第47話 僕と優香さんと妊娠検査薬
ボーッと妊娠検査薬を眺めていた。
琴美には見せてもらってはいなかったから初めてマジマジと見た。
大型スーパーにだってドラッグストアにだって置いてあるとは思うけど僕にはずっと縁がなかった。
つい最近までは。
この小さな箱一つで命が宿っているか分かる。
この検査の結果一つで一喜一憂すんだな。
僕は決心した。
結果がもしどんな風であっても。
それは優香さんと話し合っても変わらない気がした。
どう切り出すか。
この見つけてしまった妊娠検査薬はしまっておくべきか。
僕は気が抜け始めた炭酸水をグイッと飲んだら、まだ少しシュワッと喉の奥で弾けていた。
部屋の周りを見渡して僕は自分の顔が鏡に映ったのを見た。
琴美に逃げられたばかりの頃よりは瞳に光を感じた。
自分の顔つきが悪くない気がした。
鎌倉に向かいただ憔悴しきっていた数日前よりは生きている実感がした。
僕の腕時計の針は午後1時半をさし示していた。
優香さんが戻って来た。
僕は話を切り出した。
責めはしない。
僕は優香さんを決してなじったりもしないし、突き放す気もない。
優香さんは泣きそうな顔をしていたが僕は優しくなだめて。
抱きしめた。
優香さんは意を決したように妊娠検査薬を使った。
優香さんが向き合えなかった現実に僕は背中を押していた。
そして結果が出た。
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