第45話 エピローグ
ここはどこだ。最初に思ったことだ。半透明のフラップから差し込む、薄暗い光は、足元のキラキラした石が放つ光にかき消され、外はほとんど見えない。
柔らかい。
自分の膝の間には、柔らかく小さなものがあった。
美味そう。自分の爪ならば、その柔らかな肉は、やすやすと引き裂けるだろう。だが、そうはしない。してはいけない。それに、邪魔なものがある。両手には、大きな枷が鎖で繋がれていた。さっきまで音を立てていなかった柔らかいものは、今ではすぅすぅと、静かな呼吸をしている。その柔らかなものを膝からそっと下ろすと、フラップに手をかける。半透明のそれは、あまりにあっさりと開いた。少しカビ臭い。草。雨水。そんな臭いが鼻を刺激する。振り返ると、青い服を着た、子供がいる。他にいくつかある同型のカプセルは既に開き、誰もいない。
再び子供を見る。湧き上がる気持ちが、自分にはわからない。もやもやと、だが決して不快ではないその気持ちを抱いたまま、壁に開いた穴から外に出る。
そこは、草木生い茂る平原だった。
なにをしよう。
まずは、腹ごしらえだ。それから、この邪魔な枷をなんとかして壊そう。こんなものがあったら獲物が捕れない。それから…そうだ、さっきの子供、時々見に来よう。そのうち目がさめるかもしれない。そしたら…
空は青く、果てなく広い。アムールトラは、歩き始め。この光溢れる世界に、強く、強く吼えた。
愛の獣 油絵オヤジ @aburaeoyaji
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