半神に愛された者

有り得ない事だと思うけれど、仮に起きたとして。


例えば、今までを大きな不幸に見舞われる事も無く、比較的平凡に普通に過ごしてきた高校生がある事件に巻き込まれるとして。


例えば、ある高校の校舎に毒ガスが蔓延するとして。


貴方が巻き込まれた高校生の内の一人だとして。

当然、貴方はそこで死んでしまう。




けれど貴方だけが記憶を保持したまま、何度も巻き込まれて死んでしまっていたとしたら。


貴方は、どうなるのだろう。

どうするのだろう。


そう言う、たられば話。

貴方なら、答えられるかしら。





貴方自身が何度も死んでしまう世界。

そんな所で貴方が正気を保つ方法は、無かった。

求められたのは、何にも揺らがない強さと冷静な貴方の心の強さだった。

貴方は何度も死に、何度も甦っては泣き叫び神に許しを乞う。


神は貴方の境遇を憐れみ、涙を流すだろう。

けれど、神の涙を貴方が受け取る事は無い。

貴方は、半神に愛されてしまったから。

例え、貴方が半神の存在を知らないとしても。

貴方は半神の存在を知らないが故に想いを拒絶し、応える事はない。

貴方が愛してくれない、愛を返してはくれないと知った半神は貴方を許さない。


半神は人間と神の血が半分の存在だった。





例えば、貴方が通うある高校に毒ガスが蔓延しなかった代わりにテロが発生したとして。


貴方はそこの高校に通う一生徒で。

それは今までが幸運だったのだとでも言うような日になる。

けれど、貴方が死ぬかどうかはその時の行動次第で。

そんな時も、貴方はかつて毒ガスで何度も死んでいた記憶を保持していたとしたら。


貴方はどうするのだろう。

どう、なるのだろう。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

小説になりきれなかった物語たち 白猫のかぎしっぽ @leis

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