第3話泰代と別れた

裕文は、阿倍野筋の『ユゴー書店』の前で、ぱったりと赤井雪子と出会った。

裕文が、中学校のときに、好きだった子だった。


「あら、こんにちは」

「お久しぶり」

「その後、お変わりない」

「まあ、そうね」

二人とも、一人だった。


「ちょっと、話しをしようか」

「そうね」


「高校生活はどう」

「何も無しね。女子高はダメね。男が居ないわ。松田君は共学でいいわね」

「まあね」


「まあねってことは、彼女が居るってことね。いいわね。うらやましい」

「居ないよ、ホントに」

「じゃあ、付き合おうか」

「ああ、付き合おうぜ」


こうして、二人は、付き合いだした。

セーラー服でデートするのは、目立つので、日曜日にだけ、私服でデートした。


阿倍野近鉄フープス、阿倍野セントラルビル、天王寺ミオでデートした。

裕文は、いつか雪子に心魅かれて行った。

泰代を、ないがしろにするように、なった。


高校の屋上で

「ねえ、裕文、この頃冷たいわね」

「そんな事ないよ」

「あるわよ、おかしいわ。女でもできたんじゃない。それなら、そうと、言ってちょうだい」


「そんなわけないよ」

「それとも、倦怠期。それとも、相性が悪いの」

「たとえ、女ができたって、別れるものですか。捨てられてたまるか」


裕文が、雪子と、手をつないで『ユゴー書店』の前を歩いていたら、泰代に会った。

「おやっ」

「まあ」

「裕文は私のものよ」

「いいえ私のものよ」


取っ組み合いのけんかになった。

「二人とも、落ち着けよ」

「もとわと言えば、あなたが悪いんでしょう」


喫茶店『田園』で、三人で話し合った。

「あなたは、いつから、裕文と付き合っているのよ」

「6月からだけど」


「私の方が古い。私は4月から付き合っているわ」

「そんなの、古い、新しいの問題じゃないでしょう。裕文が、どちらを愛しているかよ」


「裕文は、どうなの」


「俺は、雪子さんを愛している」


「私は、あきらめないわ。何があったって、あきらめないわ」

「裕文、覚えていなさい。絶対にあきらめないから」

泰代は出て行った。


裕文は、インターネットを、『男と女の別れる方法』で検索した。

一番いいのは、相手から別れ話を言い出すように、しむけることだ。そうだ。

そのためには、別れたいと、はっきり宣告すること。つぎに、優しくすることだそうだ。


「泰代ちゃん、良く考えたのだけど、どうしても、雪子さんが忘れられない。悪いけど、別れてくれ」

「嫌よ、絶対に別れないわ」


「泰代ちゃん、USJは、楽しかったね、とても楽しい思い出をありがとう」

「泰代ちゃんが、心配だ。大丈夫かい」

「泰代ちゃん、元気を出してね。泰代ちゃんなら、きっと新しい恋人が見つかるよ」


「わかったわ、別れてあげる。新しい恋人を見つけるわ」

泰代が、別れてくれた。


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