人魚の館



八月に入り人魚姫の館に行く為、私は集合時間に荷物を持ち正面玄関に、

いくつかの馬車が並びペガサスの白い馬が餌のにんじんを口にしている。


私は三と書かれた馬車の中に入ると座席があり、

みゅうなさん、みちるさん、かのんさんの居る

一番後ろの座席に座った。

しばらくすると馬車が動き始め馬車は空中を舞い、

雲の上に。


「もうこんなに高く飛んでるなんて、

飛行機に乗ってるみたい」


みゅうなさんは窓の外を眺めテンションが上がって

嬉しそう。

今日のみゅうなさんは、始めに会った時みたいに感じた。

ニーナや他の聖霊がパッと消え空に円を描いて舞を踊る。


「あれが毎年恒例の見物みたいなの、

こんな近くで見れて嬉しい」


そういえば、みゅうなさんは去年入学したみたいと噂で聞いた。

去年も学園に居たと言う事は彼が出来ずに卒業出来なかったからで、私はお試し入学だから関係無いけど。


空の上なので真下には白い綿飴の様なふわふわした風景。

窓際の一番隅に、みゅうなさん、みちるさん、かのんさん、私。


窓際だけどこっちからでも舞は見えた。

それくらい沢山の聖霊が空に舞い円を描いて居たから、

この旅行に参加して居る生徒が多い理由の一つかも。

虹色の様な泡に馬車が包まれると急降下し海の中にへと移動した。

海底の中をどんどん進む。


「もう海底に移動したです。お魚さん可愛いですぅ」


かのんさんも窓の外を眺め嬉しそう、

その頃の海底では学園の生徒を迎えるべく準備に追われていた。


でもこの後大変な事件が起きる事など予想だにしないまま。

海底に行くにつれて魚は少なくなり薄暗く、少し耳が遠くなる。

海面の方は海藻や色とりどりの魚の群れも泳いでいたけど。

みゅうなさんは耳に指を入れて、耳の変化に対応して居る。


「私少し眠くなって来ました昨日少ししか眠れなくて」


かのんさんはうとうとして、目を閉じている。聖霊達はまだ必死に馬車を誘導。


「はいこれでも食べて元気出してくださぁーいかのんさん、人魚のお菓子

去年行った時にお土産で頂いた物ですが良かったらどうぞ」


みちるさんの突然のプレゼントに目を覚まし、飴を差し出した手のひらに乗せられ。

みゅうなさんも、私も飴を貰った。飴は味が次々に変わり不思議な感じ

バナナやいちご、メロン。果物の味を何層にも重ね合わせて楽しめた。


「とてもおいしいです。私も人魚の館でお土産に買いたいです。

でもお金使えるですか?」


「それなら大丈夫だよ、向こうでお土産として貰えるから、

売店でも売ってるけどこっちのお金と同じだから、

私去年も参加して、詳しいから何でも聞いて、

噂を聞くとイベントは毎年かわるから

私は、貰ったお菓子全部食べたからあげれないの

ごめんねっ、せめて今年は彼氏を作って卒業したいな」


湧麻君は入院中で、私は申し訳ない気持ちに怪我をして居なければ、みんなと参加出来て居たはずなんだから。

海底の外を見ると珊瑚のピンク色の貝殻が見え

白い神殿が見えた。

大きな門をくぐると扉が開き中に入る。


「あれが人魚姫の居る神殿ですか?とても素敵ですぅ」


みゅうなさんが目をときめさせる気持ち私も同じで、

食い入るように外を見て楽しんだ。

馬車が地面に降りると生徒が馬車から降りて、

箱の中から何かを引いていた。


「あれは部屋を決める抽選みたい、

去年と同じならだけどね」


私も箱の中から紙を引き見ると二の一と書かれて居た。

みゅうなさんは二の二の文字を見せてくれて、

隣の部屋だとわかる。

中からハーブの演奏が聞こえている。

男性の馬車も到着し同じように箱の中から紙を引いている。


みちるさんとかのんさんは部屋と階も離れ残念。

一階の大広間で食事が用意され人魚姫の挨拶迄少し時間があり、部屋迄一緒に行こうと誘われたけど私はぶらつきたくて

大広間でみんなで会う約束をし一人で神殿のロビーに向かう。

人魚姫の館は何本もの白い柱に囲まれ、場所により海底が見える場所も、

ここが海底だとわかるのはガラス張りの外を見渡せる場所だけ。正面に

大きな階段やエレベーターもあり、右側にカウンターの受付。

部屋もいくつか見え生徒は部屋に荷物を置きに行ったのか、見当たらない。

私は奥の方に進み、お手洗いを探した。


どんどん奥に進むとソファーが見え、

奥の方から女性が近づいて来たので、思わず近くの柱の陰に隠れた。

ピンク色の髪の毛や腕の装飾、首に珊瑚のアクセサリーを身につけ、男性に近寄る。

宙に浮いていて、見た目は人魚の女性。美しい女性を見たら男性はいちころかもと想像。


「来て下さったのですねお待ちして居ましたよそれはもう長い間」


嬉しそうな笑顔を向ける人魚、男性の腰に手を回し抱きつく人魚。

まるでカップルみたいに思えた。私はその場を離れようとした時、

聞き覚えのある声がしもう一度人魚と男性の方を見直す。

男性は抱きしめて来た手を強引に引き離し。


「申し訳ありませんが僕はあなたと一緒にはなれません、

気持ちにお答えも会いに来たのはその事を伝える為です。すみません」


「おっお待ち下さい!私はずっと待って居ましたそれにはお答え出来ないと言うのですか?


酷すぎます!そこ迄して避けると言うのであればこちらにも考えがありますよ?」


「人間である僕とあなたでは釣り合えませんし、あなたも

わかって居ると思います。なぜ僕では駄目なのかも人魚が海底だからそれだけでは、無いと言う事も。

魂を司る(つかさど)王子であるとは言え人間であるお前では釣り合わないまぁ今に

嫌でもお前は私を受け入れる事になると思うがなぁ」


人魚は薄気味悪い笑みを浮かべ置くの部屋に入って行った。

男性は急に振り向いたので、隠れる事が出来ず、目と目が合ってしまった。

はっとこちらに気づくと血相を変えこっちに走ってきた。

眼鏡を外し、前髪を下ろし一瞬佑弥君を助けてくれた、子連れの人にも

見えたけど、話し方や性格的に違うと直ぐにわかった。

私の右手の手首を掴むと奥の柱の方に移動し。


「すみません突然、何処まで聞かれて居たかわかりませんが、出来れば聞かれたくありませんでした」


涼君は少し顔を背け、掴んで居た右手の手首から手を離す。


「さっき話して居た事を誰かには話さないで頂けますか?」


もの凄く深刻な顔王子って言葉が頭の中で浮かび。


「何か事情があるの?人魚の素敵な人と一緒になる約束をして居たのになぜ

学園に?それに魂を司る王子ってんっつ」


涼君に口元を右手で覆われ喋れない。


「あの方は、この神殿の姫君なんです。あの方と一緒になる事を父が望み

海底に援助したり、進行を深めたのですが、いろいろ事情があり出来なく

僕は嫌で逃げて居たのですが、王子である身分を隠して居たのも、でも

あの方と一緒になる気持ちはありません、只生徒の方が心配で着いて来ただけなんですが」


涼君の隠し事は、とても大きな事でとてもびっくりした。詳しくは話して貰えなかったけど。

涼君は眼鏡を掛けその場から居なくなる。


私は二階の部屋に荷物を置き、大広間の会場に向かった。

同じ部屋の男性は部屋に居なかったけど、後で会えるかも知れないと

只、佑弥君と同じ部屋だといいなと心の中で思ってしまう。

大広間の一階の中に入ると壇上にさっき涼君と一緒にいた人魚姫が学園の生徒に挨拶をする姿が。


「皆さん今日から二泊三日どうぞごゆっくりお楽しみ下さい料理や飲み物

お好きな物をごゆっくり味わい、彼と素敵な時間をお過ごしください」


軽い挨拶が終わり、直ぐに居なくなる。涼君の姿は見当たらず。ひそひそ噂話が聞こえた。


「お飲み物をどうぞ!」


人魚のお姉さんはお盆にジュースを乗せ、宙を舞う。私は飲み物を受け取り。


「地上の飲み物迄用意して貰えるんですか?」


「地上から奉仕を受け王様から援助されとても親切なお方なんですよ?


