第48話 一緒に……くれないかな?

「アアァッ…」

 ボロボロと涙を流して泣く優香さんの体を立ちながら抱きしめた。

 僕は何も言わずに頭を時々撫でてあげる。

 僕は不思議と現実を早い段階で受け止めていた。


 僕と優香さんが見たもの。

 妊娠検査薬は陽性をはっきりと報せていた。


 優香さんのお腹のなかには慶太の子供がいる。

 琴美よりも早く優香さんの妊娠がきちんと分かっていたら慶太は優香さんと結婚していたのかもしれない。


「智史くん…ごめんっ。…ウゥッ…ごめんなさい」

「僕と出会う前じゃないか。仕方ないよ」

 まだ嗚咽まじりの優香さんを抱きしめたままに天井を仰いだ。


 しばらくは黙ったまま二人で抱きあっていた。



 腕のなかの優香さんが僕の顔を見上げた。

「ねえ。智史くん。一緒に死んでくれないかな?」

 背筋がゾクリとした。

 抱きしめた優香さんの声音に本気を感じていた。

 冷たい氷を抱いている気がした。

「良いですよ」

 僕は笑って答えていた。


 優香さんがそうしたいなら。

 良いよ。

 だって僕は一緒にいたいから。


 僕は元々さ鎌倉に来たのだって琴美と慶太の関係に絶望して心が死んでしまっていたから。

 琴美への愛を葬り去りに旅に出てここに来たんだ。


「僕と生きることより僕と死ぬことをあなたが望むなら、僕はあなたのために死ぬよ。

 一緒にいたいからさ」


 僕は優香さんの唇に自分の唇を重ねた。


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