第5話:陸の王者

第5話:アバンタイトル

 首都攻略部隊の全滅から三日後、火星革命戦線が借り受けている格納庫では、急ピッチで巨大なメカの組み立てが行われていた。


「チーバ、これが新しい巨人なのか?」


 イスハークは組み立てられている重機を見ながらサトシに尋ねる。


「ああ、そうだ」


 眼鏡を光らせて、サトシはうなずく。


「お前、あの制御コアは一つしかないって言ってなかったか?」


 イスハークは訝しげな視線をサトシに送った。


「…いや、手元にあるのは一つだとは言ったが、複数存在しないとは言ってない」


「なら、もう何個か手に入れられないのか? 巨人が複数在れば、火星の制圧なんて楽勝だぞ」


「イスハーク、過ぎた力は身を滅ぼすのだ。チャンがどうなったか知っているのか」


「まあ、そうだが。俺たちには戦力が足りないんだ」


「企業からロボット兵器を譲ってもらったはずだが?」


「そりゃ警備に使えるが、受付嬢の代わりも可能な奴だぜ。マネキンだよあれは」


 イスハークが視線を送った先には、受付嬢よろしく着飾ったロボット兵器…いやアンドロイドが立っていた。皆スタイルの良い絶世の美女揃いで、人目ではロボットは見分けが付かない容姿である。革命軍の男性兵士もロボットと分かっていながら、その姿を見に来る者が後を絶たなかった。


「…そうか。もっとましな兵器を寄越すように連中企業に言うべきだな」


 しかしそんな美女に対して、サトシは興味はなく、視線を再び組み立てられている巨人に向ける。


「今度は誰に操縦させるんだ? チャンの二の舞はごめんだぜ」


「人選は済ませてある」


 サトシが振り向くと、そこにはパイロットスーツを着込んだ人影が立っていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る