第14話 カミツレ

セレナさんにパンや調味料などを分けて貰い久々にまともな食事を取ってご満悦な俺とブルースは早速セレナさんから情報を集める事にした。



コボルト達も大喜びでオークの肉をがつがつ食べていた。



セレナさんから得た情報は大体はブルースから集めた情報と一致していたので一安心。雑談を交えながら人族の生活や文化などを教えてもらった。



「へぇー。俺は別の国から渡ってきたので参考になります。セレナさんと話してると面白いなぁ」



単純に浮かんだ感想を述べるとセレナさんは顔を逸らしてこう言った。



「ふ、ふん!まぁ、そうだろうな。私と直に話せる事を光栄に思うと良い。そ、そんなことよりソラト殿とそのブルースと言ったか、二人の事が私は知りたい。話してくれるか?」



なにこれぇ…?ツンデレ?ツンデレなのか?でもまだデレがないよぉ…俺の勘違い?まぁ、いいや。



「俺はさっき話した通り別の場所からやって来ました。ここより遥か遠くの島国ですよ。ブルースとは旅の途中で知り合いました。」



少し少しセレナさんに俺は日本の話を始めた。この人、態度は偉ぶってるけど、優しくて信用が置けそうだ。



普通の学生だったこと。


もう帰れないかもしれないこと。


気付いたら草原に立っていたこと。


国の名前は伏せ、文化をぽつぽつ語りだす。ブルースは記憶を共有してるためか黙って頷いている。



セレナさんは驚きの表情を浮かべながらも時折相槌をして黙って聞いてくれた。




「ソラトさ…ソラト殿がどんな境遇で有ったとしても私の命を救ってくれたことには変わりない、これからも宜しく頼む。」



そう言ってセレナさんは微笑んでいた。思わずその美人すぎる笑顔にドキッとしてしまった。あ、そうだ。



「ブルース、お前火傷って治せるか?」



そう、セレナさんの鎧の下に広がる痛々しい火傷が気になったのだ。適齢期の女性が肌に傷を残してるなんて可哀想だ。そう思い小声でブルースに訊ねてみる。




『むむっ…少し難しいでござるが、出来ないことはないでござる!』



「よかった。セレナさん少しお話があるんですが、鎧を脱いで頂けませんか?」



「なっ!?こ、ここでか?!さっ…流石に不味くないか?」



あれ?何か勘違いしてる?



『主殿、火傷を治療するという主語が抜けてるでござる』



「あ、すいません。ブルースがセレナさんの火傷を治療するので鎧を脱いで頂けませんか?もしなんだったら俺は向こう行ってるので」



「あ、ソラト殿…!」



そう言って俺は腰掛けていた朽ちた木から立ち上がりその場を離れる。ブルースなら上手いことやってくれるだろう。しばらく歩いていると前の方から川から集落まで案内してくれたコボルトが駆け寄ってくる。




「わふっ!」



「よう。どうしたんだ?」



「ナカマ、タスケタ。オレイスル。」



キエェェェェア、喋ったー!



「お、お前喋れるのか?」



コクンと頷き同意を示すコボルト。耳をパタつかせ、尻尾を左右に揺らし感情を表している。可愛いなぁ。



「お礼つったってなぁ…何体も犠牲が出てしまった。お礼して貰う理由は無いよ」



俺の足が遅いため大幅に遅れてしまいその間にコボルトに犠牲が出た。それが主因ではないにしても助けられる命を見捨ててしまったのだ。お礼なんか貰えない。



「チガウ。オレタチセンシ。ナカママモルタメイノチツカッタ」



コボルトは皆生まれながら戦士であるから死ぬのも自己責任とでも言いたいのだろう。俺は日本でのほほんと生きてきたが彼ら彼女らは生きるのも精一杯だ。まだ幼い命を守るため戦ったのだ。それを俺がどうこう言うもんじゃないよな…。



けど…そんなの悲しすぎるだろ。



「そっか。じゃあお前のお言葉に甘えるとしよう。」



「カンシャスル。オレ、オマエナカマナル。ナマエホシイ。」




なんとこのコボルトは俺の仲間になりたい様だ。



「良いのか、仲間のことは?」



彼女(メスだからそう呼ぶことにする)は頷き、クゥーンと鳴いている。どうやら覚悟は固いようだ。



「分かった。今日からお前の名前はカミツレだ。宜しくなカミツレ!」



カミツレは母が好きだった花の名前だ。小振りの白い花で俺も好きだった。花言葉は確か……そうそう、《逆境に負けぬ強さ》だったな



「アウッ!」



カミツレは気に入ったのか短く鳴く。尻尾がはち切れんばかりに左右に揺れている。



瞬間、脳内に電子音が響いた。



『種族_コボルト 個体名_カミツレをテイムしました。三段階進化を開始します。』



ん?聞き慣れない言葉の羅列が聞こえたんだけど?!とか思ってる傍らにカミツレは眩く輝きだす。



光が弱くなるとそこには一回り小さくなったカミツレが居た。さっきまでは170センチほどだったのに今は160~165センチくらいまで小さくなっていた。さらに見た目が大きく変わった。



耳と尻尾はそのままだが、顔と身体が人間の女性そのものになっていた。白銀の髪に鋭い目付き、しなやかな肉体をしている。この世界には獣人がいるらしいがそれらとはちがうのだろうか?



実物を見たことないのではっきりしない。あ、ステータス見れば良いのか?ブルースん時もたしか種族名が書いてあった筈だ!




「ステータスオープン」



名前 ソラト・ユウキ(結城 空人)


レベル23(+14↑)


年齢 20才


職業 拳闘士


称号 魔物の主 異才の料理人 漂流者 天然ジゴロ 一撃必殺人ワンパンチブレイカー ミスタートラブルメイカー



能力


物理攻撃力 ベテランのパンツレスラー


物理防御力 木綿豆腐


魔法攻撃力 マジパねぇ


魔法防御力 高野豆腐


敏捷 馬並み


運 まあまあ



所持 異界の通信具 異界の通貨 異界の運動着



テイム


種族_ヒューマ・スライム 個体名ブルース


種族_人族 個体名セレナ・クッコローゼ


種族_人狼ワーウルフ 個体名カミツレ



魔法 氷魔法アイシクル・ブロウ


スキル 拳闘術Lv5 テイムLv2 地図 怒り 直感 話術 魅了


耐性 飢餓




へぇ、人狼かぁ…、確か人間の村とかに紛れて食べちゃうとかいうとんでもねえ奴だったよな?



うん・・・



色々ツッコミ所が多すぎてどうすりゃいいんだろ…



あぁー、めんどくさいなぁ



とりあえずブルースとセレナさんにきちんと話さなきゃな…



そう思いつつ沸き上がる疲労感と虚脱感に呑まれ俺はそのまま倒れてしまった。


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