのがあったわね」


「どんな話しなんじゃ?」


「え〜っと、確か・・」


 りのはマネージャーから聞いた話しなんだけどと、前置きをおいてから話し始めた。


 ある理由で身体が小さくなった女子高生。


 名探偵かと言う質問に、名探偵よりも小さいアリアぐらいのサイズよ!っと答える。


 小さくなってしまった女子高生は、当然、助けを求めるのだが、女子高生は当時付き合っていた彼氏に助けを求めるのだ。


 何で親じゃないんですか?という質問に、知らないと答える。


 彼氏の部屋で始まる奇妙な生活。


 ジョジョなわけないでしょ!っと葵を一喝する。


 当然、小さい彼女の為に彼氏は頑張るわけだ。


 何をって、そりゃぁ服とか食事とかよ。


「彼氏さんはコスプレイヤーの素質をお持ちなのですね?」


「ま、まぁ、ある意味そうかもしれないわね。おもちゃ屋で買ってきた人形の服を脱がせて、彼女に着させてたんだし」


 勿論、仕方がなくである。


 学校に着いて行くと言う事で彼女は、彼氏の胸ポケットに隠れて学校に通う事になる。


「む、胸ポケットに隠れていては、心臓を捧げられぬではないか!!」


「し、知らないし、顔が近いし、誰に捧げるのよ!!」


 団長だぁぁ!と、興奮する葵を押しのけて、りのは呟やいた。


「そんなに面白いのなら、アニメ化すれば良いのにね」


「確かにそうですね。踊るシリーズとかとか、凄い人気ですから、アニメ化されてもおかしくないですよね」


「うむ。考えてみたら逆はあっても逆はないな」


 やはり女子と言うべきか、共通の趣味の持ち主同士だからと言うべきか、ガールズトークはとまらなかった。


 彼女達は、漫画からアニメ化、アニメから漫画化、ラノベからアニメ化、または漫画化などはあるが、ドラマからアニメ化や漫画化になった作品はあったか?という事を話し合っていた。


はどうでしょう?」


「おぉ!!確かにあの作品はアニメや漫画、ドラマ化されておる」


「いえ。確か漫画が、アニメやドラマ化された作品のはずよ」


「ドラマからアニメや漫画化された作品はないのかな?」


 三人は「うーん」と考えるが、思いつかなかった。こういう時の為の携帯なのだが、三人は携帯を持っていない。


「ふぁー。オイ!ワシはもう寝るぞ」


 可愛らしいあくびをし、アリアは湯のみ(お風呂)からあがった。


「そ、そうですね。とりあえず寝ましょう」


「そうね。じゃぁおやすみなさい」


「うむ。良く眠ると良い」


 それぞれがベッドに入って目を閉じる。


 こうして、長い長い一日が、ようやく終わりを迎えるのであった。


 ーーーーーーーーーー


 翌朝。


「おはようございます」


「・・・おはよう」


「ク、ク、ク。りのは眠そうじゃな」


「誰の所為よ!誰の!?」


 葵の寝相が酷く、りのは夜中に何回か目を覚ましていた。おかげで寝不足である。


「おーい。朝ごはんは食べぬかぁー」


「あ、いただきまーす!良かった。朝ごはんがもらえるみたいですよ」


「何ていい人なのかしら。今日の仕事、いっぱい頑張って働きましょう」


「うむ。頑張るがよい」


「アンタも頑張るのよ!」


 他人事のように言う葵を軽く注意しながら、働く為にメイド服に着替える。着替え終わると下に降りて朝食を食べる三人。


「ほっほっほ。朝ご飯を食べて、しっかり頑張るがよい」


 見た事がない朝ご飯を前にして、三人は固まる。


「お、おい。これは食べれるのか?」


「さ、流石に、食べれない物は出さないでしょ」


「し、失礼ですよ二人共!お爺さん。これは何ていう食べ物なのですか?」


 お皿の上にドンっと置いてある揚げ物に、指を向けながら、玲奈は宿屋の主人に声をかけた。


「ん?それはギメラじゃ」


「ギ、ギメラじゃと!?」


「ア、アリア!?駄目じゃない」


 ギメラという単語に我慢出来なくなったのか、アリアがりのの胸ポケットから飛び出してきた。


 アリアは三人を見渡すと、プルプル震えながらギメラについて話しだした。


「ギメラは超高級食材じゃぞ。中々お目にかかれん食材で、一羽丸ごととなると、10万はくだらん代物じゃ」


「ブーーー。ちょっ、ちょっと待って。食べちゃったんですけど」


「ほっほ、ほ。なぁに、お前さん達が頑張って働いてくれるなら安い物じゃわい」


 おそらくは羽であろう部分をかじっていたりのは、思いっきりギメラを吹き出してしまう。


 頑張らないと非常にマズイのでは?いや、頑張らないとダメだろう。と、三人は考える。


 こうしてりの達は、宿屋に泊めていただいたお礼をすべく、宿屋で働く事となった。

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水瀬りのはアイドルであって異世界を救う者ではない 伊達 虎浩 @hiroto-

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