祐弥の秘密

「ごめんね遅くなって、もう少しだけ時間ある?

これから行きたい所があって」


佑弥君と再びタクシーに乗り込み、

何処に向かうのか解らないけど、

十分程車を走らせ何処かの坂を上り、

タクシーを止め待たせて少し歩く。


「着いたよ」


少し寒いけど、目に飛び込んで来たのは百万ドルの夜景。

街の灯りが小さく光り凄く綺麗。


「この場所疲れが取れるからよく来てたんです。

学園で一緒に花火見れなくてここで悪いけど」


春紀君と一緒に花火を見たことは言えなかった、

もしかしたら一緒に見たくて連絡してくれていたのかも。


「佑弥君歌手だったんだね、春紀君はいつもグラサンしていたのも、

人をどことなく避けていた佑弥君も、

意味が解ったよ追いかけられて居た事も」


「このまま隠し事して居るべきか悩んで居たから、

春紀には黙って居て貰える?この場所も」


佑弥君の顔が少し赤くなり照れた。

照れた顔を余り見せたく無いのか、夜景の方を見ている。


「春紀君に隠し事が多いのはどうしてなんですか?とても仲がいいのに

それと、佑弥君と春紀君はいつから二人でライブを始めたの? 」


「菜月さんは春紀に興味があるの?」


二人の事が気にならないかと言えば嘘になる、だからか否定することは出来なかった。


「中学2年の時に春紀がいじめられてて助けたのがきっかけ

お互いにカラオケに行くのが趣味で意気投合して、

路上ライブをきっかけに歌手としてデビューして、

ある事がきっかけで高校の頃から一緒に暮らし始めて、

友松さんにかなりお世話になっている。


イベントや催し物に呼ばれてあの女性三人組と偶然同じ、

イベントで出会ってから春紀の事を好きだと言う子が一人居た事で、

告白したみたいなんだけど、

春紀は断ってから何かと嫌がらせが始まって。


この学園に入るのを何処かで知って追いかけて来たのかも、

ここなら安全だと思って入学したのもあったんだけど。


僕が春紀と一緒に居る事が気に入らない事で攻撃してきているのは、

その人達なんだ。

やられても手を出せないのは、この先春紀に何をされるか解らなくて」


手を出されても、やり返さずずっと我慢していた理由もわかり。


「もう一つだけ聞きたい事があるの、

前にハーモニカをくれた

初恋の人の事・・・・・・今その人はどうして居るの?

私に協力出来る事があれば・・・・・・」


佑弥君はなぜか顔を曇らせ辛そうな表情をする。


「その人の事は今はごめん話せない、

そろそろ冷えて来たね!そろそろ戻ろうか」


佑弥君をこんなにも苦しめて居る原因は何なのか

この時の私にはわからなかった。一人トコトコとタクシーの方へ。


「ゆっ佑弥君?」


佑弥君はそのままタクシーの後部座席のドアが自動で開き乗り込み

私も佑弥君の後を追いタクシーの後部座席に座る。

ドアが自動で閉まり発進。

佑弥君は疲れて居るのか、窓際に身体を寄せ寝てしまった。

学園に戻り佑弥君と別れ一人女子寮に戻った。


私は部屋に戻りメールを確認すると

佑弥君から二度も連絡が来ていた事に気づく。


新しい別の秘密のメールが届いていて、

八月に人魚姫の館二泊三日の宿泊イベントがある事を知り、

人魚の館に行く事にした。


学園での生活も十月迄残り僅かとなっていた。

もう一件涼君から連絡が来ていて、

学園の体育館前に明日の夜七時に来て欲しいと連絡が来ていた、

連絡があった時間から既に二時間は経っていた、

もしかしたらさっきの景品のイベントに誘うつもりなのかもと。

春紀君の事もあったけど春紀君に会った後でも

時間はあると思い会う連絡をした。


翌朝私は部屋からリビングに向かうと、

かのんさんが嬉しそうに鞄に何かを詰め。


「かのんさんおはよう」


作業していた手を止めこっちを見て立ち上がりこっちを嬉しそうに見て居る。


「おっおはようございますです」


理久君が学園から居なくなったから、

元気が無かったのに元気になって嬉しいけど。


「菜月さんも行かれますよね?人魚姫の館に海底に

行けるのとても楽しみです」


「うっうんわっ私も宿泊イベント楽しみ」


私より詳しいかのんさんになぜそんなに詳しいか聞くと、

学園のポストにビラが入って居て、

そこに詳しく書かれて居たみたいで。

かのんさんは、旅行の準備をしながら誰かと連絡を取って居る。

隠しイベントのはずなのにおかしいとは思いつつも。


「はいっあっあのぉー今度はいつ戻られるのですか?

