第18話 ネコにご相談

「──ということがありまして」

「ふぅ……ん。やっぱりかにゃん」


 貴紀は昨夜から朝にかけての出来事を、ミリアに嘘偽りなく教えた。

 同じネコとして、ティアの奇行にどういう意味があるのか、それを相談するために話したのだが……。


「やっぱり……? 何か知ってるん──」

「タカにゃん! 敬語になってるにゃん!」

「あっ……や、やっぱりってどいういこと?」

「うんうん♪ そうにゃそうにゃ。敬語なんて堅苦しいのは要らないのにゃん♪」

「いや……満足げに笑ってないで教えてよ。一体ティアはどうなって……」

「嫉妬にゃん」


 嫉妬。

 言われるまでもなく分かっていた貴紀は、盛大に溜息を吐いた。


「それは分かってるんですよ。それで、一体どうして急にそうなったかが聞きたかったんですがね?」

「膨れない膨れないにゃ。単純に雌の匂いに反応したからでしょ?」

「また、それか……」


 貴紀は今までも女子と接したことがある。程度の差はあれ、異性と会話するだけなら日常的な光景だろう。年齢や立場は関係なく。


「そりゃ学校行ったりバイトしてれば……」

「そういう意味じゃないにゃん」


 すぐさま否定された貴紀は、もう訳が分からず混乱しっぱなし状態だ。


「他の雌って言うのは、ようするミリアのことにゃ」

「またどうして……」

「鈍いにゃ〜。ほら、最近のミリアはタカにゃんの側で寄り添ってるでしょう?」

「まぁ、確かに」


 ここ数週間前から、ミリアは執拗に貴紀の側に寄っては撫で撫でを要求する。時には体を擦り付けるように甘えてくる。

 前日に至っては、馬乗りで首筋を舐め回す行為にも発展した事は記憶に新しい。


「ミリアの匂い。ティアにゃんからしたら、他の雌の匂いになるにゃん」

「え、つまり雌って……雌ネコって言う意味だったのか?」

「イエスにゃ! 大好きなタカにゃんが、ミリアに盗られたと思ったんだにゃん♪」


 満面の笑みを浮かべるミリア。

 ティアが何度も擦り寄って来たのは、貴紀にマーキングするため。つまり、未知の雌ネコを牽制するためということ。

 ティア本人は本能的にそれをやっていた。


「つまり諸悪の根源はミリアだったと?」


「人聞きが悪いにゃん! ミリアはただ、タカにゃんに甘えてただけにゃん。昨日のはティアにゃんの匂いが最近濃くて、ちょっと妬いてマーキングしただけで、やましい事は何もしてないにゃん!」


「いやそれが原因だからね!?」


 ティアのおかしな行動は、全てミリアの所為だった。ミリアが甘えに甘えて、遂にマーキングまでするもんだから、ティアの機嫌は最悪な状態になってしまった。

 これ以上はゴメンだと、貴紀はもうマーキングしないよう進言したが……。


「気に入った雄にマーキングして何がイケナイにゃん! ティアにゃんだけなんて、そんなのズルいのにゃっ!」


 との事で、この後も思う存分擦り付けられたのでした……。

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猫耳少女と出会ったんですが、お持ち帰りしてもいいですか? 花林糖 @karintou9221

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