ですが結婚される方は、人魚姫と結婚を拒否されて居るとかで、とても

悲しんでおられます。ですが相手をなぜ変えられてしまわれたのか、


お二人は両思いで結婚の約束をされていたのに、残念でなりません」


人魚は、ジュース配りに戻りもっと詳しく知りたかったけど、みんなの所に

向かった。テーブルに並べられた豪快な料理の数々。


でもなぜか魚の料理だけは並んで居ない。海底だからなのか疑問も。

サンドウイッチにすき焼き、丼物やピザ、お味噌汁、お好み焼き

たこ焼き、オムレツに、ピラフ、チャーハン、焼きそば。

他にもデザートやお酒、ワイン。


「菜月さんこっちですー」


ミチルさんが私に気づき招いて教えてくれたのでみんなの居る場所に向かった。

「菜月さんあのぉーこのお料理おいしいですよ?」


かのんさんがお皿によそい私にくれたので、私も食べた口の中で溶けとてもおいしいお好み焼き。


「おいしい!他の料理も食べようかなぁー」


お箸とお皿を持ちバイキングの料理を楽しんだ。あれからかなりの時間が

経っても、みゅうなさん、涼君、春紀君、佑弥君の姿を見て居ない。


「菜月さぁーん!」


少し遠くの方から声がし、振り向くとお皿の上に

山盛りのスイーツ両手に走る、


春紀君の姿を確認。盛り過ぎで下に食べ物が落ちてしまう気持ちにも。

私は春紀君の所に行くと、いつもの様に茶色のグラサンと黒い帽子をかぶって居るので

直ぐにわかるけど、何か慌てているのが気になる。


「菜月ちゃん、ねぇ!佑弥知らない?馬車降りてから見かけて無くて、

僕荷物を部屋に運ぶって行ってから、

会ってなくて前もって学園にお願いして同じ部屋にして貰ったけど

全然見かけないんだ、部屋でしばらく待ってたけど、

聖霊に聞いてもわからないみたいで」


春紀君は聖霊を見ているが、春紀君の聖霊はわからない顔を浮かべている。

友松さんが春紀君の隣に来ると。


「春紀お話の途中で悪いのですが明後日の事で話しがあるから一緒に来て頂けますか?」


春紀君は少しかすれた声で、目から涙を流しているとわかるくらい涙で顔が濡れている。


「わかった私も探してみるから」


「あはっありがとう僕も後で一緒に探すから」


友松さんと目が合い、友松さんが少し頭を下げ私に微笑み、

春紀君は友松さんとその場を離れた。


私は佑弥君を探しに大広間から出て、辺りを探した。


「お姉さんもしかしてお兄さん探してる?コン?お兄さん探すコンならこっちだよコン!」

狐の姿をした聖霊が、まるで着いてきてと言っている。

お兄さんが誰かわからないけど、取りあえず着いて行く。

しばらく歩くと。


ドンッ

という音がして、狐の姿を見失う。


「狐さん?何処?」


呼んでも姿は見えない、私は音がした方に足を進めて居ると、

テーブルの近くに誰かが倒れて居るのを発見、もしかしたら佑弥君?

そう思い近づくと、前に佑弥君を医務室に連れて行ってくれた男性の姿が仰向けに倒れていて意識が無い。


「大丈夫ですか?」


私が声を抱えても返事が返って来ない。顔に擦り傷が出来腕にも

僅かに出血して居た、かりんちゃんという小さな子供の姿は何処にも無く。


「なっ菜月さん?」


後ろから声がし振り向くと、狐の聖霊と一緒に居る涼君。

「はっ離れて下さい!その人と一緒にいては危険です」


涼君は私の右手を掴み、男性から引き離そうとしてきた。

「待って、怪我をして居る人をほったらかしになんて出来ないよ

そっそれにどうして、危険って決めつけるの?

いつも助けてくれる恩人さんで、涼君も同じ部屋の人でお世話になって」


「菜月さん、あなたには関わって欲しく無いんです家の・・・・・・」


涼君は、何かを言いかけた時。


「っ」


涼君に似た男性が意識を取り戻し目を覚ます。涼君は、はっとなり

私の右手を離し、走って行ってしまい居なくなる。

狐も涼君を追いかけ居なくなり、私は男性の方を見た。

涼君を問いただしたい気持ちが出たが、まだ佑弥君の事を探す事をして

居なかった事と、目の前で倒れている人をほおっておけないと思い、

男性の方を見る。私に顔を合わせたく無いのかそっぽを向き、

少し腕やお腹を押さえて無言。


「たった立てますか?」


「くっ」


身体に痛みがあり、動けそうに無い男性を見て心配し、

手を伸ばすが男性は私を拒んだ。


「涼君とは、知り合いなんです。あなたと涼君同じルームメイトなのに、

とても似てて、と言うより双子みたいにそっくりで」


男性は顔を反らしそっぽを向いたまま顔を見ればそっくりなのを隠したいのかも。


「涼君は教えてくれないのです!だからその」


「僕は平気ですから、ご心配おかけしました」


男性は壁に手を突きながらゆっくり立ち上がると、

壁に手を突き行ってしまい、私は一人に。


涼君と同じでどう言う関係か黙り教えてくれず、

知ってる人に聞きたいと思えて来た。


さっきの狐のお兄さんを探して居るか聞かれ、

なぜあの男性が倒れていたのか。

私は佑弥君も気になるでも涼君も気になる。

どちらにしようか悩んだ。

部屋に一度戻ろうと三階に移動した。




「ねぇっちょっといい?」


後ろから声が聞こえ振り向くと、

みゅうなさんが立っていた。

さっきのみゅうなさんと違い、少し恐怖を感じる。


「佑弥君の事探して居るの?春紀君あれから戻ってきて

探して居るけど佑弥君の事どう思って居るの?菜月さん

私あの日イベントを見に行ってたの、佑弥君と春紀君の

元々二人のファンだったから、

ここ最近佑弥君の姿を見て無くて」


「えっ?」


「春紀君ここ最近一人で歌って居るの、聞いて無いの?

私は菜月さんは知って居ると?

佑弥君と春紀君が一緒に歌って無いから私てっきり菜月さんが、

何か知って居ると思って居たんだけど、

佑弥君に何かあったんじゃ無いかって」


私は佑弥君が歌手だと知ったばかりで春紀君一人でイベントをやって居るのを初めて知った。


「春紀君に聞いても何も教えてくれなくて、

菜月さん本当に何も知らないのね?

ねぇっ菜月さん私佑弥君と付き合ってもいい?

菜月さん佑弥君と付き合っている訳じゃ無いんでしょ?