来年迄待つのはとても寂しいです。

私から会いに行ってもいいですか?」


かのんさんは、誰かと話をしながら部屋に入って行きしばらく出て来ない。

私は、普段着に着替えて、佑弥君の部屋に向かう。


男子寮の部屋に行く途中に春紀君に出会い、

カフェに居た友松さんと楽しく会話して居た。


「まだ時間あるね、何処かで食事でもしながら打ち合わせしましょうか?」


「今日は何処に連れて行ってくれるの?僕、

前に行った焼き肉のお店に行きたいなぁ」


「わかりました。では時間の調整もかねて少し早めに行きましょうか」


春紀君と、友松さんは正面の階段で下に降りて行き楽しそう。

春紀君は用事があるとわかり今日過ごすことは

どちらにしても断念。

打ち合わせと言う言葉を聞く限り、関係者の方と思えた。

カフェでお手伝いをしながら、ファンの子達に囲まれていた。

今迄友松さんが人気があった理由と繋がった。

私は佑弥君の部屋に行き、中から返事が無く部屋に戻り、

夜の六時半過ぎ迄ゆっくり過ごし外に出た。

しばらく待つこと約五分位。


「お待たせしてしまったみたいですみません


「今から体育館でイベントやるみたいですが見た感じでは、

七夕の織り姫と彦星の衣装を着て写真を撮られているみたいです」


体育館のイベントに参加する券が少なかった為かそんなに人数は居なかったあの不審な事件もあった後だからかも。

涼君とカップルでも無いのでこのまま帰るのも悪いので一緒に花火を見る事を提案し移動。


人が増え花火を待つ人で溢れている場所に着くと、

みゅうなさんの姿が、テントに居る友松さんの所で飲み物を頼んでいた、

女性達と話しをして居る。私に気づくと女性達とひそひそと何かを話し

こっちを見たかと思うとその場を去った。


「おいっーあいつなんか、似てねぇ?小さな子供連れてないけど、

置いてきた可能性もあんじゃ」


涼君の方を男性の二人組が見て居る。噂の声に涼君は少し雲行きが

変わる、少し青ざめ急に両手で頭を押さえ。


「っ僕は大丈夫です。すいませんご心配をおかけして、くっつ」


腰を少し前のめりに壁に右手をつき左手で頭を押さえている涼君。


「うっこの力はまさかっ」


涼君の顔が血の気を引いたように青ざめ急激な体調不良に異変を感じる。


「菜月!強くて邪悪な気配を感じるよ?

