出逢った後に 8
生きていたい
わたしのこころの叫びに、勇気づけるように囃す声。
──なら叫びなさいな
──もっと、しっかり、はっきりと
わたしは、生きていたい……!
──もっと強く!
わたし、生きたい!
──はっきりと!
生きたいよ!
耳元で、誰かがわたしを呼んでるような気がする。
《……なかざと!》
たしかに誰かが呼んでる──
《なかざと!》
宮崎くんだ……
《──中里っ!!》
宮崎くん!
わたしは必死で彼の面影をさがし求める。
暗い暗い視界の中を、彼の声の先にある姿を求めて。
宮崎くん、どこ……
不安になったわたしの視界の先で、光が差した。
また声がした。
視界の中で光はどんどん強くなっていき、その余りの強さにわたしの目が霞む。
霞んだ視界の先に、彼が見えた。
いつも伏し目がちな彼が、いまは真っ直ぐな目線でわたしを見ている。
大きく腕を差し出すように、わたしに向かって伸ばしている。
わたしも、必死に腕を伸ばす。
やっと指が触れた……と、その指がしっかりと絡められ──
彼は、わたしの手を引いて、引っ張り上げた。
わたしの視界の中は光に溢れていて、霞む目にはもう何も見えなくなった……・。
目が開いて、そこが病院の中なのはすぐわかった──。
おばあちゃんがいる。……ただいま。いま戻りました。
それから、美緒……ああ、やっぱり美緒の目は綺麗だ。
一番最後に、ずっと手を握ってくれてた手を握り返す──
「宮崎くん……わたし、帰ってきたよ……」
「ああ……ああ……」
声にならない返事の彼の、そんな彼の目に視線を向ける──。
ああ、やっぱり、美緒に似てるんだ……
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