湧麻君の事を諦めた訳じゃ無いけど、私佑弥君の事好きなの」


みゅうなさんの言葉に、とてつもなく胸の辺りが苦しくなる。


「私は佑弥君を助けてあげたくて」


私は何も言えずみゅうなさんは、

本当は私の気持ちを試している様にも思えた。

私はみゅうなさんに何も言えないままそのまま離れ、

佑弥君を探したが見つからず、

三階をうろうろして居ると、階段の真下から声がした。


「おいっ金貰ったか?俺とお前で収穫したんだから、半分な、

女の嫉妬ってマジで怖いよなぁー佑弥ってやつは気の毒だけど金にはなるけど」


大きな声で話をして居た事もありあの男の人が佑弥君の居場所を知って居ると直感で感じ取った。


「ねぇ!今佑弥って言った?佑弥の事何か知って居るの?」


「はぁー?誰だお前?」


「こいつあいつといつも一緒に居るやつじゃねぇ?」


春紀君の声も聞こえ二人がいつも一緒に居ることも知って居るとわかり

確信出来一階に通じる階段を駆け下り急いだ。


「こいつは関係無いし、もう用は済んだから帰ろうぜ」


「じゃぁーなちびすけ君」


「まっ待って!」


「うるせ!知らねぇー」


私は階段を急いで降り、一階に着くと春紀君が男性の腕にしがみつき

かみついて居る。周りに居る生徒は助ける訳でも無く見て見ぬふり。


「菜月!佑弥君はこの奥の方から感じるよ?早く行ってあげた方が

かなりの衰弱を感じるけど」


ニーナが佑弥君の気配を感じたのか教えてくれた。

私は春紀君の方に急ぎ、

水橋君と呼びこっちこっちと手招きし走ると春紀君も感づき、

私の方に走って来た。


知らない男性二人は周りの生徒を気にしてか

追いかけて来ること無くそのまま去る。

途中で以前佑弥君を襲って居た。女子三人組とすれ違う。


「次はどんな目に遭わせてあげよう?」


化粧の濃い女性が何か悪いことでも考えているかの様な事を口にした。

私は女性を蹴り倒してあげたい気持ちになる周りに生徒が居るので出来ず。


奥の部屋に。右の部屋は鍵が掛かって居て空かず、

一番左の部屋は鍵が空いていたので開けると。


両腕の手首を後ろでネクタイで縛られ上半身裸で、

びしょ濡れの佑弥君がうつぶせで倒れていた。

近くには噴水があり、噴水近くにびしょ濡れに濡れた水溜まりが。


「うわぁーん!」


春紀君が猛スピードで駆け寄り、後ろで手を縛られている

ネクタイをほどき佑弥君を抱える。

私も春紀君と佑弥君の傍に行くと、びしょびしょの佑弥君は、

寒さか恐怖なのか、かかなり震えて顔が青ざめている。


「ごめんね助けに来るの遅くなって、

どうして菜月ちゃんの聖霊は居場所わかったの?

僕全然わからなかったのに」


「ニーナわかって居たならもっと早く教えてくれても」


春紀君は春紀君の聖霊を見ると。聖霊が後づさり。


「ぼっ僕の能力は人を探す能力迄上げてくれてないから、

わかって居たらもっと早く教えることも出来て居たけど」


春紀君の聖霊は慌てて私の後ろに隠れた。


「ハヤテ役に立てる能力手に入れないと駄目なのかなぁ?」


「佑弥君?」


佑弥君に聞いても答えてくれず、私は近くに置かれて居た学ランを広い

上半身裸姿の佑弥君の肩にかけると。


「はっ春紀、菜月さん・・・・・・」


佑弥君はうっすらと目を開けびっくりした表情を向け

弱々しい声で話しかけてきた。


「佑弥ごめんねもっと早く見つけていたらこんな事にはならなかったのに、

それに今迄黙って居たけど、僕佑弥が酷い目に遇わされて

いたのに助ける事も出来なくて、

佑弥をこんな傷だらけにされて、あの三人が許せないよぉ!」




「春紀絶対に手を出しては駄目だよ?何をしてくるか分からないから

それに、少し気になる事があって調べてみないと」


佑弥君は起き上がり、春紀君の肩に右手を回しふらふらと歩き出す。

春紀君と佑弥君の二人は部屋に戻って行き一人に。





ロビーの方に歩いて居ると。


「菜月さん!どうかしたですかぁー?元気ありませんねぇー?

そういえば、先ほどみゅうなさんが菜月さんを探してましたよぉー

私は涼君探して居るのでぇーす今日参加しているはずなんですがおかしいです。

魂を司る(つかさど)王様である事菜月さんにばれてしまいましたと、

連絡貰い探していたのでぇーす」


みちるさんには涼君は話して居たとわかり、私は涼君より、

佑弥君や春紀君が心配でミチルさんと軽く用件を聞き、

挨拶を交わし部屋に向かった。


受付カウンターで聞く訳にもいかずスマフォから

春紀君に連絡し部屋を聞き部屋に行くと

鍵が開いていて、中に入ると春紀君は一番奥のベットで

泣き疲れたのか寝ていた。

一番手前のベットで佑弥君は横になっている。私はそっと、

部屋を出ようとしたら。


「菜月さん?・・・・・・待って」


っと弱々しい声で話しかけベットから起き上がる佑弥君。

青いパジャマ姿で顔が少し赤い。

私は春紀君を起こさない様に佑弥君の方に近寄り。


「むっ無理しないでゆっくり休んで」


「僕の勘違いか解らないけど、何かみゅうなさんにされてない?

カムイにみゅうなさんに気をつけてと言われていたから」


「そう言えば、佑弥君の事がみゅうなさん好きって言ってたの

前から、二人の事を応援していたみたいなんだけどもしかしたら、

それが原因なのかな?

それより、佑弥君イベントに出てないの?ここ最近

ちょっと噂で聞いて、春紀君が一人でイベントをしているって」


佑弥君が少しびっくりした表情を浮かべ。


「っまっ前に言っていたハーモニカの彼女、あれは実は」


「えっ?」


 「ねぇ佑弥・・・・・・」


佑弥君の後ろで飛び起きた機嫌悪そうな、春紀君の顔。


「春紀まさかタヌキ寝入りしてた?」


佑弥君は春紀君の方を振り返り、焦った様に口調が早まる。


「菜月ちゃんを一人じめしてない?ねぇっ、僕の気持ち知ってるよね?

その話しして何をするつもりだったの?僕だって菜月ちゃんの事」


「春紀・・・・・・」


じっと佑弥君の方をガン見したままの春紀君。


「ごっごめんねっゆっゆっくり休んでね二人共・・・・・・」


私は何となくそこに居づらくなり、部屋を出ようとした。


「まっ待って、菜月さん!」


バタンッと二人の部屋から出ると。


佑弥君の必死に止める辛そうな弱々しい声が耳に残る。

ぎゅっと心では二人のうちのどちらかを求めている声に

心は張り裂けそうなくらい息が出来ないくらい苦しくなる。


「佑弥・・・・・・何か菜月ちゃんと出会ってから何かおかしいよ

ハーモニカについても教えてくれないし

ハ-モニカの女の子の事も何か隠して・・・・・・」


バンッ


っと言う壁を思いっきり叩く音が中で聞こえ、

何か中で起きているのかまったく状況が分からなかった。


「ぼっ僕だって菜月ちゃんの事好きなのに何か置いて行かれて居る気が

するのは気のせいなのかな?」


私は空気的に佑弥君の隠された過去のハーモニカの

女性が忘れられず好きだと言う気持ちを、

何となく感じた、私の中での気持ちが佑弥君に対して動いて居るのも。


「・・・・・・・なっ何すっうんっつんんっ」


春紀君の声が何かを押さえ込まれてて居る様な、

吐息の声が中から聞こえて来ていた。

私は、中の様子が気になったけど、

直ぐに涼君の事が脳裏によぎり私は涼君を探した。

ニーナがヒョコッと姿を現し、私の周りをうろうろして居る。


「ニーナ何か知って居るの?二人の事涼君とあの男性」


「しっ知らなくも無いけどこれは、

涼君もあの男性も知られたく無さそうだから、

でもこの問題は、菜月が自分で知る事が一番いいかも」


ニーナは、まだうろうろ。うろうろ。


「ねぇー涼君何処に居るか知らない?」


「知らないようで知ってる、知ってるようで知らない」


「涼君はどこ?」


ニーナを掴み、じっと見る。


「涼君はレストランで人魚と話をして居るでも今は二人にしておく方が、

って言うかいいの?

