第28話 プロというものは

 専門知識のない、無知無能なわたくしたちでも、助けてくれるのだろうか?

 そのときの友人に聞いたところ、プロとは、という話になった。


 正義のために戦うプロなのだ。

 いかに依頼人が無知であろうと、パワハラと呼ばわれて反論できない、裁判だ警察沙汰だと言われてもどうにもできない母であろうとも。

 それだからこそ、助けてくれるはずだと。


 相手がこちらの無知に付け込もうとしているならば、プロを頼めばいい。

 わたくしはそう、確信する。

 きっと、きっとこのピンチを救ってくれると! だから、泣き寝入りする必要はないのだと。



 前置きが長くなりました。

 一週間前、また例の施工屋からファックスで「一年たちましたが45万円未払いです」と言われたので、母はこんどこそ司法の力を頼むことにしたようです。

 ぎくしゃくしながら、横浜ランドマーク法律事務所38Fにむかいました。


 12:30過ぎごろ、一回家に電話がありました。

 正確にはわたくしがトイレに行っているときに、応答願う旨、連絡があり、二度目はわたくしが出ました。

 なんと、法律事務所の名前を書いたメモを、普段使いにしているリュックに忘れたので教えてくれという。



 母、よっぽど動揺している。

 一年たって、忘れたころにやってきた施工屋。

 ああ、友達の言っていた通り。


「ほとぼりが冷めたころ、またゆすりたかりに来るだろう」

 それは明確な予言でありました。

 しかし、ありそうなことと、母にはくぎをさしておきました。


 母は内緒で法律事務所へ向くつもりのようでした。

 すかさず、「あの人ね」と問い詰めると、力なく認めました。

 こんどこそ、けりをつけようよ。



 母――。

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裁判日記 水木レナ @rena-rena

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