第9話 傭兵の街へ

 涙がまだ止まんない。


 東門を出た所で、サラさんやトムさん、大勢の人々が、ずっといつまでも、手を振って見送ってくれてたよ。

(ヒック·····何なんだよ、たかがゲームのNPCのくせに、ヒック、マゴン討伐クリアしたら、二度と会うことも無いのに·····)


「うっヒック、サラさん·····」



 ロバ任せで、ぼーっとして走ってた、盗賊や山賊が出るはず無いけど、少し気を引き締めよう!!


 太陽は、中天に差し掛かっています。

 ミネルバロードに食事のシーンは、全く無かった。

 ミアの、このアバターも、食事は必要無いはずなんだけど·····泣き疲れて、お腹がすいちゃったよ。

 ミューは兎も角、パイはいつもお腹減らしてる。


「ミュー、パイ、ここで食事休憩するよ!」

「「はーい!!」」

 開けた、広場、野宿用の場所でしょう。

 湧水があり、石を積んだ、かまどもあります。

 金具を外し、ロバを水飲み場まで引いて来て、自由にさせます。

 勝手に草を、ハミハミモシャモシャするでしょう。

 商店街の人が、一日一度塩を舐めさせるよう言ってたけど、今は良いでしょう。


 枯木を集めパイに火をつけてもらい、やかんでお茶を作りました。

 街道から外れない限り、魔物は襲ってきません。

 の、はずなんだけど·····ミューとパイがグラスドッグに囲まれてる!!

「あっ、そうか!トイレのため草むらに入ったのか!!」

 5匹のグラスドッグを、難なく倒しGと丸薬を持って、二人が帰って来ました。



 サラさんが持たせてくれた、大きなサンドイッチをホウバリます。

 パイには3枚渡しておきました。

 餞別も含め、二人の働きで10万G以上手元にあります。

 少々パイが大食いしても、傭兵の街は余裕で過ごせる??でもパイみたいな獣人が、7人に増えたら、食費も大変な事になるかも。


「ねぇみんな、ここでこのまま夜営する?お昼少し過ぎた位だから、もう少し先に進む?」

「「先に進みましょう!!」」

「こんな良い場所が、また有るかわからないよ?」

「ミア、傭兵の街に、仲間が居るかも知れないんでしょ?」

「早く行くべき!!」

「わかった!じゃぁ先を急ぐよ」


 ロバ、雌なのでロバンナって名前つけちゃった、荷馬車に固定して、御者席につきます。

「みんな、出発するよ!!」

「ミア御者代わろうか?」

「大丈夫、でも明日はお願い」「「ん、わかった」」

 外に出ると、帽子被りっぱなしになるので、くつろげないでしょう。


 旅人を何人か追い抜いて行きます、疲れているのか、皆、羨ましそうな視線を向けて来ます。

「ミュー、パイ帽子を被って!!」

 母と娘か、幼い子供を背負った女がこっちを見てる、娘はぐったりしてる。

 知らん顔出来ないよ!!


 横に止めて。


「娘さん病気なの?街まで乗りますか?」

「お願いしても良いかしら?この子熱があるみたいで·····」

「中は狭いけど、子供が寝る位の場所は有ります、乗って!!」

「有り難う!どうしようか困ってたの、助かったわ!!」

「ミュー、パイわるいけど、御者席に代わって!!」「ミア、わかった!」


 クッションの敷き藁を寄せ集め、私の保温マントを被せ、幼女を寝かせる、余ったマントを幼女に掛ける。

 額に触ると確かに熱が有る様子、手拭いを濡らし額にのせる。

 カップのお茶に麦藁のストローを差し入れ、指で上を塞ぎ、溜まったお茶を幼女の口に、少しずつ注ぐ。


 コクリと美味しそうに幼女が飲み干す。

「有り難う、ミアさん看病手馴れてるのね!!」

「この様子だと、出発しても大丈夫そうね、ミュー出発ゆっくり進めて!」

「はーいミア!」


 親子は傭兵の街に住んで居るそうで、母親がミラさんで、幼女がミーシャと教えてくれた。

 二人はスクルド神殿からの帰りだそうです。


(そう言えばゲームでは、スクルド神殿に行って、魔法が使える巫女を仲間にしたっけ)


 ミューにパイ私の3人でパーティー枠は一杯、後は傭兵5人を加え計8人が仲間枠、余分なメンバー入る余地は無い。


 ゆっくり進めて居たため、街まで後1日半といった所で日が暮れて来た。

「ミュー、夜営出来そうな場所を、見付けたら止まって!」

「ミアこのままユックリ夜通し走っちゃダメ?」

「ロバンナ休ませてあげないと、夜通しはダメよ、それに夕食も取らないと」

「ミューお腹すいたよぅ」


 と、言うことで、川原で夜営する事になりました。

 取り合えずロバンナを解放、一掴みの塩を舐めさせる。

 後は勝手に草を食べ、水も飲んでる、ロバンナって意外と手がかからない。


 石を組んでかまどを作り、鍋に水と豆、干し肉を削って入れ、一緒に煮込む。

 豆は夕食にと思い、水にかして居たので、30分煮込むと指で摘まんだら、潰れる位柔らかくなりました。

 干し肉は、保存のためか塩味がちょっと濃い目だけど、ハーブが利いて美味しい。

 煮込み料理には持ってこいだわ。

 もう少し煮込んで水分飛ばすと、確りとした味になるんだけど、パイが腹ペコ限界みたい、お塩少々足して「うん!美味しい!!」


「みんな、出来たよ!食べよう!!」「「待ってました!!」」

 ミラさんがミーシャを抱いて荷馬車から降りてきた。

「ミーシャちゃんご飯食べれそう?」

「ミアさんのお陰で、熱も下がって、お腹がすいたって言う位、元気になりました、本当にありがとうね!!」


 豆と肉のごった煮、器によそおい、皆に配る、サラさんが大量に焼いてくれたパンも配って、いただきます。

「「この煮豆美味しい!!」」

「うん、思った以上に美味しく出来た」

「お姉ちゃん、美味しい!!!」

「ミーシャちゃん沢山食べてね!」


 遠慮する、ミラさんとミーシャちゃんは、荷馬車で寝てもらい、私はロバンナなのお腹、ミューとパイは逞しい!石ころでゴツゴツしてるのに、平気で爆睡してる。


「あははっ失敗!フラグ立ってたみたい·····」

 魔物は出ないけど、盗賊は出るんだ?

 失敗しちゃった·····。

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