元旦生まれのカクヨム育ち♪骨の髄までカクヨムオンリー♪

桝屋千夏

『カタリィノヴェルVSリンドバーグ』

 静まった会場

 大観衆の中、スポットライトに照らされ睨み合う二人のMC。


 カタリィ・ノヴェルとリンドバーグ。


 先攻、リンドバーグ。

 マイクを握り直す。

 後攻、カタリィ・ノヴェル。

 選んだビートは『2番目の切り札はフクロウ/シチュエーションラブコメ』

 水を口に含み、乾いた喉を潤す。


 DJフクロウパイセンが円盤を手慣れた手つきで擦り、新進気鋭のリズムが流れ出す。


 リンドバーグ

「HEY!YO!カタリィ♪

 お前のかったりぃかたりはまぢでつまんねえ。

 すまんねぇって顔してすましてんじゃねぇぞ。

 ぱっと見、男か女かわかんねぇなりして調子こいてんじゃねぇぞ!

 カタリィの話は私には難解なんかい何回なんかい読んでも全然わかんない。

 カタリィ♪はかない、過怠かたいな、はなし

 カタリィ♪かなりぃ♪ヤバいぃ♪ワナビー!!」


 カタリィ

「お前の名前がリンドバ~グ?

 だったらカクヨム、民度下みんどさが~る。

 バーグさん、カタリィのボディブローで心臓吐しんぞうは~く。

 バーグさん、カタリィの超絶flowで腎臓吐じんぞうは~く。

 まぢでそんなレベル。

 レーベルを股にかけるノヴェルスター。

 格が違いすぎる、ヤバすぎるスキル。

 皆さんご存知、カタリィ・ノヴェル。

 身に纏うのは、そう、かたりのベール」


 リンドバーグ

「は?ボディブローぐれぇで心臓なんて吐かねぇよ。

 だいたいお前のflowにビビったことなんて一度足りともねぇよ。

 そんで吐いた唾はぜってぇまねぇ。

 ノーマネーで投稿してるアマチュアをうやまえ!くたばれ!

 4月6日?なんもねぇ、くだらねぇ、しょうもねぇ日に生まれたな、お前!

 私は元旦生まれのカクヨム育ち。

 骨の髄までカクヨムオンリー」


 カタリィ

「元旦生まれのカクヨムそだち。

 悪そな奴はだいたい友達ともだち

 でも友達と思ってたのに裏切られるがオチ。

 誰もお前みたいな女とつるみたいとは思わねぇ。

 1月1日、つまりはeleven。

 ぱきっと折ってやるさ、アルトバイエルン。

 でもお前はいつまでもベンチスタートのイナズマイレブン。

 カタリィは選ばれる、カクヨムのかみ7」



 延長、二回戦。

 先攻、リンドバーグ。

 胸に手を当て小声で呟く。

 後攻、カタリィ。

 選んだビートは『最後の3分間ルール/紙とペンと○○』

 その場で跳び跳ね、震える足を鼓舞する。


 軽快なアップチューンが流れ出す。


 リンドバーグ

「お前の愛読書『化物語ばけものがたり』?

 お前の友達、ものばっかり。

 全員顔が人外じんがいだもん。

 って、え!ちょっと待って!もしかして私のこと友達だとか思っちゃってる?ほんとキモいわ、まぢで心外しんがい

 私別にあんたのこと嫌いじゃない。

 大っ嫌いなだけ、勘違いしないでよね。

 だけど私はあんたのことみとめてる。

 みとめた上で仕留しとめる。射止いとめる」


 カタリィ

「バーグさん、バーグさん、肌綺麗なのに足黒いね。グロいね。

 汚ね。え?黒タイツ履いてんの?

 嘘つけ!人外の肌が露出してるだけだろ。

 そうやって色気でファン獲得しますってか?

 その前に皆さんからBAN差し上げますっわら

 背徳的。つまりインモラル。

 すなわちお前のこと、リンドバーグ。

 恥さらしてこい、フレンドパーク」


 リンドバーグ

「はい、出た。そーやって負けそうになったら女を卑下するちゃちなやり方。

 生き方が薄っぺらい証拠なんじゃないの?

 だからあんたの作品、リアリティーがないの。おわかりぃ?

 カタリィはただのタカリ屋。

 読めばわかるさ?内容ペラペラ過ぎてわかんねぇよ!

 だけど読んだよ。そしてわかった!

 読んでわかった!お前のショボさが!!」


 カタリィ

「ショボくなんてねぇ。ヨボヨボになったらわかるさ。

 お前の経験値けいけんちが低いだけだろ?

 洗面器せんめんきみたいな顔面でよく言うぜ。

 洗面器せんめんきよりもお似合いだぜ、ケツ便器べんき

 お前のその湿気た面見んのも今日で最後さいご

 楽しかったぜ、最高さいこうなサイコ。

 駆け抜けた時代、平成へいせいよ、さよなら。

 そしてバーグさん、永遠えいえんに、さいなら~♪」



 延長、三回戦。

 先攻、カタリィ。

 息を切らしながら髪をかきあげる。

 後攻、リンドバーグ。

 選んだビートは『最高の目覚め、おめでとう/3周年』

 手汗を服で拭き、マイクを握り直す。


 情熱的なジャズの調べが、テクノリミックで耳に蘇る。


 カタリィ

「だいたいお前はいつも説教くせぇ。

 何が言いたいのか全然わかんねぇ。

 お前の作品も同じ。メッセージ性がねぇ。

 伝えたいことが胸に刺さってこねぇ。

 誰かが書いて誰かが読む!!

 誰かが書いて誰かが読む!!!

 それが『カクヨム』なんじゃねぇのかよ!

 それをみんなで作ろうってんじゃねぇのかよ!」


 リンドバーグ

「私が言いたいのは、これからも二人でカクヨムを盛り上げてこって話!

 誰がデビューとか、誰が書籍化とか、誰かと比べても始まんないよ。

 私は私に勝つために、今日も足掻あがく。あらがう。そして『夢』を勝ち取る!

 カタリィだって同じなんでしょ?

 だったらもっと本気でやろうよ!」


 カタリィ

「はい、はい、でました!

 お涙ちょうだい。

 ワンパターンのお前の十八番おはこ

 女の武器を惜しみ無く使うね。

 そーゆーとこだぞ!お前が嫌われる理由。

 そーreason。Fourseason。

 いつだってこの瞬間に命かけてる。

 向かい風に立つライオンが如く。

 これがカタリィの本気のかたりぃ」


 リンドバーグ

「え?本気?その程度?

 その程度しかでないの?まぢ失笑。

 風に立つライオン?笑わせんじゃねぇ!

 お前、曲も映画も全然知らねぇだろ!

 夢半ばで書けなくなった奴とか。

 酷評でやる気なくして消えてった奴とか。

 そういう奴らの気持ち全部背負って立ってんだ!

 お前とは全然本気度がちげーんだよッッ!!!」




 大歓声に包まれた会場。

 スポットライトに照らされ、肩を寄せ合う二人のMC。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

元旦生まれのカクヨム育ち♪骨の髄までカクヨムオンリー♪ 桝屋千夏 @anakawakana

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