第13話 円環の回 n回目

 俺はあれから幾度となく、同じ時間を過ごしてきた。


 何度も、何度も同じスタート地点。そこは、むやみやたらに使った終焉の光のせいで、辺り一面、穴ぼこたらけになってしまった。

 そのせいか、ここ数百回の円環の回では、ついに一切食べ物が見つからなくなってしまった。

 土を掘り返しても虫一匹見つからない。空腹もそうだが、何より喉の乾きが酷い。生肉や虫に含まれていた水分がいかに大切だったか骨身に染めているところだ。

 スタートする度に元には戻る。とはいえ、毎回毎回、円環の呪いが発動する直前になると喉が乾く。すっかりうんざりしてしまったので、最近は軽く前肢を噛み、最小限の体液をすすって乾きをしのいでいる。どうせ元に戻るから。


 そして、これだけ円環の呪いを繰り返していても、森の魔法使いとやらには一回も遭遇出来ていない。

 そのかわり無数の称号とスキルを手に入れられた。ここは、様々な、本当に様々な行動で称号が手にはいる世界だった。

 そのほとんどが不名誉な称号だが。


 今は何をしているかといえば、ここ100回ぐらいの円環の回では、ひたすら瞑想をしている。


 そうこうしているうちに、ついにその時がきた。


 響くアナウンス。


「条件を達成しました。称号:解脱者を獲得しました。」

「称号の効果として真理を見通す目、獲得。」


『よし、よし、よしっ! 下手したらこの数十倍はかかるかと思ったけど、早い段階で鑑定系スキルがきた! やはりプチ断食と瞑想は相性いいんだな』


 早速真理を見通す目を発動する。この世界に向かって。


 その瞬間押し寄せる、情報の津波とも言っても過言ではない、大量の情報、情報、情報。

 しかし、解脱するまで鍛えた精神はその津波に難なく立ち向かい、必要な情報だけを抜き取っていく。


『森の魔法使いは、やはりこの世界の管理者のことか……。』


 俺は、ついに森の魔法使いの居場所を認識する。

 それは、世界の狭間の世界。

 一度認識すると、どうすれば良いのかわかる癖に、認識するまではどうやっても見つけられない狭間の入り口に向かって終焉の光を放つ。

 空間に遍在する時空の断裂を、終焉の光が切り裂く。


 消滅させたものを時空間を越えて消滅される、終焉の光の効果が時空間の断裂にも作用。円環の呪いが、破れる。


 それとともに、時空間を統合していたくびきまで至る、終焉の光。

 世界の終焉は、静かに、そして一瞬であった。


 俺は、自身の魂が解放された事に気がつく間もなく、輪廻転生の中へと還っていった。

 俺を囚えていた世界を道ずれにして。


 完

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