伯爵家嫡男の華麗なる日常　～実際はそうでもない～

　西洋文化が入り混じるモダンな時代、明治。文明開化が目覚ましいこのご時世に、繁栄の一途を辿る一族があった。

　その名も、御先伯爵家。

　一族総本家の嫡男である幸人は、容姿端麗、成績優秀。武術にも秀で、性格も至って穏やかと、文句の付けようがない程の人格者である。そこにいるだけで注目を集め、老若男女から尊敬や憧憬の念を常に向けられていた。


　しかし。


　実際の幸人は、周りが思う程凄い人間ではない。


　ただ、総本家の嫡男が受け継ぐ特殊な――ある意味呪いめいた体質のお陰で、勘違いされているだけなのだ。



　一見すると華麗な、けれど当人としては悩ましい日々を、幸人は先祖の教えに従いつつ、今日もどうにかやり過ごしていく。