佑弥君の事ほっといて、何か言いたそうだったけど

高熱出していてふらふらでかなり無理していたの菜月もわかって居たはずなのに・・・・・・」


「わっわかって居ても春紀君も居たから、何か居づらくて」


私はレストランの場所がわからずカウンターで聞き屋上に向かう

には、正面の階段でしか行けないことを知りそのまま屋上に向かった。

屋上は柱が何本もあり、レストランには人が数人。

遠くの方で食事をして居る人魚。私は涼君と人魚に近づき柱に隠れる。


「どうしてあんな酷い事を?もう辞めて下さい」


「言ったでは無いか、結婚すればあの様な事をする事も無かった」


人魚は涼君に近づき、抱き寄せ唇にキスをしている。

ドンッと両手で人魚を突き放し、口元を手で拭く。


「やっやめて下さい!僕は気持ちは変わりません、

それに弟はあなたを助ける為に」


「ふんっ、闇の感情にしたのはあの弟では無いかお前が私の元に来ないのはあの小娘が原因か?」


「かっ彼女は関係無いです」


「私が気づかないとでも思って居るのか?」


人魚が居なくなり、涼君は人魚を追いかけて行った。

私は涼君を追いかけ一階のロビーの辺りに着くと。


「なっ菜月さん?佑弥君は見つかったの?」


みゅうなさんが私の方に近づき。


「それより湧麻君もうすぐ退院出来るみたい、

また連絡するって、早く湧麻君に会いたいなぁー

菜月さんも会いたいでしょ?私この後ちょっと用事があるから又ね」


みゅうなさんは佑弥君に対してはどうするのか気になった。

涼君を見失い気になりながらも二階の部屋に向かう。


二階の部屋に戻りドアの鍵を開けようと思ったが鍵がすでに開いていたので

中に入る。部屋の中は暗く電気をつけ目の前に二つに髪を縛った女の子が。

ベットの方に女の子が走って行き、横になっていた男性のシャツを右手で引っ張る。


「やっやめっうっ」


擦れて痛みが身体に走って居るのか顔を歪める。


「兄ちゃぁーんううん!にいちゃん」


男性が痛がる様子を見てベットの横に行き女の子を抱き止めさせた。


「お姉ちゃん」


男性が目を開け起き上がる。

男性に手を伸ばして居るので男性の隣に座らせた。男性にしがみ着き。


「っ」


っと顔を歪ませ歯を食いしばり耐えている。


「大丈夫ですか?同じ部屋みたいで」


男性は女の子を傍から離れさせ横にし寝かせ。女の子はベットで

ごろごろ、手におもちゃを持ち遊んでいる。

男性は少し深刻な暗い顔を向け


「お兄ちゃん涼兄ちゃん何処?」


かりんちゃんが起き上がり、涼君の名前を呼ぶ」


とっさにかりんちゃんの口を塞ぎ。


「あっあのぉ、話して貰えませんか?涼君の事、それとあなたのお名前」


男性はかりんちゃんから塞いで居た手を離し、頭を撫で。


「誰にも言わないで貰えるなら、兄と知り合いの様ですから

僕の名前は水島大季。涼は僕の双子の兄です」


「私も実はそうじゃ無いかなって思って、とてもお二人が似ているから」


「僕は訳があり人魚と結婚が出来なくなり、兄に対して人魚は」


大季君は説明を止め身体を押さえベッドに横たわる。


「大季君!!?」


「っつくっ」


急にお腹の辺りをぎゅっと押さえ、様子がおかしくなり。

大季君の着ていたシャツが少しめくれていて、肌に傷が見えて居た。

誰がこんな酷い傷を負わせたのか謎も。

大季君はそのまま意識を失い、かりんちゃんはベットに座っている。


私はその場を離れ、着替えを持ち部屋から出ようとしたら

かりんちゃんがベットから降りて、私に近づいて来たので


一緒にお風呂に行くか聞くと、顔を上下にさせたので。

勝手にお風呂に連れて行けずテーブルにメモを残し

かりんちゃんの洋服も持ちお風呂に行く事にした。




鍵を掛けて、隣の部屋のみゅうなさんを誘った。


「菜月さん?どうしたの?」


ドアをノックするとドアをみゅうなさんが開けると顔を覗かせこっちを見る。


「その子前にお祭りで金魚あげた」


かりんちゃんは顔を少し背け警戒していた。


「大丈夫だよ?みゅうなさんは優しいお姉さんだから」


「わぁー可愛いお名前は?」




かりんちゃんは、そっぽ向いていたのをみゅうなさんの方を向き。


「んっかりん」


少し警戒し又顔を反らす

頭を撫で撫でしみゅうなさんは、笑顔をかりんちゃんに向けている。


「みゅうなさん露天風呂入った?もしまだなら一緒にどう?」


「あっ行く行く!ちょっと待って着替え持つから」


ドアを閉め準備が出来一緒に、露天風呂に。

二階の廊下から階段で一階に降り露天風呂の案内が。


「菜月さん同室の人どう?私同じ部屋の男性怖そうな人で

さっき男性を迎えに来て二人で何処かに行ってから戻って無いの、

置いてあった部屋の荷物の中に佑弥君の写真が出てきて、

これって佑弥君の着ていたシャツなんて事は無いよね?

