第49話 初めて一つになる日

 僕は優香さんの体を壁に押しつけながら優しく跡をつけるように口づけを施していく。

 熱くとろけるような心地よさに身を投じていく。


 どうせ一緒に死ぬんだったら快楽に溺れたあとでも良いじゃないか。


 男と女が好きあって抱きしめあって一つになって。

 大昔からそうして子供を授かり命を繋いでいく。


 僕と優香さんは大人だし好き合っているんだ。


 今はこの気持ちの良い抱き合いに夢中になりたい。

 優香さんの心地よさ気な顔と漏らす吐息に僕は興奮していく。


 ゆっくりと優香さんを座らせてキスを何度も交わしながら、やがて優香さんを寝かせて僕は優香さんの体の横に寄り添うようにして抱きしめる。

 

 優香さんの服を一枚一枚脱がしながらあらわになった彼女の胸を掴み握ってはキスした。

 僕も服を脱いで優香さんと裸同士になった肌を擦り合わせて密着すればするほど気持ちがいい。


 昼の明るい宿の部屋で隠しもしない優香さんの肌は白く艶めいて透きとおりそうで美しかった。

 

 しっとりと優香さんの肌が汗ばんでくる。彼女の首筋や腰やあらゆるところに僕は口づけては反応を楽しんだ。


 琴美ともずいぶん抱き合っていなかったから女の人との触れ合う体の心地よさを忘れかけていた。


 まだ優香さんのなかに僕はいれないで最後に聞いた。

 妊娠している女性に激しい行為はすべきじゃないだろうと思った。

 僕はゆっくりと上半身を起こして座って壁に背中を寄りかかる。優香さんを僕の上に座らせて正面から抱いた。


 優香さんの耳元に囁く。

 どうか彼女の心に響きますようにと願いながら。

「優香さん。残りの時間を僕にくれないか? そのお腹の子を僕の子として一緒に育てるって選択肢も考えてみてよ」

 それは実は優香さんが部屋に帰って来る前に決心していたことだった。


「私が慶太の子を産んで智史くんと育てるの?」

「そう。…死ぬなんて駄目だ。赤ちゃんは生きたがってるんじゃないのかい?」

 僕はそう言って優香さんの肩を軽く噛んだ。

「あっ…ん。……気持ちが変わらなかったら?」

「その時は一緒に終わらせよう」

 優香さんは僕の唇をふさいで下唇を軽く噛んできた。

 僕は興奮しきって我慢できなくなっていた。

「優香さんのなかに…いれても良いかな?」

「…うん」

 優香さんが僕を受け入れてゆっくりと僕は優香さんのなかに沈みゆく。


 僕の一部分を優香さんが包み込み締め付けられる圧倒的な気持ちよさに心震えながら僕は優香さんのなかで果てた。


 初めてだった。

 こんな気持ちの良い愛撫は。


 どこか儀式のような型にはまった行為ではなくて思うがままに快楽を貪り合っている。


 最高に気持ちが良い。

 何度も優香さんのなかで果てた僕は優香さんを抱きしめながら感動していた。

 僕がこんなに欲望が丸出しになっても優香さんは受け入れてくれる。

 心は開放されていた。

 優香さんは僕の体も心も受け入れてくれる。

 僕はもう優香さんを離すまいと思った。

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