第13話

 神様が嫉妬深いのは、何も神話世界の話だけではなく、手塚治虫が他の漫画家さんたちに向ける嫉妬には様々な逸話が残っています。

 今でも確認できるものとしては、手塚賞受賞式で荒木飛呂彦に「東北から出てきた有名漫画家はいないから頑張って欲しい」と言って、荒木飛呂彦が「石森章太郎先生が……」と言ったら「あの程度だよね」と言ってしまうとか。(YouTubeにあります)

 更に凄まじいのが水木しげるに対する嫉妬で、水木しげるを抱える「ガロ」に対抗して「COM」を作ってしまうほどです。

 魔夜峰央も、まだデビューしたてで「パタリロ!」も描いてない時に、何かのパーティーの席で手塚治虫と一緒になり、「この人も面白いマンガ描くんですよ」と紹介された時に、手塚治虫は嫉妬心剥き出しの眼をしたと、確か魔夜峰央自身がマンガに描いてました。(すみません、出展忘れました)


 ですが神様が凄いのは、嫉妬心を傑作に昇華させてしまうことです。

 石森(石ノ森)章太郎が「マンガ日本経済入門」で話題になると、日本人商社マンが主役の「グリンゴ」を描いたり、水木しげるが「ゲゲゲの鬼太郎」などでヒットを飛ばしていると、片腕の無い悪党「我王」が主役の「火の鳥 鳳凰編」という大傑作を生み出してしまう。


 また、出版社に喧嘩売ってるとしか思えない事もあります。


「ブッダ」では宗教団体批判、「アドルフに告ぐ」では特高警察批判、「ネオ・ファウスト」では学生運動批判の描写があります。

 これらの掲載誌が、


「ブッダ」=コミック・トム(潮出版社)

「アドルフに告ぐ」=週刊文春(文芸春秋社)

「ネオ・ファウスト」=朝日ジャーナル(朝日新聞社)


 なんですから、まあいい度胸してます。さすが神様だ。

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