妨げるもの

繰り返す原因不明の発熱

 息子は、劇的と言っていい成果を見せてくれていました。そのまま毎日、リハビリを行うことが出来れば、更なるADL拡充に繋げる事も出来たとは思いますが、なかなかすんなりとは行かないものです。入院から1ヶ月くらいの頃によくあったのが、原因不明の発熱でした。この為、日々のリハビリメニューをこなせない日もありました。


 原因は幾つか考えられました。ひとつには免疫力の低さ。抗がん剤治療は終了し、免疫力の回復期も当然過ぎていましたが、4コース約4か月に渡る治療後の息子の身体の免疫力は、日常生活をするには事欠かないものの、常人から比べれば圧倒的に低い状態で、まだまだ注意が必要でした。また、もうひとつの原因と考えられたのが、下肢麻痺による発汗不足でした。息子の場合は動かす事が出来ない麻痺の他にも、寒い暑いを感じないという麻痺もありました。この為、暑さを感じにくい胸より下の皮膚で汗をかきづらい状態になり、全身の体温が籠り、体温を上げてしまう、という、日常生活を送る上では、少々厄介な症状を抱えてもいたのです。これに関しては汗の代わりに霧吹き等で水分を吹き掛け、放熱を促す他なく、胸より上で暑い、と感じたら、自分で吹き掛けられる様に、息子はこの頃から常に小さい霧吹きを身に付けるようになりました。自分で感じて、自分で慣れて、自分で管理する方法を覚えて、今後の長い人生を自ら生きていく為の方法を、息子には身に付けて貰わなければなりませんでした。


 原因不明の発熱は何度かあり、その度、新しい薬が出されたり、時には緊急で注射を打たれたり、と念入りな対応をして頂きました。主病が主病なので、注意深く見守っていきます、との説明もありました。とはいえ、その都度リハビリを中断せざるを得ず、なかなか思い通りには進みませんでした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る