第20話 命の恩人

拙者とカミツレはエルフの里を目指し主殿と別れ先行することになった。



拙者の大恩あるあの方の里を襲う不届きものを許しては置けないでござる。



そう思うと沸々と拙者の中の怒りが込み上げてきた。



如何な卑劣漢だろうと拙者は絶対に負けないでござる。アリシア殿、お待ち下され!




やがて里の近くへと到着した。いつ見てもここの風景は良いでござる。っとあれは!



「カミツレ、拙者が先に行くのでここで待っていて欲しいでござる。五分で戻らなければカミツレも里に入ってくれでござる」



「えー?オレも暴れたい!」



「頼むでござる!むぅ……仕方ない、今夜主殿と合流したら添い寝の順番を譲るでござるよ…」



「いってらっしゃーい」



あまり使いたくなかった切り札を拙者は切ってしまった…無念…



カミツレの気の抜けた送り出しの声に頭を抱えつつ拙者は里へと侵入する。里の中には熊型の魔物…クレセントベアが二十体以上か。



里の一番大きな屋敷には三つの反応が気配察知に掛かった。ふむ…この探知スキル、中々使えるでござる。拙者の記憶が正しければ、多分あそこにアリシア殿がおるに違いない。



分裂のスキルを使い拙者は四つに身を分ける。強さも四分割だがクレセントベアごときならこの程度でも余裕でござる。行け、分裂体一号、二号、三号!さながら主殿の記憶共有で見た戦隊ひーろーとかいうものでござるな。平和を守って悪と闘う。うむ、良いではござらんか。



さて、拙者も行くとするか。突貫でござる!



「アリシア殿!アリシア殿はおらんか?!」



「だ…誰?」



「おお、アリシア殿無事でござったか!今ここから助けるので暫しお待ちを。拙者の事はその時話すでござる!」



屋敷の中に入った拙者は大声でその名を叫んだ。か細い声で誰何の声を聞き付けすぐに魔族をその視界に捉えた。



くくく、名も名乗らず助けるというのも中々粋でござるな。戦隊ひーろーとはよい文明でござる。


魔族は目を血走らせ此方を睨み付ける。拙者はライトソードを発動し、静かに構える。



「誰だ、てめえは?」



「生憎、悪党に名乗る名は持ち合わせてござらん。知りたければ拙者を倒してみせよ!」



決まった!くぅー、一度は行ってみたかったのでござる!



「クソ、何で発動しねえんだ?エラーだと?まぁいい…そうかよ、じゃあボコボコに伸してやんよ」



「フッ、出来るものならやってみよ、伊座…勝負!」



妙な事を言っていたがどうでもいいでござる。魔族が駆け出すタイミングに合わせ拙者も走り出す。右から拳を振り抜いてくるが敢えて左手で受け止め魔族の右手をライトソードで切りつける。驚く程に簡単に切れた自らの右手が目に入ったのか魔族は悲鳴を上げる。



「うぎゃあぁぁぁ!お、俺の右腕がぁぁぁ、いてぇ…!いてぇよぉ!」



「ふっ、動きが遅すぎて蚊に刺されたかと思ったでござる。」



「てめえ…この野郎…!」



頭に血が上ったのか単調な動きしかしない魔族を追い詰め心臓にライトソードを突き立てる。



「積み…でござる。これ以上無駄な足掻きは止されよ」



「クソォッ…クソが!意味わかんねえよ…目覚めたら知らない場所に立ってて…こんな変な格好になってるし…腹が減ったから…住む場所欲しかったからちょっと襲っただけじゃねえか……なのに、なのにこんな扱いあんまりだろォォ」



魔族は追いつめられおかしくなったのか、狂った様に喚きだした。ふむ、どうするべきか…とりあえず眠らせておこう。首に手刀を入れ気絶させると丁度カミツレが屋敷に入ってきた。分裂体も既に役目を終え戻ってきている。



「ブルース、終わった?」



「丁度今、終わったでござる。拙者はそちらの方に用がある上、少しだけそいつを見張ってて欲しいでござる。」



「わかったー」



「かたじけない、すぐに戻るでござる」



拙者はアリシア殿へと近付く。アリシア殿は目元に涙を溜め拙者を見つめていた。



「あ、貴方は…?」



「いつぞやは助けて貰ってかたじけない。義によって助太刀に参った。」



「私が…貴方を助けた…?」



アリシア殿は混乱しているのか、おぼつかない口ぶりだ。まぁ、容姿が変わってしまったから仕方ない…か。



「そうでござる。ふぅ…、三百年前この里の近くに居た拙者に食べ物を分けてくれたではござらんか。まぁ、あの時は今ほど立派な体型はしてなかったでござるが…」



懐かしいでござるな…武者修行をしていた拙者は修業に邁進し過ぎて何も食べず、川辺で空腹と傷だらけで倒れていた拙者を助けてくれたのがアリシア殿だった。。。



「三百年前…川辺…ハッ!もしかしてあの時のスライム?」



「うむ、今は主殿からブルースという立派な名前を頂いた。いつか礼をと思っていたでござる。あの時は本当に助かったでござる!」



「ブルース…ね。ううん、私は偶々彼処に通り掛かっただけで貴方を助けたのは偶然よ。それにあの時は私も幼くてうろ覚えで…」



「その偶々通り掛かった時に助けられたから今この命があるのでござる。…借りは返せただろうか?」




「勿論よ…!有難う、ブルースちゃん!貴方のおかげで里が救われたわ!」



「礼なら救援に出たエルフの兄妹にするでござる。今夜には里に着くであろう。」



「ええ、そうするわ。でも貴方にもお礼がしたいの!」



「むぅ…困ったでござるな…ならば、拙者の主殿に力を貸して欲しいでござる」



「貴方の主…テイマーなのね?」



「うむ、詳しくは主殿が来てから話すでござる」



「ええ、そうしましょう」



よし、何とか話を纏められたでござる。主殿、拙者頑張ったでござるぞ!後で頭なでなで三十分を要求しようと拙者は心に誓った。


後書き


今話、戦闘後ブルースのステータスを記載します。




名前 ブルース


種族 ヒューマスライム《固有種・独自進化》 メス


年齢 342歳


レベル 245(1UP)



職業 従魔 侍



称号 《知恵の泉を授かりし者》《抹殺者》《森の掃除屋》《忠スラブル公》《説得(物理)》




能力


物理攻撃力 2500


物理防御力 7200


魔法攻撃力 6900


魔法防御力 2000


敏捷 2050


運 5500



所持品 川の清水 オーク肉 乾燥野菜 木材 四人用天幕 熊の毛皮×14枚



所持金 20000ゴルド(クレセントベア ドロップ品) 



魔法 水属性魔法 空間魔法 光魔法



スキル 人化 硬化 伸縮自在 液化 気配察知 分身(分裂が強化)



主 ソラト・ユウキ


仲間 カミツレ セレナ・クッコローゼ



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転移大学生のダンジョン冒険記~拳一つでフルボッコだドン~ 如月 燐夜 @RINYAKISARAGI

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