ああ、イライラする!

「どうして、お前たちは素直に物事を考えることができんのだ! すぱっと本音をぶつければ、それで済むだろう。馬鹿者と」
 と思わせることこそ、ラブコメの王道。イライラは、それだけ本編にのめり込んでいることの証しであり、褒め言葉。

 ジャスミン・ハルは、王太子、ジャック・フィン=ヴァルトンの妃となるべく、ヴァルト王国に招かれた。気合も十分、想いも十分なのに、なぜか物事はかみ合わず、落ち込む日々。実のところ、ジャックもそれは同じで……。

 互いのことを思い合う恋人たちの(?)の描写が、実に鮮やかで、読み手を引きつける。情景描写も巧みで、それが恋人たちの置かれた状況を引き立てる。

 レビューを書いている時点では、物語は序盤であるが、恋人たちの背後に渦巻く暗い影も見えはじめていて、この先の展開が楽しみ。

 二人の揺れ動く想いにイライラさせられながら、物語を楽しんでいきたい。

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