びしょ濡れになった白いYシャツは、佑弥君の脱がされたと思われる

シャツに間違いは無く、お金を貰って地上に帰って行った可能性が高かった。


「佑弥君何処に行ったんだろう」


「そのシャツ良かったら貰って置いてもいい?」


「この写真もいる?何か手がかりになるかどうかわからないけど、

でも私の佑弥君への気持ちが変わった訳じゃ無いけど」


「そっその事は」


「菜月さんお祭りの時もずっと佑弥君、菜月さんの事見て居たのに、

でも、菜月さん他の男性とうろうろしている姿を佑弥君が見て居るのを見て、私が二人を話しかけても

全然聞いて居る感じがしなくて、そんな思いをするなら、

いっそうの事私が付き合った方がいいって思ったの」


「わっ私には佑弥君や春紀君も二人共楽しんでいた様に見えたけど」

「あれは、楽しんで居る様に見せて、菜月さんに入って来て欲しかった様にしか

私には見えなかったよ?」


「みゅうなさんにはそう感じたの?でも私以前から佑弥君の事

ずっと好きだったのだからこの学園で会えてびっくりしたわ、

湧麻君より佑弥君とお付き合いしたいの」


私はみゅうなさんに、佑弥君への気持ちがある事を言えずに居た。


「その子同じ部屋の男性の子供なんだよね、子供が居て、

再婚相手探しか何かなのかな?でも佑弥君が知ったらショック大きそう

って言うか、菜月さんは佑弥君の事探さなくて大丈夫?」


脱衣所に着き、会話は中断しゆっくりお風呂を堪能し部屋に、

かりんちゃんは部屋に行くのが早く、みゅうなさんは

ゆっくり後から歩いている。かりんちゃんを一人には出来ず


先に戻るねと幼いかりんちゃんを追いかけ部屋に戻る。


「んーっ」


早く大季君に会いたいのか部屋のドアを開けようと手を高く伸ばすかりんちゃん、

手が届かずドアを開ける鍵をかけて行ったはずなのになぜか開いていた。

中に入ると。


「兄ーちゃん」


部屋の中は暗く電気を点けるしかし大季君はベットにも、

ソファーにもトイレにも、備え付けトイレも居なかった。

メモで置いていったメモは置いた場所とは違う場所に置かれて居たので

恐らくメモは目を通したと思えた。


「兄ちゃん」


泣きべそをかき入って来たドアの前に行くかりんちゃん。


「待って一緒に行くから」


私は何となく行くのは一階だと思いロビーにかりんちゃんと行く。

その時何処からか


バシッバシッ


と音が耳に入り音のする扉を開け隙間から中を覗いてみた。

部屋の中には人魚姫がムチを大季君のお腹や背中に打ち付けて

大季君は上から吊された鎖で両手首を鎖に吊され立たされて居る。


「どう?痛い?死人でも痛がるんだねあんたを

事故に遭わせたのは、この私あんたが逃げるから、わかるだろ?なぜか」


大季君が事故に?何を言って居るかはわからないけど、大季君の近くに

顔を近づけ人魚は大季君のあごを右手一差し指と親指でぐいっと押し上げキスをしていた。


「くっ」


「どう?久しぶりのキス、もっとしてあげようか?」


人魚姫は、大季君の胸の辺りを一差し指で沿わせ、

傷を見つけると舌で舐める。


「くっ」


顔を歪め、鎖が腕に絡み擦れ両手首から僅かに血が流れ。


「兄ちゃん!」


かりんちゃんが痛がる大季君の姿を見かねてか大季君の方に走って行く。


ダッダッ。


「んっ?お前はこいつの娘か?」


大季君はかりんちゃんの姿を見て、大声をあげた。


「くっ来るなあああぁーかりん戻れ!!!!」


かりんちゃんは大季君の前に立ちはだかり両手を広げ人魚姫を睨む。


「兄ちゃん苛めちゃ駄目!」


人魚姫は、かりんちゃんの目の高さ迄腰を曲げ。


「へぇー苛められたのはこっちなのよ?わかる?」


怖い顔に変わる人魚姫。


「憎い子!」


大季君は助けようと必死に両手首に付けられた鎖を外そうともがく。

外れる所か手首が青ざめもがく程すり切れ血が手首からさらに流れ落ちる。

人魚姫は、薄気味悪い笑みを浮かべ、左手に持っていたムチを、

高く振り上げかりんちゃん目がけて振り降ろした。


ドンッダダッ。


その瞬間真後ろのドアから音がしたかと思うと涼君が人魚姫に向かって猛ダッシュで走る姿。


「なっ!何をする離せ」


「いっいい加減にして下さい!」


人魚姫の左手首を掴み止める涼君の行動に怒りの炎をあげさせて、

しまったかの様に、人魚姫はスッとその場から宙に浮き、

とてつもなく恐怖の顔を向けて居た。


「ふんっまあいいだろう兄弟揃って刃向かおうとするのであるなら

奥の間で待ってやろ、今日来なければ学園の生徒の命の保証も無く

ここで死を迎えるに変わる海の底に永遠に沈めてね」


パッ


と姿を消し瞬間移動した。


涼君は、


「ノエル」


っと聖霊のノエルを呼び出し剣に化けさせ、大季君の手首を上から

吊し上げられていた鎖を切る。


ガシャン


鎖は切れ、大季君が前のめりになるのを予想して居たかの様に、

倒れる寸前で支える涼君。大季君の身体を抱き抱え右隅の茶色いソファーに仰向けに寝かせ、

涼君が膝を片足曲げ地面に着け、横たわる大季君の傷を見て。


「ここ迄酷い目に合わせられて、僕はなんて酷い兄なんだ。

この一件はもう隠しておくわけには人魚の事は父さんに話さなければ、

その前に僕が決着をつけなければ、後は僕に任せて大季はここに居てくれ」


涼君は立ち上がり私の居るドアの方に

私は涼君が何も言わずに出て行ったので呼び止めた。


「まっ待って涼君!」


涼君は振り向き私の右手を掴み、部屋の外の暗い場所に移動し。


「どうして今迄黙って居たの?二人が双子だって事も、それに

人魚姫は大季君を事故に遭わせたってどういう事?

涼君の弟なのにどうして対立したように避けるの?」



涼君は、六年前人魚姫と大季君が婚約する直前に人魚姫に何かが乗り移り、

結婚出来ず。妖精界の姫とその後結婚し直ぐにかりんちゃんが生まれ、

大季君を不幸にしようと闇に変わった人魚姫の呪いにより、

妖精界の姫が亡くなる前に、不運な事故にあった大季君は打ち所が悪く

脳死と判断され一度殺されかけた事を話してくれた。

脳死では無かった事を発見して居なければ死んでいたと。


「人魚姫と学園の生徒の聖霊と、

学園に起きていた不審な出来事も

関係があるの?人魚姫と」


「ええっあれは生徒を守る為に、妖精と結婚したと言った方が早いのですが、弟と距離を置いていたのですが、

まさか学園のイベントに迄

混乱をきたすなんて、二人が共に行動すべきではないと思って居たのです

弟や僕の近くに居る人を不幸にする可能性があったので、

僕と弟が一緒に居る程危険だと思ったのもありますが

弟は父から離れ修行があり、

僕は亡くなられた方が再び生まれ変わる為に魂をこの世に送り込む王子、

他にも魂になった幽体をあの世に送り込む王子、

この世で修行をするのですが一人は行方不明になってます。

恐らく闇の何かに連れ去られた可能性はありますが」


シュミレーションイベントも、その後の地震も、

湧麻君が怪我をしたのもすべては人魚姫の仕業。


「大季は学園の生徒の一部の生徒からいじめをされ、

僕は弟に助けられ

でも、同じ外見では間違われ兼ねないので、ですがあなたには見破られ

内心どきっとしました。でもこれで最後かも知れません

人魚姫を倒さなければ、このままではみんなを不幸にする事になる大季の事お願いします」


もしかしたら涼君は死ぬ気かも知れないと、感じた。

涼君は私から離れ背を向け、剣を持ち人魚姫の元に向かった。


私は見送るしか出来ず大季君の居る部屋に戻る。

ドアを開け中を見ると、大季君とかりんちゃんの姿は無く、

狐の聖霊がこっちを見て居た。


「大季も行ったこん止めても無駄そうだからお姉さんも行く

つもりなら行けばいいコン着いてくるコン?」


私は聞かれる前に追いかけたい気持ちがあった。


「私も行くわ!連れてって」


私は狐の後を追いかけた。


私は大季君が人魚姫に襲われて居た部屋の隣の

通路を狐と進む。


「兄ちゃん怖いよぉー」


前方からかりんちゃんの声が聞こえ。


「かりんちゃん!居るの?」


と声を出し聞くが、口を塞がれたのか声が聞こえなくなった。

あの時名前を呼ばなければ又声を聞けたかも知れなかったと後悔する。


「狐さん?あれっ?」


さっきは居たはずの狐の姿が消え。

右を向くとドアがありもしかしたら、

この部屋に入ったのかもと思いドアノブを回す。


ガチャガチャ。


鍵が掛かって居て開かず、私は不思議とドアの向こう側に何かある気がして、ニーナを呼び出しドアの

鍵を向こう側から開けて貰う ニーナは少し嫌な

顔をしたけど。


「仕方無いわねぇやってあげるから待って」


ニーナはドアをいとも簡単にすり抜け、向こう側に入ると

内側から鍵を

開けてくれたので中に入ることに成功。

中に入ると目の前に光る玉が黄色く光っていた。

狐が私の後ろから顔を出すと指で光る玉をまっすぐ見つめ。


「不思議な癒やしの玉コン、回復の」


「回復する力はニーナも持っているから必要無いよ?」


パワーアップするのかと思い、ニーナを連れて光る玉の前に。


ニーナは玉をいじるが特に反応無し。


「何にも起こらないじゃない!おかしいなぁー」



ニーナは、飛びながら光る玉の上をぐるぐる、

私が光る玉に上から触れぽわんぽわんと急に強い光を放ち、

何か身体の中が暑くなる。

何かが身体の中に入った様な感覚に襲われると、光を失った様に、

玉は一瞬にして真っ黒に。


「何だったんだろう?」


「持ち主を玉が選んだって事なんだと思うコン」


狐は少し笑みを浮かべ、ニーナは少しふて腐れ部屋を出て

私も後を追う。


「菜月誰か助けを呼んだ方がいいんじゃ無い?

