天真爛漫な少女が織りなす和風ファンタジー!

 寧々がかわいい。天真爛漫な言動は気持ちよいぐらいで、読んでいて、心が洗われると思ったところもあった。実のところ、本編は重い話で、陰惨な雰囲気も濃厚に漂わせているのであるが、寧々のアクションが清涼剤となって、物語に安心感を与えてくれる。思わず笑いながら、先を読み進めたことも多々あった。

 無論、寧々の単なる賑やかしではなく、そのふるまいこそが周りの人間に影響を与えて、ついには後半で物語を動かす大きな動機となる。それは、蕾だった花がゆっくり開いていく様を見ているようで、読み手に大きな喜びを与える。ここまで来たかという感じで、楽しかった。

 歴史の知識はなくても読めるが、知っていると、なんとなくモデルになっている人物が想像できて、それもおもしろい。ぜひ一読を。

 最後に、この物語では、ある果物がシンボリックな存在として描かれる。本編には深くかかわらないのであるが、あまりの表現に、思わず声が出てしまった。すごかった。ただ、あのシーンは男性と女性で感じ方が違うように思える。果たして、どうなのだろうか。

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