出逢ったから… 6

 陽が落ちる前に三条通りの宿の前に辿り着くと、そこに学級委員長──須藤亜希子の姿があった。

 旅館の玄関の先で、制服姿で真っ直ぐに立つ彼女の姿を見て、良樹は、携帯の電源をOFFにしっぱなしだったのを思い出す。


 亜希子はそんな良樹にもう気付いていて、良樹が近寄ってくるのを待って、眉をつり上げるようにして声をあげた。


「宮! あんた、何の連絡もなしに、いったいぜんたいどーいうつもりよ!?」


 真っ直ぐに良樹を見て云う。

 彼女のその剣幕に気後れした良樹が、どう応えようかと思案する。

 さすがにここで本当のことなんて言えない。──が、本当のことを言わないと、須藤は決して納得しないような、そんな気はした。

 でも結局、口から出たのは苦し紛れの小さな声音。


「悪い……その……羽目、外してた……」


 はぁ? と亜希子の顔が呆れる。


「……羽目、って、ちょっ──」


 爆発するほんの数歩手前、という感じの声の質感に、良樹は首をすくめた。

 駅に近い往来の中、周囲には集合時間に遅れたグループの姿もあって、バツが悪い……。


「ま、いいわ……」 ようやく、といった感じに大きく息を吐いて、亜希子は視線を外した。「──伊東先生のトコ、行くよっ」


 肩を怒らすようにして玄関へと先導していく。

 良樹は黙ってそれについていった。



 良樹が副担任の黒江の指導──〝お小言〟から解放されたのは、夕食の時間も半ばを過ぎる頃だった。

 担任の伊東は、最初に通り一編の説教をした後、グループのメンバー──とりわけ須藤亜希子にはちゃんと謝っておくよう云って、後はもう何も云わなかった。


 須藤は、良樹が携帯の電源を切って音信不通を決め込んだ後も、学校側にいろいろ連絡をしてくれていて、予定の経路の途中途中では、良樹が合流しやすいよう計画通りの時間で進行するよう努めてくれてたらしい。


 ──こりゃ頭、上がらんなぁ……。


 申し訳ないと思いつつ、夕食会場として提供されている宴会場へ入る。


 学年はAからHの8クラス、生徒だけで350名以上の大所帯による夕食は、旅先というロケーションと修学旅行という非日常の一コマという興奮からの喧噪に満ちている。


 良樹はさして目立つこともなく会場内へと入れた。自分の卓へと移動しな、広い会場内に目線をやって中里宏枝の姿を捜してみたが、彼女の姿は見つけられなかった。その代わりに須藤と一瞬目が合った。ついとその視線を外されてしまい、良樹はバツの悪い思いで卓についた。


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