§2

本当のプロローグ(まるまる差し替え準備中)

「ねえ母様。どうしてお誕生日なのにお席が空いたままなの」


 まだ幼い自分が城に招かれ、父や母と煌びやかな宴を楽しんでいたが、主役であるはずのその人物はついに姿を現さなかった。母は小さく笑うばかりで会場では何も答えなかった。


 父と母が会場で会う人々と歓談している間に、どこか同じ年頃のこどもがいないか一人で城内をさまよった。庭を見下ろせるバルコニーに出た時、別のバルコニーに佇むこどもの姿を見つけた。


「こんにちは」


 声をかけたがちらりとこちらを見ただけで返事はなかった。


「お誕生会のパーティにはでないのですか」


 一方的に話しかけたが、もう二度とこちらを振り返ることもないまま姿を消した。


 あとで聞いた話ではこの時のこどもこそがパーティの主役のその人のようだった。毎年開かれる誕生パーティに、ただの一度も顔を出したことがない。


 三年後、同じく誕生を祝う夜に。大陸は滅びの呪いを受けることとなる。


 誰も気付けなかった。誰も止めれなかった。はたしてそうだろうか。


 ただの一瞬、目が合った。視線を交わした。こどもごころに、何かが普通ではないと感じていた。



「滅べ滅べ滅べ滅べ! アトラなど、この命と共に、消えてなくなれ! お前ら、全員、大、嫌い、だ!!」


 こどもの戯言が、強大な呪術として完成してしまうなど。


 誰も予言できなかった。


 知っていたとして。それを止めることが一体誰に出来ただろうか。



 呪われた大陸で、あと何年生き延び、救えるだろう。


 誕生日を一緒に祝える日が来るのなら。悪魔にだって魂を売り渡してかまわない。








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