このまま行っても涼君一人勝ち目は無いと思うから」


私は佑弥君が心配だったけど、春紀君なら協力して貰える。

そう思い二人の部屋に向かった。


「駄目だよ寝てないと」


部屋の中に春紀君の声が聞こえて居たので、ノックをする。


「はい!誰?」


「菜月だけど開けて貰える?」


「あっ!開いてるよ?」


部屋の中に入るとパジャマでは無く、

普段着の佑弥君の姿が。


「ゆっ佑弥行くって聞いてくれないんだよ?」


「何処に?」


「聖霊が助けに行くようにさっきから言ってて、

涼君達を助けてって」


話をする必要もなく既にわかって居たみたい。


佑弥君はふらふら立ち上がる。


「僕も・・・・・・一緒に」


熱があるのか少し顔が赤くなっていて、

少し苦しそうな表情をし壁に右手を付く。


「駄目だよ!僕が行くから祐弥は寝てて」


私は佑弥君の気持ちは嬉しかったけど体調が悪い人を

連れて行くわけにも行かず、春紀君と部屋を出た。


ガチャッ


「みゅうなさん!どっどうしてここに?」


佑弥君と春紀君の部屋の前にみゅうなさんが立って居た。


「二人の部屋を教えて貰ったらここって教えて貰って、

何かあったの?春紀君と何処かに行くの?」


みゅうなさんに心配をかけて居ることはわかっては居た、

だけど祐弥君はみゅうなさんに対して少し警戒をして居るのも解っては居たけど、もしかすると春紀君や私を追いかけて来るかも知れないと思い、みゅうなさんに熱がある佑弥君の看病を頼み、春紀君と人魚姫の場所へと急いだ。

