第16話 ハイリスクハイリターン

カキィ


青い予測線を頼りに、ゴブリンの短剣を受け止める。


ぴ・・・


青い予測線が俺を貫く・・・

体をよじり、何とか避け・・・


ヒュッ


俺がいた所を、矢が通り過ぎる。

ゴブリンアーチャーだ。


ゴッ


ゴブリンにクリティカルを叩き込む・・・横に躱しつつ、威力を殺すゴブリン。

く・・・クリティカル線に命中させても尚躱されるか。

まあ、攻撃速度とかの関係で、時間差が発生しているのが理由な気もする。


ザンッ


茜の一撃が、ゴブリンアーチャーの命を奪う。


ガッ


俺は別のゴブリンに斧を振り、気を引きつける。

短剣を持ったゴブリンが立ち直り、俺に向かってくる。


「来いよ」


挑発。

ウォリアーの基本スキルだ。

ゴブリンが俺に突っ込んできて・・・


予測線。


ガッ


盾で受け流し・・・


ガッ


カウンターを叩き込む。


ぴ・・・


新たな予測線・・・これは・・・もう一体のゴブリン。


スッ


後ろにとびすさり、突撃を躱す。


ガッ


頭に斧の一撃を叩き込む。


ザンッ


茜がもう1体の息の根を止め・・・


ゴッ


俺の一撃が、もう1体のゴブリンの命を奪った。

・・・手が痺れるな。


「・・・やった、か・・・」


「先輩・・・おかしいっすよこのダンジョン!低レベルなのに凶悪なトラップとか、レベルの割に敵が強いし!」


「・・・でも、結構経験値が美味しいぞ?」


「そりゃ、経験値の取得は、良い経験をしたかどうか、が大きいっすからね。敵のレベルより、実際の強さが影響が大きい・・・でも、リスクが大きすぎるよ、このダンジョン」


うーむ。


ちなみに、森のダンジョン、は、森の小道を進む。

一瞬、フィールドっぽくどこまでもいけるかと思ったが、見えない壁が続いていて、小道以外の場所にはいけなくなっている。

ライトが無くても明るいから、その点は楽だ。


ごとり


敵の死体が消え、宝箱が落ちる。


「初級ダンジョンで、鉄の宝箱・・・うそ・・・」


茜が驚きの声を上げる。


「良い物なのか?」


「木の宝箱、鉄の宝箱、銀の宝箱、金の宝箱・・・その上もあるけど・・・順に良い物になるっすね。木の宝箱も、普通は適正レベル20くらいでようやく・・・ハイリスクハイリターンなダンジョンっすね」


やはり難易度狂気、は、狂気なのか・・・?


「開けるっすよ・・・」


解錠はスカウトの仕事だ。

やっぱり、茜はスカウトなんだろうな。

罠も解除してたし。


・・・?!


嫌な予感がして、茜を突き飛ばす。

続いて、箱から無数の棘が飛ぶ。

何とか回避が間に合ったが・・・少し刺さり、肉が抉られている。


「だ、大丈夫っすか、先輩」


茜がポーションを使ってくれ、俺の傷が塞がった。


「解錠失敗・・・か?」


「・・・レベル9のスカウトに何を期待してるっすか・・・?宝箱に危険はつきものっす」


解錠に失敗すると中身が得られないのか、もとから空なのか。

宝箱の中には何も入っていない。


「・・・やっぱり、私にはディガーがあってるっす・・・採掘ポイントなら、確実に手に入るっす」


「まあ、練習すればきっと・・・?」


俺は、茜の頭をぽんぽん、と撫でた。


--


ガラガラ・・・


蟻塚を崩すと、中からアイテムが。

良かった、蟻の魔物が大量に出たらどうしようかと思った。


「鉄のインゴットが2、銅のインゴットが4、銀のインゴットが1・・・あとは剣が1個と・・・あ、バックユニットっすよ。先輩どうぞっす」


「えらくたくさん出たな」


「上級ダンジョンの採掘ポイントだと良くあるんすけどね。初級だと1つしかでない筈なんすけど・・・」


茜が小首を傾げる。

やはりハイリスクハイリターンか。


バックユニットは、花柄の可愛い奴・・・見た目を外して使う。

インゴットスロットが無い代わりに、ジュエルスロットが20あるな。


「見た目外したんすかあ?」


「当然だろ」


花柄背負えるか。


「バックユニットやエアタンクは、インゴットスロットでの強化はできないっす。ジュエルスロットにジュエルをセットする事で性能は強化されるっすが・・・一部スキルを除いて、スキル自体は反映されないっす。スキル無しの屑ジュエルでも効果があるので、そっちをセットする事が多いっすね」


なるほど。

まあインゴットで強化するイメージじゃないよな。


「銀のインゴットもどうぞっす」


「有り難う」


さっそく斧にセット。


「リターンは大きいけど・・・やっぱり私はディガーっすね。低い難易度のダンジョンを、ぼーっと探索するのが性に合ってるっす」


「・・・いや、これまでにないくらい、生き生きしているように見えるが・・・」


水を得た魚というか。


「気のせいっす」


っすかねえ。

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