第12話 円環の回 三回目

 意思の混濁が覚めると、腹の下に地面を感じた。

 目を開ける。

 暗い。


『また、ここからか。』


『最後にぶっぱなした終焉の光は…』


 俺は暗いなか、目を凝らして辺りを見回す。 


『やった!ついてる』


 右手の方に樹影が薄くなっている場所がある。俺は急く気を落ち着け、そちらに近づいていく。


 そこには明らかに終焉の光によって森が切り取られた跡があった。

 その跡は左手前方から右手後方にかけて続いている。

 足元の地面が抉れている。

 俺は屈みこみ、抉れている場所の縁に沿ってゆっくりと観察する。


『よし、うまい具合に傾斜がついているぞ』


 地面の抉れは右手の方が深くなっていた。


『左手から右手にかけて終焉の光が進んでいる。左手に行けばすぐに前回の円環の呪いが発動した場所まで行けるな。』

『左手に行き、熊やうさぎの確認に向かうか、もしくは右手に行けば終焉の光の射程がわかる。』


 俺はしばし黙考する。


『まずは左手だ。終焉の光の射程がものすごく長い場合、時間がかかりそうだしな』


 そして俺は左手に向けて歩き始めた。



 黙々と抉れ、道となった終焉の光の跡を歩き続ける。


『森のなかに比べて圧倒的に歩きやすい。足元に気を付けなくて良いのがこんなに楽だなんて。』


『これからもこの繰り返しの世界が続くなら、道を整備していくのもありかな。』


 つらつらとそんなことを考え、無意識に足元の土から時たま頭を覗かせる芋虫をつまみ食いしていた時だった。


 脳内に声が響く。


「条件を達成しました。称号:虫喰いを獲得しました。」

「称号の効果、進化の布石を確認。」

「称号:虫喰いの効果に反映。」

「称号:虫喰いの効果として、「虫への攻撃力強化」を獲得。」


 脳内の声がやむ。


 俺は呆然とその声を聞いていた。『まさか、こんなことで称号が……』


 その後も探索を続ける。しかし、何も他に収穫もないまま円環の理の発動する時刻がやって来てしまった。



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