前にもこんな事があったけど

シュミレーションイベントの時と似ている」


ニーナが何かの危険を察知した瞬間。


ドサッ

と言う音がし、振り返ると涼君が横たわった姿が目に入りとっさに

両手で受け止めるが、重さに耐えきれず、地面に涼君が倒れ込む。

周囲に居た人の視線が涼君に集まり。


「涼君!?」


私が涼君を抱き起こそうとすると、周りは。


「マジかよぉーもしあの噂の人だったらやばいし

他に行こう」


聖霊達は何かの異変を感じて居るみたいだけど、

花火の見物で集まって居た数人の人が去り、様子がおかしく思えた。

それ以上におかしいのは、前から涼君に似た人が居るけど学園内で嫌がらせが起きていることが

気になっていた。佑弥君の時も、涼君の時も助けてくれている事もあり

私は、お礼しなければいけないくらいの人でもあるけど。


「涼君しっかりして!?涼君」


その時、誰かが走る様な音が聞こえ近づく足音。


「すいません僕が寮に連れて行きますから」


前に、佑弥君を医務室に連れて行ってくれた人が、

涼君を両手で抱きかかえ、私は涼君が心配だったので着いていく。

周りは又ざわついている。


「まじかよやばっおいっ早く離れろ疫病神」


「又噂のあいつが来た」


周りの声は無視し、少し早歩きで寮の一階から三階にエレベータで上がり

何処かの部屋に入る。玄関の鍵を渡され中に入り、左手前の部屋に入ると、

ベッドに涼君を横たわらせ助けてくれた男性は部屋から出て行った。


涼君は目を覚ますこと無く気を失っている。

外では花火が打ち上げられ、窓から見え。

一緒に花火を見たかった気持ちも少しあり寂しい気持ちが。


「今は邪悪な気配は感じないこの寮の中は、

まるで結界でも張られているみたい外に居る時に狙っている様な」


ニーナは部屋の中を偵察しながら、飛んで居る。

額から汗が出ていたので、ハンカチを鞄から出し眼鏡が邪魔だったので眼鏡を外し真横のテーブルに置いた。

男子寮の部屋はどこも青い壁で

机やテレビにダブルベット、本棚などは同じ。

涼君の顔をじっと見ると、髪の毛を上に上げられていて何となく、

髪を下ろしてみた。気のせいかさっきの男性

にそっくりで似ている                   


さっき取った眼鏡を手に取りちょっと覗き込むと

只のおしゃれ眼鏡だとわかった。


「はっ?」


涼君は目を覚ましこっちの方を見ると急に起き上がり。


「そっそれはぼっ僕の眼鏡かっ返して下さい!」


私は、手に持っていたおしゃれ眼鏡を涼君に渡す。

眼鏡を掛けると涼君は前髪を触り。


「なっ菜月さん髪触りましたか?」


「涼君髪の前髪下ろしていた方がかっこいいのに、


涼君はわざわざ髪の毛を上げてるのですか?」


涼君は少しため息混じりに。


「すみません、僕が気に入ってやっている事って言うより、

なぜここに、ここは僕の部屋みたいですが」


「涼君が急に倒れて涼君に似ている男性が涼君をここ迄連れてきてくれたの」


涼君は、びっくりしてうつむき。


「菜月さんその人とお知り合いですか?こんな事は言いたくは無いのですがあの人と今後余り関わりにならない方がいいですその方が安全ですから・・・・・・」


「涼君は何か知って居るの?あの男性の事、私にはこんな事言うの変かも知れないけど、似てると思うの何て言うか双子みたいな」


涼君が、私の方をじっと見つめ。


「いっ一緒にはしないで頂けませんか、僕は」


ガチャ


っと涼君の部屋のドアが開き、二つに髪を縛った女の子が

目を擦りながらこっちを見て居る。


「兄ちゃおしっこ」


「かっかりんそっちはトイレじゃない!こっちに来なさい」


廊下から声がして、部屋のドアに居た女の子は涼君に似た男性に

手を引かれドアから廊下に出た。

あの子はいつも一緒に居た子。もしかしたら

同じルームメイトなのかも。


「涼君今の子男性とよく一緒に居る子なんだけど

同じルームメイトなんですか?」


「菜月さんさっきも言いましたけど・・・・・・僕は」


涼君は私に何かを言いかけた。

私は外の様子が気になり涼君の部屋からトイレに向かう。


「おっお手洗い借りるね」


「あっあのっ」


涼君は何かを知られたく無いのか私に手を向け掴もうとして来た。

ふと頭に、佑弥君の顔がよぎりこの時なのかも佑弥君をなぜか

強く意識し始めたのは。

涼君の部屋から出ると、丁度廊下を歩きトイレから出てきた男性と目が合い。


「!?」


「!?っ」


っとお互いに小さな声を発する。


「さっさきほどもこの間もありがとうございました、

助けて頂いて」


「いっいえっ」


男性は一番奥の部屋に入って行き、私は姿を目で追う。

小さな女の子もこっちを見て居る。


「あっあのねっお姉ちゃんがくれたの金魚あれっ、ねぇパパっ」


男性はかりんちゃんと言う小さな女の子の娘だとわかった。

お手洗いを借り涼君の部屋に戻ると、少し電気を暗くして居たので、

涼君が横になっているベッドに近づき。


「何を話して居たんですか?あいつと本当に関わらない方がいいです。

あなたを危険なめに遭わせるわけには」


ベットから起き上がろうとする涼君。


「今日は、すみません誘っておきながらこんな体調になってしまって」


涼君は、こっちを振り向き少し眉間にしわを寄せていた。


「又誘って下さい良かったら、今日は帰りますね、お大事に」


似ている男性を危険だと言う言葉に対して私には意味が

解らなかった、涼君と似ている男性はそんな人にはとても見えず

学園で起きている噂の事。


涼君は男性の事をまるで避けているみたい、私は自分の部屋に戻った。





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