さっき得た力があった場所を過ぎ、一直線に進むと段々光が強くなり明るさが少しまぶしく感じる、不思議なくらい嫌な感じ。

大きな広い場所に辿り着き、柱が何本も立つ場所が見え。


「兄ちゃん!」


又かりんちゃんの声が聞こえ声のする方に走った。


「かりんちゃん!?」


大季君が横たわりうつ伏せに倒れ意識が無い。

涼君は少し先に出たので何処かで戦って居るかも

知れないけど。


「見つけたぞ!こんな所に居たのか」


闇になった人魚姫が姿を現し、その後を涼君が

追ってきて剣を構え苦笑いする闇の人魚姫。


「ふんっよくここ迄追いついたなぁ」


春紀君は闇の人魚姫を見ると、聖霊の名前を呼ぶ。


「ハヤテ僕も」


「後で酷い目に遭っても知らないよ?春紀」


ハヤテは、クルッと一回転し剣に化け、

ハヤテの聖霊の剣を春紀が持ち

闇の人魚の方に駆け出す。


「なっ何!?」


戦う相手が急に現れ戸惑う闇の人魚姫。

私は大季君を抱き起こすと意識が戻ったのか目を覚ます。

ぐったりしていて、意識がもうろうし飛んでいるみたいに

思えた。


「っ、かっかりんを、連れてここから早く逃げて」


とてつもない痛みが身体に走って居るのか、

目を閉じて傷ついたお腹や腕を手で押さえ震えを隠そうとしている

様に見えた。


「望み通り三人まとめてあの世に送ってやろうくらえ!」


紫色の炎を両手で出し春紀君の方に放ち消えた。


「はああああああああっ」

ドンッ。

シュッ。

紫色の炎の巨大な炎が、二人の方に飛んでいく。


私と大季君とかりんちゃんの近くに闇の人魚姫が移動し、

紫色の炎を両手から出し放って来た。

かなり至近距離で放たれ、戸惑う。


「私のヒーリングの力でどうかお願い!」


二人は紫色の炎を交わし、闇の人魚姫の元を追いかけ。


ドンッ。


「あはははははっこれで終わりだ!」


私の中から大きな力を感じ何かが飛び出た。

シュッ


と大きな羽を広げた

黄色い髪の人魚、紫色の炎をかき消し黄色い光を身に

まとい。


「なっなんだと!なぜお前がここに!」


「かっかりん!」


大季君が目を開き天使のような優しい笑顔を大季君に向け。


「ごめんなさい約束を守れなくて、どうかこの者に癒やしの力を今解放します!」


両手を私の目の前で広げ翼がバサッと広げると、

全身に何かの力が宿る様な身体が熱くなる。

黄色い光に全身を光らせる人魚は大季君の手を取り唇を重ねた。


「ごめんなさい、こんな酷い目に遭わせてしまって、

でもこの方が私を助けて下さいました。

闇になった人魚に玉の中に封印させられてしまい

黄色い光の玉に触れた時に、封印が解けたみたい」


「おのれっ!」


宙にういたままこっちに近づく闇の人魚姫を見て、

大季君が起き上がり行こうとしたので私は。


「ダメッ」


っと強く抱きしめてしまった。


「うあああああああぁっ!!!!!!」


大季君はとてつもない痛みを感じたのか、大声を挙げ。


「兄ちゃん!」


かりんちゃんがビクッとなり怖がる。

大季君は、私にもたれかかり。


「ごっごめんくっ」


顔を歪ませ、痛みを堪える。

ダッツダッダッ

涼君が遅れて辿り着き大季君の前に膝を着き座ると。


「大季っ大丈夫ですか!あの部屋に居る様に言ったのになぜ!」


「そいつの心配をするより自分の心配をしたらどうだい?」


目の前に剣を構えた。春紀君を攻撃。


バシッバシッ。

ドンッ


と春紀君は床に叩きつけられ、人魚の攻撃が見えなかった。

何が起きたのか分からない。


「痛ッもうっ顔に傷おったらどうしてくれるんだよ!もう」


春紀君は起き上がり、剣を持ち構える。


「ふんっ甘いんだよっ!」


何度も闇の人魚に立ち向かって行くが。

ドンッ

と床に春紀君が倒れ、闇の人魚姫を睨む。


「よくその実力で来たねぇ、弱すぎて弱すぎて」


大季君の傷を癒やそうと、力を集中する身体の中から力があふれ大季君の両腕を掴み集中何かが一気に身体から出ていく感じがしふらっとなる。

大季君は腕の傷が消え、両腕を動かす。


「何だろうちょっと回復したらこんなに力が抜けるんだこれだと全身を治せないよ」


「一度でヒーリングをマスターされて凄いと思いますよ?」


涼君は、立ち上がり笑顔を向け剣を持ち春紀君の元に。

「何人居ようと構わない、慣れもしない剣など私に通用などしない!」


「マサル!」


大季君は何かの名前を呼ぶと、狐が姿を現した。


「どうする気コンまだ傷が沢山あるコン、無理だコン」


大季君は手のひらを狐に向ける。狐は何かを諦める様な顔をし、

くるっと一回転カチャンと音をたて、床に剣が落ちた。


大季君は右手で剣を掴み。


「待って、無理だよその身体では無理して死んだら困るのは

かりんちゃんだから」


大季君は、はっとした顔をかりんちゃんを見て、

かりんちゃんが大季君の傍に。


「私の名前をつけてくれたのね大季さん、ありがとう、

もし産まれ変わったら次は、うんんっそれは叶わない夢ね

大季さんその子は私だと思って大切にしてあげてね、あなたに会えてよかった。大季さんもし素敵な女性が出来たら

迷わず結婚して幸せになってね、

妖精界の姫もそれを望んで居るわ私も」


「はああああっ」


春紀君が隙を突いて闇の人魚姫に飛びかかる。


「ええいっ邪魔だぁー」


紫色の炎を放ち春紀君に向かって投げる。

春紀君はとっさに避けるが間に合わず左足に

紫色の炎が直撃、全身に紫色の稲光が走りまるで雷を浴びたかの様なしびれが春紀君を包む。


「うわあああああっ!!!!!」


ドサッ


「春紀君!」


春紀君は気を失ったのかその場に倒れピクリとも動かない。


「まさかあの紫色の炎は・・・・・・」


涼君は何かに気づいたのか春紀君の近くに。


「これで終わりだぁ!」

紫色のとてつもない大きな炎を両手で出し、

恐らく全ての力を炎にとんでもない力、

一歩間違えばこの人魚の館に海の海水が流れ込む可能性も。


「やっやめて下さい学園の生徒は関係無いじゃ無いですか!」


涼君が言っても、止める気配は無い、逆にあざ笑って。


「あはははははははっ知るか!やっぁ!」


巨大な紫の炎は、二人の方に炎が迫った。


「大季さんあなたは生きて私の分も、妖精の分も」


シュッと姿を人魚姫が消し、大季君は。


「かっかりん!待てっ!かりん!!」


大声でかりんさんの名前を呼ぶが、人魚姫のかりんさんは紫色の炎を全身で受け止め。


「なっなにをする!やっやめろぉ!」


大季君が痛みをこらえ走り出すが。

闇の人魚姫を押さえつけ瞬間的に消えると紫色の炎の

前に移動。

ビシッビシッドオオオオン!

っと巨大な紫の炎が二人の人魚姫を襲う人魚姫のかりんが光を放ち、

ビューッと光ると、紫色の炎が消え地面にうつ伏せに闇の人魚姫が倒れ。

涼君がとどめを刺そうと剣を振りかざし闇の人魚の元に走り田す。


「兄さん待って!止めてくれぇ!」


大季君の声がまるで届いていないかの様に

涼君の振りかざした剣が襲いかかりそのまま

闇の人魚姫の方に。


グサッ。


大季君は涼君が闇の人魚に向けたはずの剣が右腕に剣が刺さり人魚姫を助けた。


「うっぅああああああぁ!っ」


大季君に突き刺さった剣が消え、聖霊の姿に戻る。

人魚姫が大季君の姿をとらえ。


「危ない!」


涼君は大季君の身を案じて手を出すが、

大季君は手を振り払い。


人魚姫のかりんが大季君を抱きしめ、

黄色い閃光を放ち大季君の傷が全て消えた。


「ごめんなさい大季さん傷つけてしまって!、本当にごめんなさい」


闇の人魚姫は消滅し、元の人魚に戻り危うく傷つけてしまう所を大季君が救い

人魚姫は元に戻る。大季君は大粒の涙を流し人魚姫を抱きしめ春紀君の横たわる場所に駆け寄り、抱き起こすと春紀君が目を覚ます。


「春紀君大丈夫?」


「あはははっあれっここって」


「目を覚まされたみたいですね?」


涼君が春紀君と私の隣に来る。


「僕今夢を見ていたみたい、でもね・・・・・・僕は姫を守る為に殺されたんだ」


「恐らくそれは春紀君の前世で実際に起きた出来事でしょう、

普通でしたら、前世療法や前世がわかる方で

無ければ見られるはずも無かったはずですが、

生まれてくる際に記憶を消しますが、

魂の中には記憶として残って居ますので恐らくその姫も亡くなられたはずです。

それは菜月さんあなただと思われます」


春紀君は起き上がり、両手で思いっきり私に抱きつく。


「こうしてもう一度再会出来たんだっ、あのねっ剣に刺された時に僕手を伸ばしてこう言ってた、

好きだってそうしたら、

姫がね同じように倒れて居て手を伸ばして僕の事を好きって言ってたんだよ?

気づいたら菜月ちゃんに抱き抱えられてて」


涼君は少し悩んだ顔をしている。


「菜月さん次第です。恐らく他にもこの学園には・・・・・・

いえっ、僕が言える事ではありませんので」


何かを言いかけ辞めるがかなり重要な事になる事を後から知る事になった。


大季君とかりんちゃんをその場に残し、私と涼君、、春紀君は部屋に戻った。


私は一人部屋の中で寝た。


みゅうなさんはよくわからないけど佑弥君に部屋を出されて、

機嫌を悪くしてしまった事を、佑弥君から聞いた。

あの時の事をかなり後悔したみたいなんだけど。


翌朝、目が覚めまだ部屋には戻ってきていない大季君。

トントン

誰かがドアの向こうでドアを叩いている。


大季君が戻ってくると思い鍵を掛けずに寝たのでドアが開き。


















“コンコン”


部屋に戻った矢先

(やさき)

ドアを誰かが叩く音が聞こえた為。


ちょっとめんどくさい気持ちもあったけど、

しぶしぶ、ドアを開ける。


「菜月さん?どうしてここに?

もしかして弟と同じ部屋でしたか?

もしそうなら、逆によかったです」

涼君は、少し疲れた顔で弟を気にして部屋をおとづれたみたい。


丁度みんなは朝食を食べ始めた頃。


朝の八時をまわるくらいけれど、

一緒にみんなで朝ご飯を食べにと言うより、

大季君を探すことが最優先に思えた。


「う…んあれから、

大季君はまだ部屋に戻って来た形跡も無くて…、

探したほうがいいのかも」



人魚姫と恋をしながらも、学園のみんなの為に

愛する人を助ける為に精霊を司る姫と結婚した

大季君…。


「そうですかっ僕はその辺りを探してみますから、


菜月さんは

朝ご飯でもゆっくり召し上がっていてください。


まだ済まされて居ないでしょ?」


りょう君は、

ドアを閉めて探しに向かった。


涼君を追い一緒に探すことも考えた。


けれど私は自分で探してみたい

思いが強く働き、

一人で探そうと眠っているかりんちゃんを見て、

探すのを続行した。


「大季君…行くなら何処に行くかなっ?」



私の中で、

大季君の居そうな場所を特定しようと、

心みても想像がつかなかった。


ニ‐ナが考え込み、

部屋の中をうろうろ…、

落ち着きが無く

何か感じ取っている様に見えた。


「ニ‐ナ?どうかしたのっ…」


ニ‐ナはうろうろし、

私の声がまるで聞こえていない様な、無表情の顔。





 


ニ‐ナ感じたよっ大季君の声が。


冷たい心の叫びが…、

でも見えないのっ姿が

大季君の姿が…、

どこかに閉じ込められて居る様な…。


この館の何処かには、

いるのに」


ニ‐ナなら、大季君が居る場所を捜し出せるそんな気がした。


『目には見えない姿…、まさか幽霊になったとか?』


私は嫌な予感もしたけど、とにかく大季君を

助けないと。

私は、ニ‐ナに誘導を頼み後を追った。


「待ってて…私が今行くから…」


ニ‐ナは、

空中に浮いて居る為、

走って追い付く事も

少し疲れ始める。

離れて行くニ‐ナを呼び止めてしまう。


「ニ‐ナもう少し

ゆっくり飛べないの?

さすがに疲れたよっ」


ニ‐ナは突然立ち止まり、

一階の、

食堂近くにある、

黒い扉を見て、

手をかざし目を閉じた。





「この奥から大季君の声が聞こえた…。


とても悲しい声だけど、このままほっとくと、

この世には戻って来れないかも助けに行くには、

それなりの覚悟が必要…」


私は迷った…だけど

行かなくては、大季君を助けられない気がしたから。


「行くよっ!助けに」


ニ‐ナは手をかざし目を閉じ黒い扉は、


黒い渦を巻いて人を寄せ付けないような

雰囲気が全身に伝わってきた。





「…僕は…何の為に生まれてきた…

僕はもう大切な人を失った…

助けたかった人を救うことも出来なかった」


私の心の中に確かに聞こえた声。


何かを失い

心を閉ざし悲しみに包まれた、聞いたことの無い

悲しみ…。


迷っている時間は無い…。


「行こう!大季君を助けに」


ニ‐ナと共に渦の中に飛び込んだっ。


“ゴォ…ゴォ…”


体が、

チクチクと痛みが走る…。

『苦しい…心が痛い…こんなにつらいのは、はじめてなのに、

不安な思いもすべて感じる。


どうしたらいいのか迷っている…』


私の中に、色々な感情が次々入って来た。


でも、私はこの悲しみを乗り越えなければ、

大季君に会えない気がした。


これは大季君そのものが作り出した、気持ち…。


だったら乗り越えなければ、救うことは出来ないと。



「大季君…戻ろう大季君の居るべき場所はここじゃ無い」


私は、心の中で念じた。


「菜月…さん?どうして僕は失いました…彼女を

彼女は、ありがとうと言いながらごめんなさいと…僕は彼女を救うこと出来ませんでした…」


上半身裸姿の大季君…。


心を閉ざし大きな悲しみ、けれど私の中の勇気づけたい気持ちを、

軽く押し退けられた。


誰かの為に必死になり誰かの為に努力し

最終的に救うことが出来なかった、大季君の気持ち。

本当に愛した人と結婚出来なかった悲しみ…、

私には大季君の気持ちを受けとめることが、辛かった。


でも例え救えなくても、命を捨てて欲しくないそう思った。


「あなたに生きて色々な世界を世の中を見せてあげる事

まだかりんちゃんも居る…。


かりんちゃんは

大季君を待って居るよっ?」






「…かりん…

僕は、かりんを育てる資格があるのでしょうか…。


妻は、かりんを産んだ後行方不明になりました。


命と引き替えに…、僕が精霊を求めて居た事で、

本当の愛した人とは違う…僕がもし、

精霊を求めなければ…、

妻は悩む事もなかった…」


大季君の悲しみが一気に強くなり、

私の体にさらに痛みを感じた。


「大季君…」


私は、大季君を救うことが出来るのか、段々不安になった。


本当に愛した人と一緒になれず、

人魚姫を助けるために愛した人は子供を産み行方不明になり。


大季君の背負ったものは大きいこと…、人魚と恋に落ちても、

闇に体を乗っ取られ…最終的に助けられず…。







「…大季さん…、あなたは私を助け元の体に戻る事が出来ました…。


私は大季さんと結ばれる事は出来なかったけれど、

大季さんは学園のみなさんを助けのです。


大季さんは、大季さんの生きるべき時間を

大切に生きてください」


どこからか声が聞こえた…、この声は

人魚姫…かりんさん。


「…かりん僕もかりんと」


「…なりません!生きるべき人が死を求めては、

私の生きるべき時間は

終わっても、大季さんはまだやるべき事が残って居ます。


かりんちゃんと他の素敵な女性と出会い…、

幸せな家庭を私くしに見せてください…」


人魚姫かりんさんの、

真っすぐな真剣な言葉を、感じる、

かりんさんの願いを大季君は聞き悲しみがさらに込み上げる。


「かりん…以外を愛せなんて…、そんな事」






「大季さんあなたは神の子、私は海の子です。


海底で生きるべき人が

天の子と一緒になるのはおかしい事、

けれどあなたは私を愛してくださいました。


私は、それだけで幸せです。

私を助けようとしてくれた事も忘れません


私が生まれ変わったら次は、人としてあなたに

もう一度巡りあいたです


どうか、今の人生を大切にしてください」


人魚姫のかりんさんの声が消え

大季君の悲しみが深まる。


「かりん…今度は絶対にお前を幸せにする僕は…、

帰るべき場所に帰るよっ…かりんを守る」



その言葉と同時に周りがぼわぁ~っと明るい光に包まれた。


目が覚めると、両腕から血を流しうづくまる

大季君の姿があった。




 「…うぅ…くっ…かりん…」


ぶるぶる震え目から大量の涙を流し耐えきれない悲しみを

背負っている大季君の姿を目の辺りにした。


「…大季君」


私は大季君の傍に近寄り優しく抱き締めた。


「うぅ…」


大季君の涙が洋服に涙が落ち…少し冷たかった。


一人で抱え、

愛する人と一緒に幸せになれない、身分違いの恋

生まれ変わったら、

今度こそ、実りますようにと願ってあげたかった。


大季君の人魚姫への一途な思いも知りつつ、

私の中に、大季君に対して意識が強まる…。


腕から、血を覚えたてのヒ‐リングを使い治そうとした。


でも、大季君は私がヒ‐リングをかけようとしたのを払いのける。




「…うっ…いいんだっ…かりんの痛みには、

およばない…」


身体の痛みもまだ完治出来て無くて、相当痛いはずなのに…。


大季君は立ち上がり壁をつたい歩き始めた。


「大季君…」


私は、大季君の姿を見て無理やり“ヒ‐リング”をとも考えた、

けれど、傷をつけたのは闇でもかりんさん…、

大季君は病院に行くことも無く、部屋に戻ろうとしていた。




「菜月さんありがとう…助けようとしてくれて

…うっ…」


大季君はそういうとその場に倒れこみ意識を失った。


私はスマフォで涼君に連絡しその後部屋迄抱き抱えられ

運んで貰った。


「…すみません菜月さん

弟がご迷惑ばかりおかけして言ったら聞かない性格なので…、

人魚姫に対しても、

海岸で、溺れそうになったのを助けて貰ってから、

季節の王子である身分を捨てようとしたのです」


僕は、王子である身分よりいじめられる弟さんと

似ていることから、眼鏡をかけたり、

髪を上にあげて居た事も、話を聞かせてくれた。


私は大季君の両腕を消毒しガ‐ゼと包帯でとめる





「菜月さん…すみませんが僕はこれで少し国に帰らなくてはならないのでまた学園で会えるのを楽しみにしています」


涼君は、大季君を残し部屋から出ていった。


涼君が出て行くと大季君が…目を覚ました。


「…大季君起きてたの?涼は国に戻…るのですね…」


バサッ。


私が、涼君の事を追いかけようとした瞬間

大季君が起き上がり、私を両手で腰の辺りを優しく抱き締めた。


「…ちょっとだけこうしていてもいいですか?…」





大季君は目を閉じ


「…僕は人間と本当ならそれが当たり前何ですよね…」


大季君の声が、わずかにかすかにかすれて聞こえた。


大季君が顔を上げ透き通る様な眼差しで、

じっと見つめて来て私の心臓がドキドキした。

今まで見せたことの無い、優しい目。


大季君はそのまま目を閉じ眠ってしまった。


翌朝私は、春紀君と佑弥君と馬車で先に地上に戻ることに。









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